東京駅丸の内駅舎づくしの旅[5]~重要文化財駅舎の壮麗な外観~



創建の大正時の姿に復原された駅舎外観

 究極の駅舎ホテル・東京ステーションホテルに宿泊し、昼前にチェックアウトした。帰路に就くまでどう過ごそうか考えたが、東京駅丸の内駅舎をじっくり見て過ごすつもりだ。昨日はライトアップされた丸の内駅舎の夜景を存分に堪能した。昼はどんな顔を見せてくれるのだろうか…

 天気は曇り空、だけど駅舎を撮影するのはこの位がちょうどいい。予報通り、空からは雪が舞い始めていた。

重文・東京駅丸の内駅舎、重厚な中央部は皇族用出入口

 開業の大正3年(1914年)に建てられてから約108年、復原された東京駅丸の内駅舎は壮麗で趣深いが、今日もターミナル駅として立派に機能している。内部はドーム部分こそレリーフなどが忠実に復原されたが、他の部分は実情に合わせた造りとなっているのはしょうがない。だけど外観は、これでもかという位、創建の大正時代の造りが見事に再現されている。夜の駅舎はロマンチックなムード溢れていた。だけど、細かい造りや装飾、そしてレンガ壁の質感をより堪能できる日中の光の下で見てこそと思う。

 駅舎の中の一等地と言える中央部分は、皇族用出入口として設計された部分で、レンガ張りのどっしりした柱や装飾された車寄せが重厚。帝都の中央停車場という響きがいまだにしっくり来る。鉄の扉のシンボリックな丸模様は菊を模したものだとか。松が植えられているのが洋風の駅舎でも、日本の駅らしさを感じさせた。

東京駅、巨大だが均整がある姿が美しい洋風の丸の内駅舎

 数々の装飾やホテルの窓が、均整を取りながら左右対称の駅舎中に張り巡らされているように続いているのも壮観だ。

 3階より上が新たに復元された部分で、2階より下は戦災で破壊される前からある部分だ。関東大震災にも耐え、空襲で破壊されたものの、2階より下は何とか持ちこたえた。そして復原につながった。屈強に出来てはいるのだろうが、運が強いのだろう。

 復元された3階部分は新品のレンガを使ってて、使い込まれた古い部分との差がわかる。しかし復原されてから10年になろうとし、両者は徐々になじんできているように映った。

東京駅丸の内駅舎、中央部分の丸窓などの装飾

 中央最上部、4階部分の丸窓は、数時間前、この裏側のホテルのレストランで朝食を食べた時に垣間見えた部分だ。復原前はここに時計がはめ込まれていた。

 両脇の鏡のような銅の装飾など、周囲の装飾もいい。そして頂上のいくつもの取っ手が付いたキャップのような銅の装飾は、仏教寺院の屋根にありそう。ちょとした和風の要素が面白い。

 復原前の写真を見ると、この装飾は無かった。史料を元にこんな所まで再現したのだろうか?

東京駅、洒落たドームも復原された丸の内駅舎

 ドームは内側を見ても美しかったが、外から見ても美しい。丸い屋根から覗き窓のように伸び出たドーマー窓はどこかかわいく、ドーム頂上から突き出たフィニアル(頂華)も印象的。壁は銅板葺きだ。

 ドーム部分を含め、駅舎の屋根は天然スレート葺きだ。スレートは粘板岩を薄い板状に加工したもの。創建時も戦後もスレート葺きだったが、復原にあたり、できるだけ以前のスレートを使う事になり、取り外し後、天然スレートの産地である石巻市の業者に依頼した。しかし東日本大震災の津波で、工場が被害を受けスレートも流出。しかし、何とか回収できたものを使ったという。こんな所にも復興の歩みが息づいているのだ。

 駅前の展望スポットから俯瞰するのもいいが、地上の同じ高さから全体を見渡してこそ、東京駅丸の内駅舎は大きさがより迫りくるように実感できるもの。しかし大きすぎて、普通のレンズでは収まりきらない。なので、カメラのパノラマ撮影機能を使い、駅舎全体をなんとか収める事ができた。

東京駅展望スポットの駅前のビルへ再び…

 地上から堪能した後は、昨日、夜景を見た駅前のビルの展望スポットから見る事にしよう。まず新丸の内ビルディング(通称: 新丸ピル)の7階に上がった。

 すると、昨日見て知ってたはずなのに、視界が開けた途端「うわぁ…!!」と思わず、感嘆の声を漏らした。眼下には極上の駅舎風景をがあった。あの壮大な東京駅丸の内駅舎を一望の下にした風景はもちろん圧巻だ。だけど公園のように広がる駅前広場は、何と悠然としてる事か。一日50万人以上の乗客で混み合う一大ターミナル駅とは思えない。以前は駅の真ん前まで、道路が通り、車がたくさん乗り入れていたが、駅舎復原4年後の2017年(平成29年)、整備された駅前広場も供用開始となった。

