高野下駅舎ホテル、今度は広い方の部屋「高野」に宿泊した!



Go To トラベルで割安に

 南海電鉄高野線、大正14年(1925年)築の木造駅舎を改装したホテル、
NIPPONIA HOTEL 高野山 参詣鉄道 Operated by KIRINJI」。
今年2020年3月に小さい方の部屋「天空」に宿泊しました。少々、お高いものの、行き来する列車を間近に眺められる部屋と、木造駅舎の中に泊まれ、まさに鉄道ファンには至高の空間。部屋も良く、もう一つの部屋「高野」にもいつか必ず泊まろうと決めていました。

 しかし、より広く上等感のある「高野」は一泊4万円以上と「天空」の倍の宿泊料が掛かります。金持ちではない私が一泊の宿泊料として出すには勇気がいる金額。

 そこでGoToトラベルキャンペーンをやっている内にと思いついたのですが、11月のコロナウィルス第三波が迫りGoToトラベル停止もささやかれ始まました。なので、そうなる前にと泊まりに行く事にしました。一泊二日約25000円に、お土産代や食事代としても使える地域共通クポーンも付き、通常時よりかなりお得感がありました。


 宿泊当日、早めの午後4時過ぎにチェックインし、とりあえず旅装を解き一休みしていると…

南海、高野下駅舎ホテル「高野」、高野線の看板列車・天空が出発

 高野線の観光列車・天空が通過していきました。「高野」の部屋は高野下駅の北側、橋本方面に窓が向いています。高野下‐橋本間の区間運転の列車も少なからずあり、下りの極楽橋方面を向いた「天空」に比べ、より多くの列車を眺められる機会があります。


 夜になる前に、前回はできなかった駅周辺の散策をしようと、一旦、カメラを手に外に出ました。

素朴な木と車両パーツの内装が味わい深い室内

 夜長の秋、小一時間、周辺を散策すると、外はもう真っ暗。

南海電鉄・高野線、高野下駅舎ホテル「高野」玄関

 「高野」の方は、入るといきなり部屋の「天空」と違い、玄関の部分は前室となっていました。そして、気になったのが天井にカメラらしき物体がある事。「宿泊人数以上で宿泊した形跡があるとペナルティーがある」と注意書きに標されていたので、その監視のためなのかもしれません。「高野」はダブルベッド2台の最大定員が4名ですが、広いので雑魚寝すると8名でも余裕で泊まれそうです。

高野下駅舎ホテルの部屋「高野」、中吊り広告も

 部屋の手前には、中吊り広告風の高野山のポスターが暖簾のように吊るされています。

高野下駅舎ホテル「高野」南海7100系のパーツが使われた室内

 素朴な木の室内に一点、南海電車廃車体から取り出した運転席の扉がはめ込まれ不思議な雰囲気。所々に廃車体のパーツ…、具体的には7100系のパーツが内装にあしらわれているのは「天空」を同じ。高野下駅がある高野線の末端部・橋本‐極楽橋間は、カーブと勾配がきつい登山鉄道のような区間なので、専用の17m車が投入されています。なので、南海のいわゆる20m車の7100系は縁は薄いと言えます。ですが、鉄道車両を感じる室内は、鉄道ホテルのならではのユニークさ。ちなみにこの扉の向こうにはトイレがあります。

南海高野線、高野下・駅舎ホテル「高野」の部屋

 室内は素朴な木が心落ち着かせる柔らかな雰囲気。ダブルベッド2台が置かれてもなお広く、ゆったりと寛げます。

 窓辺には小さなテーブル。西側の壁際に造り付けの長デスクがあり、多少、物を置いてもごちゃごちゃとしなくゆとりあります。簡単な食器類やサービスのコーヒーやお茶、電子レンジが備えられていますが、冷蔵庫は定員4人のためか、冷凍室もある家庭用サイズで、宿のものとしては大きめで、かなり目立ちます。

高野下駅舎ホテル「高野」古い柱を残した室内

 新築同様に改修された室内にあって、ベッドの手前の2本の柱は古ぼけたまま。新しいものの中に、駅舎の歴史感じさせるものが残されています。この2本の柱、よく見ると所々に彫り込まれた窪みが左右対称の位置にあります。きっと壁で仕切られていたのですが、取り払ったのでしょう。元々は宿直室だった…のでしょうか?

高野下駅舎ホテル室内の装飾、7100系列車無線機

 壁には列車無線用の受話器が…。ラベルを見ると昭和49年製。もちろん使えません。

高野下駅舎ホテルの内装、7100系の座席や網棚

 室内には7100系の車内を再現した?遊び心溢れる一角も。座席、つり革、そして網棚まで。この網棚、ものを吊るしおけ、ユニークなだけでなく実用的な設備でひそかに感心。ホテルで洗濯すると、洗濯物を干しておく場所を探すのに困る事が多いですが、ここなら吊るしておけます。空気が酷く乾燥していたので、私は濡らしたバスタオルを吊るしておきました。

