西桐生駅(上毛電鉄・上毛線)~絹織の街のレトロな洋館駅舎~



上毛電鉄・桐生側のターミナル駅

 わたらせ渓谷鐡道に乗車し運動公園駅で下車した。このあたりは上毛電気鉄道や東武桐生線が近接し、少し離れJR両毛線も走る。わたらせ→上毛電鉄に乗り換えたかったが接続する駅は無い。

 しかしわたらせ渓谷鐡道の運動公園駅と上毛電鉄の桐生球場前駅は約300m離れているだけ。桐生球場前駅まで数分歩き、そのまま上毛電鉄の列車に乗った。

中小私鉄らしいのんびりとした改札口、上毛電鉄・西桐生駅

 終着駅でもあり始発駅でもある西桐生駅は、上毛電鉄桐生側のターミナル駅。行き止まりレールの先に改札口があった。近年はローカル駅でもICカードの導入が進んでいるが、西桐生駅は有人改札。のどかで古風な感じすらした。

上毛電鉄・西桐生駅待合室、ターミナル駅らしい広さ

 主要駅だけあって待合室は広く、十二脚の長椅子が整然と並べられている。しかし利用が減る昼は閑散とし持て余し気味。

上毛電鉄・西桐生駅舎、レトロなアールデコ調装飾の出札口跡

 左手に目をやると、昔ながらの切符売場の造りが残っていた。柵のようなもので描かれたアールデコ調の装飾がレトロさ醸し出しとても洒落ている。自動券売機が埋め込まれ一部が改修されているが、それでも印象深い。現代のモノと過去のモノの不思議な融合…

 この窓口を見て一畑電車の出雲大社前駅の切符売場跡を思い出させた。形状は全く違うが、あちらもアールデコ調の装飾が印象深い。どちらも新進気鋭の気質に溢れていた地方私鉄の時代を感じさせるものだ。

絹織で隆盛した桐生の歴史伝える洋館駅舎

 駅舎の外に出て全体を眺めてみた。西桐生駅には2000年代の前半に訪れて以来、2度目の訪問。その時、洋館など街中に残るいくつもの歴史的建築物を訪ね歩き、絹織で隆盛した桐生を実感したもの。この西桐生駅舎も、そんな桐生の歴史を感じさせる洋風の駅舎が現役だ。

 長い駅舎に対し90度の角度に配されたギャンブレル屋根のファサードを持つ。その中に丸窓やレリーフを刻み込んだ洋風の洒落た装飾や紋様が印象的だ。

 開業は1928年(昭和3年)11月10日。このレトロな駅舎はその時以来のもの。2005年(平成17年)には登録有形文化財に登録された。そして、あと5年ちょっとの2028年には御年100歳だ。

上毛電鉄・西桐生駅舎、木の窓枠やモルタルの壁が味わい深い

 すっかり古びた木枠の窓や、モルタル壁の質感が味わい深い。

上毛電鉄・西桐生駅、洋風建築のレトロな駅舎

 これほどまでに素晴らしい駅舎、きれいに全景をカメラに収めたいものだが、右手手前に2台の駐車スペースがあり、なかなか空かない。やっと1台分空きチャンス思ったら、すぐに他の車が入ってきてしまった。しかし間一髪で撮影に成功…

上毛電鉄・西桐生駅、改修され広場のようになった駅舎前の敷地

 駅舎前の敷地は、近年整備されたのか、タイル貼りの広場のようになっていた。端の方にはベンチも置かれ、名駅舎を眺めのんびりするのにちょうどいい。

 普通、こういうスペースはタクシーや送迎の車のための駐車場のようになっている事が多い。本で以前の写真を見ると、かつては駐輪場があったよう。

 元々、狭いスペースで中途半端に車用のスペースにするより、広場風にして鉄道の利用者が安全に利用できる事を図ったのかもしれない。でもこのスペースや駅舎内の広い待合室も合わせると、ちょっとしたイベント会場にはちょううどいい。

上毛電鉄・西桐生駅、洋風の駅舎を模した公衆トイレ

 敷地の片隅には駅舎の特徴的なギャンブレル屋根を模した公衆トイレが!しかも丸窓を模した紋章まであった。

上州電鉄・西桐生駅、屋外の降車用改札口は重厚な造り

 駅舎真ん中あたりには大きな木製上屋の車寄せがあるが、その左隣にも車寄せがある。モルタルでがっちり固めた直線的で四角い感じで、こっちの造りを真ん中に持ってきてもよかったのではと思わせるのが楽しい。

 こちら側は屋外の降車用改札口で、木のラッチも残っている。今は閉じられているが、早朝夜間の無人時間帯のみ使われているようだ。

上毛電鉄のターミナル駅、西桐生駅前の街並み

 西桐生駅の駅前は意外とひっそりとしていた。市街外れのちょうど住宅街との境目付近に位置していると言った感じ。ここから約300m南のJR両毛線・桐生駅とその一帯が商店街やホテルなどがある市の中心地だ。

カラフルステーション

上毛電鉄・西桐生駅舎、出札口とレトロな造りの旧出札口跡

 やはりアールデコ調の出札口が素晴らしい。有人駅で、窓口機能は改札口近くに集約されている。セピア色の時刻表や運賃表がレトロさを演出する。一段低い小さなカンターは荷物用だったのだろうか?

上毛電鉄・西桐生駅、待合室片隅の古い造り付けの木造ベンチ

 改札口の待合室片隅には、古いままの木の造り付けベンチが残っていた。

上毛電鉄・西桐生駅ホームと木造の古い上屋

 プラットホームに戻った。木の古い上屋は緑色に塗られている。駅舎は窓枠など所々がピンク色で、駅舎のイメージカラーと言った感じ。レトロながらもカラフルさを感じる。

上毛電鉄・西桐生駅プラットホームのカラフルなベンチ

 カラフルついで…と言うか、プラットホーム上のベンチはまるで虹のようなカラフルだった。古くくすんだ駅に強い色彩を刻んでいた。

[2023年(令和5年)3月訪問](群馬県桐生市)

レトロ駅舎カテゴリー:
三つ星 私鉄の三つ星レトロ駅舎