 今回は駅舎を撮影したくて、木々が茂っていない冬にあえて訪れた。しかし並木の新緑萌えいずる春に歩いてみるのもいいかもしれない。

雪で霞む東京駅に進入する中央本線の列車

 ホテルを出た時、雪はぱらつく程度だったが、急速に降雪は強くなっていった。さっきまではよく見えていた、レンガの駅舎や中央線の列車さえも白く霞んでいた。

大雪で霞む東京駅丸の内駅舎を行幸通りから見る

 新丸ビルを出た後は、昨日と同じように行幸通りを通り丸ビルに向かった。

 雪の勢いは衰える事を知らない。もう大雪だ。だけどこんな時でも、丸の内駅舎をを撮影しようとしている人がいた。いや、周辺を通ると、どんな時でも大抵誰かが駅舎を撮影しているものだ。都内の観光スポットとしての人気の高さが窺える。

 さて、丸ビル5階の展望デッキ前までやってきたのだが…、悪天候で閉鎖されていた。ちょと来るのが遅かったようで残念。

 気を取り直して正面右手にあるKITTEに渡った。昨晩、KITTEにも来たのだが、立ち寄っていない展望ポイントがあった。

KITTE旧東京中央郵便局局長室から見た東京駅

 それが4階にある、この旧東京中央郵便局の局長室だ。内部は吹き抜けの商業スペースにリノベーションされ様々な店舗が入る。しかし、この一室は昔の名残を留めるように残されている。レトロな室内から丸の内駅舎を見ると、古き昭和に時代が遡ったかのよう。だけど局長さんはこんな風景は見慣れていたのだろうなぁ…

 そして6階の屋上庭園・KITTEガーデンに上がった。こちらは幸いにも、閉鎖されていなかった。

背後にホーム広がる東京丸の内駅舎、南端部分

 KITTEガーデンで斜め横から見た東京丸の内駅舎は、道路一本隔てただけで、より近くからダイナミックに眺められる。

 左右対称に均整を取った姿が印象深い丸の内駅舎だが、南ドームから南東に折れて、少し先まで建物は続いている。なので厳密に言えば、左右対称とは言えないかもしれない。しかし、この駅舎南端部分、ヨーロッパの街でメインストリートから一本入った、少し落ち着いた通りの建物のような風情に魅かれる。3階部分は東京ステーションホテルのサウスウイングというカテゴリーの客室になっている。この旅では駅舎中央のパレスビュールームに泊ったが、いつかはこのサウスウイングにも泊まりたものだ。

KITTE屋上から見た東京駅ホームと列車、丸の内駅舎

 屋上庭園からは東京駅ホーム南側を望め、走り行く列車を間近で見下ろせる絶好のトレインビュースポットだ。こんなに寒くなければ、もっと眺めていたい。

 KITTE内の千疋屋でデザートを食べ店の外に出ると、悪天候で屋上ガーデンは閉鎖されたという告知が掲示されていた。

そして雪景色に…

東京駅、雪深い丸の内駅舎、南口付近

 外に出ると、雪は鎮まる気配が無い。それにしても、今日は本当に雪が強く降るのものだ。

 ホテルをチェックアウトし、色々な所から丸の内駅舎を眺め、3時間位して駅舎正面に戻って来た。

大雪の東京駅、丸の内駅舎前の松の木々にも雪が積もる

 すると景色は雪国のような風景に一変していた。皇族用出入り口に植えられた松の木々も雪化粧で真っ白だ。

雪降るの東京駅、僅か数時間で丸の内駅舎の屋根も雪で白く…

 東京駅丸の内駅舎は長く、遠く北の端を霞ませるほどの雪。ドームや屋根は降り続いた雪でうっすら白くなり始めていた。

 それでも駅舎を撮影する人は居なくならない。いや、むしろ増えているような…。滅多に無い東京丸の内駅舎の雪景色に、誰もが心高ぶらせている。私も雪で髪を濡らしながら撮影に夢中になった。

雪降り続く東京駅、駅長室から出て融雪剤を撒く駅員達

 だけど駅員さんは通行人が転ばないように気を遣うのだろう。駅長室からぞろそろ出てきた駅員さん達は、融雪剤か何かを盛んに撒き始めていた。

レンガが印象深い東京駅丸の内駅舎、中から灯りが漏れる…

 外は東京としては珍しい極寒でも、レンガの内側、東京ステーションホテルのロビーラウンジから漏れ出る光は温かだ。


 帰って振り返ると、下調べをあまりしなかったため、見逃しているポイントがいくつもある事を知った。それもいい。大きな存在なので、一生、付き合っていく駅舎だろう。何度でも行けばいい。

[2022年(令和4年)1月訪問](東京都千代田区)

レトロ駅舎カテゴリー:
三つ星 JR・旧国鉄の三つ星レトロ駅舎