南海電鉄・高野線、高野下駅舎ホテルに泊まった!~[2] 宿泊記~



予約と少し難しい?チェックイン

 高野下駅の木造駅舎ホテル「NIPPONIA HOTEL 高野山 参詣鉄道 Operated by KIRINJI

 予約は主要なホテル予約サイトでもできるが、私は公式サイトで直接予約した。

 折り返し予約確認のメールと各種個人情報をリンク先のフォームに入力する事、チェックイン方法は宿泊の二日前に案内するけど、個人情報の入力をしなければチェックインの案内は送らない等々…、大雑把に言うとそんな感じの連絡が来た。

 メールから訪日外国人観光客の宿泊を強く想定しているのだなと感じた。メールは日本語だけど名前の表記が、名前、苗字の順で表示さるなど、日本語としては若干スマートでない所が散見された。そして個人情報入力フォームの職業欄では、選択肢がさして多くないにも関わらず「軍人」の項目が!アメリカでは、公共施設の入館料に退役軍人料金なんかがあったりするので、外国では軍人の社会的地位が日本より高めなのだろう。

 予告通り二日前にチェックインの案内が来た。それによると案内された暗証番号をドアにあるテンキーっぽいものに入力して開錠するとの事。それを聞いて「ああ、そうか…」と納得した。2部屋しかなく、無人駅。そして普通の宿のように係員が常駐していなく、それゆえ滞在中のケアや案内は無い。なので当日は係員を介さないで入って、そして出ていくといった感じのようだ。そう知って、この高野下駅舎ホテルは「ホテル」の看板は掲げているけど、近年、日本でも話題になった「民泊」に近い感じなんだろうなと思った。

 民泊は6年前にクロアチアで利用したが、管理者と顔を合わせたのは、チェックインで鍵を受け取る時だけで、それもメールで近くに住む管理者を呼び出したものだ。質問があればメールでやり取りをし、チェックアウトする時は、メールで知らせて完了。支払いはクレジットカードだった。


 当日、隣の九度山駅を軽く訪れた後、夕方の6時過ぎに高野下駅に到着。夜の帳が下りた駅はひっそりとしていた。一日の乗降客数は100人程度なのでこんなものなのだろう。ちなみこの乗降客数は南海100駅の中では95位という少なさだ。

夜の高野下駅、駅舎ホテル「天空」と「高野」の出入口

 駅舎の中に入ると、窓口跡と改札口、券売機といったありふれた駅の空間の中に、真新しい木の扉が二つあり、部屋名を示す列車のヘッドマーク風看板が添えられている。出入口から見て左側が「天空」、正面が「高野」だ。駅だけど確かにホテルなのだと、非日常に吸い込まれるような不思議な感覚を覚えた。

 「天空」扉の前に立つと、ドアノブの下にQRコードがあり、スマホで読み込んで専用ページにアクセスして予約番号を入力しチェックインしろと書かれていた。指示の通りやった。そしてテンキーぽいのもに暗証番号をしっかり押しながら入力し、ハンドルを回すと、回った感触がし、そして扉を開けた。

 ちゃんと入室できるか心配だったが、問題無くでき一安心。今では、ほとんどの人がスマホを持っているが、スマホを持っていない人や扱うのが苦手な高齢者の方には難しいやり方かもしれない…

木造駅舎という鉄道遺産に泊まる悦楽

南海電鉄高野線・高野下駅、駅舎ホテル「天空」室内

 木で改修された室内は温かみを感じさせ、素朴で落ち着いた雰囲気だ。17平方メートルと、ビジネスホテルより少し広いくらいだが、一人で過ごすには十分。

南海電鉄・高野下駅、駅舎ホテル「天空」、ベッドサイドには運転席のシート

 ベットはセミダブルのベッドが一台。頭の所に窓があり、高野下駅の集落、そして部屋の真横を行き交う列車を眺める事ができる。

 ベッドサイドに廃車となった鉄道車両から取り出した運転席のシートが設置されている。普通の宿なら浮くのだろうが、駅舎ホテルの空間にあっては不思議とマッチしている。しかしシートの横はすぐベッドなので、足元が狭そう。サイドテーブル… もしくは飾りと言った所だろうか…

南海・高野下駅舎ホテルの部屋「天空」、扉など昔の造りを残した室内

 きれいにリノベーションされたが、木の柱や壁など、所々で昔のままの造りを残したのは心憎い演出だ。古い木造駅舎に泊まっているのだと実感させてくれる。大きな扉は乗務員さん用の出入口だ。開けてみたが、しっかり固定され開けられなかった。扉の周りには「乗車券を確認しよう」「扉を閉める時は必ず「新車鍵」で」等、昔のままの注意書きが貼られたままだ。

高野下駅舎ホテルの部屋「天空」、壁際のテーブルなど

 改札口横の窓の前に長いデスクが設置されている。こうしてあれこれ写真を撮ってる間でも、列車が行き交い、窓の向こうでは、僅かばかりの人が改札口を通る気配が伝わってくる。

 デスクには電気ケトル、冷蔵庫など、ホテル室内には一般的あるものがある。しかし電子レンジがあるのは珍しい。周りに飲食店が無いので、食料の持ち込みを想定してるのだろう。

