高野下駅舎ホテル、朝食は九度山駅のおにぎり屋「おむすびスタンドくど」で…



ごはんは九度山でどうぞ

 南海電鉄高野線、高野下駅に改修した話題の駅舎ホテル、正式名称は
NIPPONIA HOTEL 高野山 参詣鉄道 Operated by KIRINJI」。
古い木造駅舎をホテルと同等の設備に改修した宿泊施設だ。設備は二部屋の客室のみで、スタッフの常駐は無く、実質的には民泊に近い感じだ。なので宿には大抵あるレストランや朝食会場といったものは無い。

 しかし、隣の九度山駅に同時にオープンしたおにぎり屋「おむすびスタンド くど」での朝食サービスがある。

高野下駅舎ホテル、九度山駅おにぎり屋の朝食券と往復切符

 九度山駅‐高野下駅間の軟券の往復乗車券、朝食切符が、初代の特急こうやの写真が入った絵葉書大のカードに差し込まれていて、いい宿泊記念になる。

 朝、客室まで届けてくれるのがベストなのだろうが、隣の駅まで朝ごはんを食べに行って帰ってくるという一風変わった体験も悪くない。おにぎり屋の定休日の月曜日は、別の業者が和歌山名物の柿の葉寿司を前日に届けてくれるとの事だ。

まずは改修された九度山駅駅舎を

 九度山駅には開業当初の1924年(大正13年)以来の木造駅舎が残り、2回訪れた事がある。

 2016年のNHK大河ドラマで「真田丸」が放送される事になった。九度山が関ヶ原の合戦で、西軍…つまりは石田三成側に加わった真田昌幸・繁信(幸村)親子が、戦後に蟄居した地である事から、九度山駅が観光振興を目的に「真田の赤備え」をテーマにリニューアルされる事になった。大阪夏の陣で、真田軍が赤い甲冑をまとい勇戦した事にちなむとか。でも、まさか駅舎は甲冑のように真っ赤にするつもりだろうかと思った…

南海電鉄高野線・九度山駅、改修された木造駅舎

 駅舎ホテルにチェックインする前、九度山駅に立ち寄ってみた。十数年ぶりだ。木造駅舎らしい赤茶色い塗装をベースにした落ち着いた色合いだった。そんな駅舎に、真田家の家紋である六文銭があしらわれた赤いノボリが映える。

高野線・九度山駅のおにぎり屋「おむすびスタンド くど」

 駅は「おむすびスタンドくど」のカラフルな色彩が一層目立つ。閉店前の18時前だが、もうカーテンが閉じられ、中は人の気配がしない。完売となり早々に閉めたようだ。あわよくば軽くおにぎりを食べようと思っていたのだが、楽しみは翌日に持ち越し…。

高野線九度山駅、真田の六文銭の旗掲げられるプラットホーム

 赤備えの駅を離れ今宵の宿となる高野下駅に向う事にした。

 「真田の赤備え」で駅舎がどうなってるかと思ったが、駅事務室跡におにぎり屋が入って改修された以外、駅舎はほとんど手を加えられていないようで、昔ながらの雰囲気がよく残っていたと思う。気が向いたら詳しく取り上げたいと思う。

朝、九度山駅に行くも…

 翌朝、8時20分頃に九度山駅に着いたのだが…、残念ながら朝食にありつけなかった。宿側からの案内メールでは、開店前でも宿泊者なら中にいる人を呼べば提供できると書いてあったのだが…。

 細かくは聞かなかったが、「くど」の人が言うには、宿側から7時15分に私が来店すると連絡が行っていたようだ。しかし宿側からそんな事聞かれてもいないし、こちらから具体的な時間も出していない。それで宿が言ってきた時間に合わせて準備してくれていたようだが来なくて、次のご飯が炊き上がるまであと30分かかると…

 朝の時間が無駄になってしまったが、ここで怒っても旅が台無しになってしまうしので、ここは慌てず後でまた来る事にし、高野下駅の自室に戻った。列車で自室から往復するような宿泊者は意外と少なく、チェックアウトした足で、遅めの時間に立ち寄る人が多いのかもしれないし、一人旅の鉄道ファンなら、朝が早い傾向があるので、早めの時間を想定しているのかもしれない…

地元の素材を使ったおにぎりを駅で味わう

 そして11時頃、改めて九度山駅にやってきた。もう朝ごはんではなく、昼食の時間だが…

九度山駅おにぎり屋「おむずびスタンドくど」店頭のメニュー

 もちろん今度は大丈夫だった。店頭のメニューを見ると、たかがおにぎり屋とは言え14種類も用意されている。お米はこの近くものを使っているという。野菜や魚類ネタが豊富で、港町の加太産わかめ、めはりと言った和歌山名産の素材を使ったおにぎりもある。1個当たりの値段はだいたい100円後半~250円位で、釜で炊き上げるなど手が込んでそうな割には思ったほど高くない。

 高野下駅舎ホテルの朝食券では2個とお味噌汁のセットだが、一つ追加注文した。

九度山駅「おむすびスタンドくど」イートインスペース入口

 食べる場所は、同時に整備されたイートインスペースだ。南海電車廃車体か取り出したパーツがあしらわれ、入り口は連結部の幌で扉は乗降扉だ。

高野線九度山駅のおにぎり屋「おむすびスタンドくど」イートインスペース

 内部は鉄道車両を連想させる長さで、木を基調にした落ち着いた室内。

九度山駅おにぎり屋イートインスペースの南海沿線案内地図

 おにぎりが出来上がるまでの間、室内をあれこれ見ていると、奥の方に、レトロな雰囲気の南海沿線の観光地図が展示されていた。説明書きによると、1957年(昭和32年)に難波駅に掲示されていたもので、1972年(昭和47年)から1980年(昭和55年)にかけて行われた難波駅の大規模改修工事で撤去され、その後、新今宮駅近くの倉庫で保管されていたとの事。数年前まで汐見橋駅の改札口上にあった大地図と同じ雰囲気だ。

九度山駅おにぎり屋「おむすびスタンドくど」のおにぎりセット

 15分位待っておにぎりが!追加注文したのは「黒米じゃこ めはりむすび」。高菜の浅漬けでご飯をくるんだ、めはりお握りやめはり寿司は和歌山の名物。そしてあとは梅と…もう一つはうろ覚えですが鮭だったような…。ドリンクは含まれてなかったのでほうじ茶を注文。懐かしい容器で出てきました。

高野線・九度山駅でおにぎりを食べながら列車を眺める…

 列車が行き交うのを眺めながら美味しくいただいた。今度、高野線を訪れた時も是非寄りたいものだ。

 この日は生憎の雨だったが、天気が良ければ少し高い所に設置されたテラス席で九度山の街並みを眺めながら…、あるいは、ホームのベンチで列車をより身近に感じながらいただくのもいいかもしれない。

九度山駅おむすびスタンドくど、店内の窯とダシの昆布

 帰り際にちらりと見えた厨房。かまどと釜、そしてダシの瑞々し昆布…

[2020年3月訪問](和歌山県伊都郡九度山町)