高野下駅舎ホテル「高野」の洗面所とバスルーム

 7100系車内(笑)の右隣に、洗面所とバスルームがあります。木の装飾や壁が味わい深く、ユニットバスには無いゆとりと上級感漂います。

南海高野線、高野下駅舎ホテル、古い扉を残した客室

 ベッド横の古い扉には「7952」の銘板が貼り付けられています。7952はウィキペディアで調べて見ると、1970年7月4日に7127と共に、7100系2次車として竣工し、2019年6月4日に廃車となった編成だそうです。

 この扉クローゼットなのですが、業務用の物が見えるように置かれていたのはいただけません。Wifiの機器はいいとして、滞在中に宿泊客は使わないだろう脚立、ドライモップや、予備の液体石鹸類、何かが入っている使い古された段ボールとかetc…。高級ホテル仕様を謳っているのだから、このへんはもうちょっと気を使って欲しかったです。

部屋からのステーション&トレインビューで至福のくつろぎ…

 さて…、部屋の細見はほどほどに、行き来する列車を眺めながらのんびりしようと思いました。

 まずテーブルを窓辺ぎりぎりの場所に持っていきました。椅子は残念ながら、だらりと寛ぐには座り心地が良くありません。できればソファーとか、もうちょっとゆったり座れる椅子を置いてほしいもの…

 なのでちょっと工夫しました。椅子を横に二つ並べテーブルの側に置き、長テーブルの下にあった背もたれの無い椅子を足のせにと、テーブルの下に潜り込ませました。足のせが少し低かったので、毛布で段差を埋めました。そして…

高野下駅舎ホテル「高野」椅子をトレインビュー向けに配置

 特製シートが完成。そして室内の照明をほとんど落としガラスの反射を防ぐと、夜のトレインビュー環境が整いました。

高野下駅舎ホテル、客室から眺める高野下駅ホームと列車

 列車だけでなくプラットホームもよく見えます。夜にになると、列車の乗客はとても少なく高野下駅の乗降客もほとんどいない様子。目の前には沈黙が広がっているかのよう。それでも、時折列車がやってくる以外、動きが無い風景を、よくこれだけ見ていられるものと思うほど、夕食を食べつつも、ボーっと眺めていました。

南海電鉄、部屋から列車が間近に眺められる高野下駅舎ホテル

 極楽橋行きの列車が停車すると、車両の近さに驚かされます。乗客の顔が見えるほど。この時間に、いっそう山深くなる高野山方面に向かう人はほとんどいないようで、空気輸送状態でした。

 下りの方面の最終は22時13分と少し早め。上り方面はそれより1時間30分ほど遅い0時前です。


 「天空」に泊まった時は、すぐ近くにあった構内踏切のシグナル音がとても気になりました。あのうるささだったら、こっちもそうなのだろうと思っていました。しかし、驚くほど聞こえてきませんでした。エアコンの音に多少、かき消されていたのかもしれませんが、それを差し引いても気になるレベルではありませんでした。

 夕食は今回もコンビニめしでした。ウーバーイーツで何か頼もうかと思ったのですが、現在の所、残念ながらこの辺は対応エリアではありませんでした。冷凍庫があるので、冷凍食品を買ってきてレンジでチンでもいいかもしれません。どっちとも旅の食事としては味気ないですが…。お門違いな要望かもしれませんが、高野下駅弁、高野山にちなんで精進料理弁当とか、特別感のある夕食デリバリーサービスがあるととても嬉しいです。

南海・高野下駅舎ホテル「高野」檜の壁が味わいあるお風呂

 浴室は木の壁に癒されようないい雰囲気。追い炊きはできないものの、洗い場もある日本風のお風呂。普段、ホテルでお風呂でのんびり入る事は無いのですが、木で囲まれた空間とほのかに薫る檜が心地よく、珍しくのんびり湯に浸かっていました。

 お風呂から出て、少し過ごすともう寝ようと思いました。

高野下駅舎ホテルの部屋「高野」から眺めるプラットホーム

 部屋を暗くすると、窓の外のプラットホームがより印象深く浮かび上がっていました。駅や列車を感じながら寝たいので、ホームに近い窓だけは、レースのカーテン一枚だけしてベッドの中に潜り込みました。


 真夜中、目が覚めました。終電から数時間過ぎ、夜の闇の中に沈んだようなプラットホームは、まるで駅も深い眠りに就いているかのように映りました。

朝の光

南海高野線・高野下駅、駅舎ホテル客室目の前を通る2300系電車

 朝、起きると、列車の眺めを楽しもうと、早速、カーテンを開けました。夜とは違い、車内には乗客の姿が目立ちました。ホームには黄色い帽子を被った通学の小学生たち、仕事に向かうと思しき大人の姿など、利用客の姿がチラホラ。

南海高野線、高野下駅舎ホテル朝の光差し込む部屋

 夜のムードある部屋もいいですが、眩しい朝の光差し込む部屋も瑞々しい空気に溢れ、一日の始まりを感じます。

南海・高野下駅舎ホテル客室から眺めた特急こうや

 9時40分頃、この日最初の下り特急こうやの通過を見届け、離れがたい思いを抱え部屋を後にしました。

南海電鉄・高野線、高野下駅舎ホテル「「高野」の室内

[2020年(令和2年)11月訪問](和歌山県伊都郡九度山町)