上神梅駅 (わたらせ渓谷鉄道)~使い込まれた木の質感が味わい深い純木造駅舎



古色蒼然とした佇まいに誘われ…

 国鉄・JR足尾線から第三セクター鉄道に転換された「わ鐡(わてつ)」こと、わたらせ渓谷鉄道の旅を楽しんでいた。

 終点の間藤から折り返して来る時、大間々駅の一つ手前の、ひどく古めかしい木造駅舎が気になった。大間々駅で降りた後、再び下り列車に乗って逆戻りし、その気になる駅…上神梅で降りてみた。

上神梅駅、旧駅事務室はカラオケスタジオに

 プラットホーム側から駅舎を眺めた。無人駅となり、かつての駅事務室や休憩所といった駅員さんの業務用スペースだった所はカラオケスタジオとして使われているが、外観に味わいを台無しにするような修繕箇所は無く、よく原形を保っていると思われる。窓枠でさえサッシではなく、かなり年季が入った木で組まれている。

わたらせ渓谷鉄道・上神梅駅、木の質感溢れる木造駅舎と改札口

 いや窓枠だけでない。木製の改札口も古びたまま残っている。改札口は駅舎の内部だけでなく、降車用に外部にも設置される。昔ながらの駅の造りを、奇跡的に現代に残しているものだ。

わたらせ渓谷鉄道・上神梅駅、大正時代築の素朴な木造駅舎

 でも何よりも、年月を経て、駅の隅々まで古び木目が露わに浮き出ている様が、木造駅舎という木の空間にいる事を強く実感させ、心地よくさえ感じる。年輪ような輪だったり、くねっていたり、うねっていたり・・・、同じ文様は一つとして無い。

上神梅駅の木造駅舎、造りつけの木のベンチ

 素朴な雰囲気の木造駅舎が未だに現役でも、塗装によって損をしているなと感じる事はよくある。茶色く塗られていれば、木の雰囲気はあまり損なわれていなく、好ましいなと思う。しかし、やっぱり素のままの木の味わいには、より引き付けられるものがある。

わたらせ渓谷鉄道・上神梅駅、駅名看板と改札口
わたらせ渓谷鉄道・上神梅駅、駅舎待合室

 無人駅となって久しいのか、出札口など窓口は板で塞がれてい、今では、わたらせ渓谷鉄道からの各種案内や、観光ポスターなど、色々な掲示物で賑やかだ。

 その中でも「わたけいよいとこ新聞」という、子供達が制作した新聞風のわたらせ渓谷鉄道沿線案内が特に目を引いた。
「Aグループは上神梅駅の9時27分の電車にのりこみ…」
で始まっている所を見ると、地元の小学生が自由研究か何かで、わ鉄をとり上げたのだろう(「電車」はご愛嬌!)。運転士さんや駅員さんに関するレポートや、水沼温泉と足尾銅山という、わてつ沿線の2大観光名所の訪問記などが、手書きの文や、イラスト、貼り付けた写真で構成され、子供らしさと手作り感溢れる楽しい内容となっている。私も小学生時代、クラスメイトとこんな学級新聞を作ったよなぁ。遠い思い出が頭の中にふと甦った。何十年も時を遡った木造駅舎に誘われたかのように…。

わ鉄・上神梅駅、小学生手作りの新聞

[2003年(平成15年) 1月訪問]。(群馬県大間々町 ※2003年訪問時。現在はみどり町)

~◆レトロ駅舎カテゴリー: 三つ星 JR・旧国鉄系の三ツ星駅舎

追記: 登録有形文化財に指定etc…

 2008年(平成20年)に上神梅駅の本屋(駅舎) とプラットホームが、国の登録有形文化財に登録された。

 近年では、NHKのTV番組「にっぽん木造駅舎の旅」で取り上げらるなど、趣き深い木造駅舎として知られるようになり、訪問する鉄道ファンも増えてきたように思う。

 2010年(平成22年)には、上神梅駅再訪を果たした。幸いにも、木造駅舎に変化は無かったが、カラオケスタジオは退去していて、中はもぬけの殻状態だった。

わたらせ渓谷鉄道・上神梅駅、登録有形文化財となった木造駅舎
( 2010年、上神梅駅を再訪。相変わらず味わい深い佇まいの木造駅舎。)