一之宮・貫前神社を控えた木造駅舎
十数年振りに上信線の上州一ノ宮駅に降り立った。
駅舎は古くからの木造だ。角度が急な半切妻屋根は洋風の趣漂わす。
駅舎のホーム側はクリーム色で塗装されてるが、古い木造駅舎らしさ溢れる佇まいだ。窓枠や付け庇も古い木のまま。屋外改札口までもが残る。まさに半世紀以上も昔の駅に降り立ったような感覚に陥る。
駅舎正面に立ち全体を見渡した。こちら側も懐かしさ感じる味わいある佇まいだ。半切妻屋根だが、正面側は途中で外側に折れているのが特徴的。どうしてこうしたのだろう…
上信電鉄では、一般家屋の造りを取り入れたような駅員居住スペースある古駅舎がいくつかあるが、この駅にそのような造りは無い。端正で洒落た姿ををしている。
この駅の開業は1897年(明治30年)7月2日。当初は一ノ宮駅という駅名だったが、1921年(大正10年)12月17日に現在の上州一ノ宮駅に改称された。この駅舎の建築年は不明だが、明治の開業時だろうか…
正面の出入口・車寄せ部分は建物にのめり込ませ、軒のような機能を持たせた変わった造りになっている。土色の漆喰壁には上信電鉄の社紋が埋め込まれている。
完全に推測なのだが、このような車寄せになったのは、出入口部分の駅舎正面を増築したからだろうか…。だとしたら急角度の屋根が増築部分と合わなく、あえて外向きに折れている造りにしたのもわかる気がする。
上州一ノ宮の「一ノ宮」とは駅から直線距離で北西約600mの場所に位置する貫前(ぬきさく)神社だ。1500年の歴史を誇る群馬県内最高の格式を持つ神社で、上州一ノ宮駅はその門前の駅として佇む。
車寄せに貫前神社と標された提灯が下げられているが、以前訪れた時はしめ縄が掛けられ、より門前の駅らしさを漂わせていたものだ。
駅の左隣には鉄骨の大きな上屋のある駐車場があった。かつてはここで貨物でも扱っていたのだろうか…?
駅から少し歩くと国道254号線に出る。富岡市の中心街からやや外れ郊外ロードサイドの風景。国道を渡った貫前神社の手前一帯に、商店などが立ち並ぶ街がある。
待合室もまた良き…
周辺をぶらつき駅に戻ってきた。
天井は木のまま、木製の窓枠のある待合室は、古いながらも手入れが良く味わい溢れる。
一応、有人駅だが、日中の4時間ほどは無人時間帯となっている。営業時間は平日と第1・3・5土曜日の6時から9時55分、14時20分から20時9分。9分というのが何とも中途半端だが、列車時刻に合わせているのだろう。
待合室の壁には造り付けの木製ベンチが巡らされている。あの出入口横の出っ張りの部分が面白い。
出入口横の壁には「よごさぬように美しく」の小さなホーロー看板が取り付けられている。東北本線の仙北町駅など古い駅舎ではたまに見る看板だ。オレンジ色が多い気がするが、この上州一ノ宮駅のものは緑色だった。
[2018年(平成30年)4月訪問](群馬県富岡市)
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