寂れた要衝の駅にひっそりと…
広島県北東部にある備後落合駅は木次線と芸備線のレールが交わる山間の要衝駅だ。しかしローカル線の衰退で、現在では列車本数も乗降客も大幅に減った。草むした広い構内跡が、かつての面影偲ばせる秘境駅として有名だ。
1番ホームと駅舎の間に挟まれたような位置に、ささやかな池が残っている
残っていると言っても、この駅の衰退を表わすかのように、今では干上がってしまっているが…。
池の背後には使われなくなった側線の車止めがあり、かつてはすぐ背後にまで車両が迫ってきていたのだろう。他の駅の庭園のように緑豊かという訳ではないが、一本の木が添えられている。まあ自然豊かな地なので、緑で飾り過ぎるのも野暮というものだろう。
この池で印象的なのが、池の真ん中にコンクリート製のカエルが鎮座してる事だ。目がつぶらなのがなんとも可愛らしく頬が緩んでしまう。かつては澄んだ池から半身姿を覗かせている姿か非常に印象的で、乗換えで駅で手持ち無沙汰の旅行者達の目を楽しませたのだろう。
カエルはまるで乗降客を見つめるように、駅舎とプラットホームを繋ぐ通路の方を向いている。まるで一人一人に無事にカエルんだぞと声を掛けているかのように…
奥出雲おろち号出発の時間が近づき、車内に入りシートに腰を落ち着けた。何気に外に目をやると、枯池らしきものが目に飛び込んできた。備後落合駅にはカエルの池だけでなく、2つの池があったとは驚きだ。あと数分と迫る発車時間の中、急いで車外に飛び出して枯池を見てみた。時間が無い上、真夏で木々が今を盛りとばかり茂り枯池や周囲を覆い、十分な観察はできなかったが、何とかあれこれ撮影する事ができた。この池跡を見たいなら冬に来るべきだと思った。
[2012年(平成24年) 7月](広島県庄原市)
1番ホームの枯池
それから2年と半を過ぎ、芸備線の道後山駅を訪れる際、備後落合駅に少しだけ訪れる事ができた。わずかな滞在時間でやはり気になったのは、1番ホーム上の枯池だった。
ごつごつした岩で縁取られ、植栽も豊かに配された日本庭園風で、駅の池庭としては典型的なタイプだ。枯れた池の底から、木が生え伸びているのが、放棄されてからの年月の久しさを物語っていた。
早朝の備後落合駅のワンシーン。2番線に三次行き、3番線に新見行きが停車している。木次線の始発まではあと2時間ちょっと待たなければいけない。
1番ホーム西端、写真左下の茂み一帯が件の枯池だ。
しかし何で二つもこの駅に池庭を造る気になったのだろうと思う。カエルの池庭はこの駅で上下車する客に向けて、1番線上のものは列車に乗っている乗客を楽しませるため…、なのかな…?。
[2015年(平成27年) 4月訪問]