 そして「南海小さな資料館」なるものも…。南海電鉄や高野線の写真などの資料がラミネートパックされた冊子で、しばし創業期の時刻表など、昔の資料を見耽った…。

高野下駅舎ホテル「天空」室内の装飾、電車運転席の各種メーター

 デスクには、廃車両から取り出した運転席の速度計など各種メーターも取り付けられていた。

 いろいろ見ていくうちに、ホテル客室では必ず備えられている、ある二つのものが無いのに気付いた。一つはテレビだ。これは周囲の雰囲気を含めて楽しんでほしいという運営側の意図があって置いていないとの事。TVがあると、ついだらだら流してしまいがちなので、まあ問題無い。

 もう一つは寝間着だ。日本ではどのランクの宿にも浴衣かパジャマといった寝間着があるものだ。しかし、外国の宿には無い。これはインバウンドの外国人観光客を強く意識しているので、無くても問題無いと考えているのだろう。だけど日本人としてはやっぱり寝間着かパジャマが欲しいよなぁと思う…。日本のホテルではパジャマの方が多くなってきているので、浴衣を置いておけば海外からの宿泊者にも喜ばれると思うのだが。

 あとWifiもあったのだが、滞在中ほどんど繋がらなかったのはいただけない。


 部屋の細見はほどほどに、いっぺん外に出てみることにした…

南海・高野下駅、ホテルとなった木造駅舎、夜の風景

 駅舎内部は手を加えられている。しかし、外観はきれいに補修された以外は、前回、訪れた時のままの趣ある佇まいだった。

 周囲は山間の川沿いにある集落といった感じだ。駅はこうこうと明るいが、周囲は真っ暗で、家屋や外灯の僅かな明かりがある程度だ。人通りも車の通行もほどんと無い。コンビニエンスストアはおろか、お店すら無い。店跡っぽい所に飲料の自動販売機があるだけ。よく訪れるローカル線の無人駅や秘境駅に泊まっているという実感を強くし、気分はますます高まってきた。

高野下駅舎ホテル「天空」の横を走る極楽橋行きの列車

 木造駅舎の小さな窓からは温かな明かりが漏れていた。
「ああ、今晩はあそこが私の部屋なんだなぁ…」
喜びを噛み締めた。そしてその真横を列車が走り抜けていった。


 部屋に戻ってのんびりと時を過ごした。駅ゆえの人の動きや列車の往来は気にならない。むしろいいBGMですらある。しかし構内踏切のカンカンという警報音が喧し過ぎた。ただでさえ音量は大きいのに「天空」の真横に踏切のシグナルがあるからだ。そのせいかアメニティキットに耳栓があった。夜0時前から朝6時頃までは列車は来ないといえ煩わしい。音量は十分過ぎるほど大きいと思うので、もう少し下げてもらえないだろうか…


 夕食はどうしたかと言うと…、橋本駅で和歌山名産の柿の葉寿司と、他にその近くのコンビニで諸々買い込んだ。メールでの案内で、柿の葉寿司と弁当のデリバリーもあったのだが、弁当は普通の弁当だったので全く食指が動かなかった。周りに飲食店が無いと知っていたとは言え、せっかく印象的な宿に泊まっているのに、旅の夕食としてはやや寂しくなった感…。少し高くなってもいいので、地元の名産を詰め込んだ、宿泊者限定の高野下駅駅弁なんて作ってもらえたらとても嬉しい。


 翌朝はあの構内踏切にたたき起こされながらも、2度寝してベッドから離れた。

南海高野線・高野下駅舎ホテル、客室からの眺め

 温かい日本茶を頂きながら、列車をながめまったり…。構内踏切も悪い事ばかりでなく、極楽橋方面への列車が通り過ぎる時は、まるで知らせてくれるかのように鳴るので、写真を撮る準備もばっちり。

 ベッド横の運転席の椅子は第一印象では中途半端だと思っていたけど、ベッドに足を伸ばして座ると、寛いだ姿勢で外を眺められていい感じだ。窓手前にものを置けるスペースがあり、コーヒーを飲みながら、時折、通り過ぎる列車を眺めた。

高野下駅駅舎ホテル「天空」から特急こうや通過を眺める。

 なんば駅を8時42分に出発した、この日最初の極楽橋駅行きの特急こうや号が9時40分に通過。

 チェックアウトの10時ぎりぎりまで窓辺で過ごし、惜しみながら部屋を出た。

高野下駅舎ホテルの部屋「天空」乗務員出入口だった扉

 部屋の内側から見た、あの乗務員用の出入口を改めて外側から見てみた。

南海電鉄・高野下駅舎ホテル「NIPPONIA HOTEL 高野山 参詣鉄道」外観

 駅舎ホーム側の造りは昔ながらの趣ある佇まいだ。

 「天空」は踏切奥の駅舎いちばん隅の部分だ。部屋の外はいい具合に柵で囲まれた空間だ。完全に柵で囲んで、テーブルや椅子なんかを置いて、専用のテラスにすると面白そうだ。おそらく行儀よくテラスの椅子に座ってる人ばかりでなく、安全面から難しそうではあるが…


 ぜひまた、この駅に泊まりたいと思う。安い時期を選んで、奮発して「高野」の方に泊まろうか…。それとも、秘境駅に籠る気分で「天空」に連泊し、ただのんびり過ごすのもいいかもしれない。

[2020年(令和2年) 3月訪問](和歌山県伊都郡九度山町)

~◆レトロ駅舎カテゴリー: 三つ星 私鉄の三つ星駅舎

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