街の玄関口は大正築レトロな駅舎
水郡線と常磐線の駅巡りをし、高萩駅に着いた頃には夜の帳が降り切る寸前だった。

高萩駅で降りたのは約17年振りで2回目。前回2006年は古い駅舎の左横に、駅施設らしき小さな建築物がレール沿いに列を成すようにずらり連なっていたのが強く印象に残っていた。改築する事無く古い駅舎を守ろうとしているのか…?それとも本当はもっと使い勝手のいい新しい駅舎に建て替えたいが、経費が下りないので、そうやってしのいでいたのか?当時はそんな事を考えていた。もうその状態は解消されていたが。
完全に暗くなる前に、駅舎の外観だけはいい状態で撮影しようと外に出た。
駅舎は洋風でレトロな造りが印象深い木造駅舎。開業は1897年(明治30年)2月25日だが、この駅舎が建てられたのは1926年(大正15年)4月。3年後の2026年に100歳を迎える歴史ある駅舎。めでたいめでたい!

側面やファサードの急角度の半切妻や、その中の半円調の装飾がレトロで洋風のムードを奏でる。どことなく足利駅舎や今は無き伊勢崎駅舎、移築保存された旧栃木駅舎と言った両毛線の洋風駅舎群に雰囲気が似ている…
この半円の赤い装飾、縦にラインが入れられたようなデザインだが、白い部分が少し広い真ん中は窓だったよう。埋められたのが塞がれたのか、その部分だけよく見ると、白さというか質感が違う。100周年を機に窓を復活させてくれないものだろうか…

出入口車寄せの軒は古レールでしっかり支えられている。あの半円の色に合わせたのか、赤茶色に塗られている。ペンキ越しに伝わってくる鉄の質感が渋い。

駅舎には耐震補強が施されていた。東日本大震災で茨城県は震度6の揺れが直撃したが、高萩駅舎は耐え忍び甚大な被害はなかった。意外と屈強だけど、老朽化しているだろう古い駅舎に地震対策は必要だ。

駅舎にぴったり隣接する駅前交番は、半切妻の屋根など、特徴的な高萩駅舎に倣った造りなのが面白い。
現代的な駅風景の中で…

築100年を迎えようかという古い駅舎だが、内部は改修され自動改札機も設置されすっかり現代的。増築されJR東日本系列のコンビニ、NEW DAYSまで入っている。

待合室の一角には、ミニ高萩駅舎が!手指消毒液が収納されているのが、コロナウィルス蔓延という時代を反映している。デフォルメはされているが、特徴はとらえよく出来ている。駅員さんの力作だろうか?いっその事、目でも描き入れて高萩駅のゆるキャラにしてはどうか(笑)

東口へ行ける跨線橋からは高萩駅を一望する事ができる。列車は出払い、何線分ものレールが敷かれた構内はひたすら広い。
こうして見ると、東京上野ラインとして東京都心に乗り入れる列車が発着するプラットホームは、長い上に改装され新しくきれい。跨線橋はエレベーターを備えバリアフリー。都会の駅に遜色無い。そんな中、よく古い駅舎ががんばっているものだ。

夕方のラッシュ時間帯で、帰宅する人々、送迎の車やタクシーで市の代表駅である高萩駅は賑わう。

駅舎正面だけでなく、ホーム側の木の軒や支えるレールも新しい設備に埋もれながらも見事に昔ながらの佇まいを残していた。今でこそ駅舎に面したホームは無いが、かつてはこっち側にも列車が発着したのだろうなぁ…
[2023年(令和4年)5月訪問](茨城県高萩市)
- レトロ駅舎カテゴリー:
JR・旧国鉄の三つ星レトロ駅舎