二塚駅(JR西日本・城端線)~トタン張りの木造駅舎は昭和のレトロさ感じさせる~



折りたたみ自転車で二塚駅へ…

 北陸旅行の3日目は城端線の木造駅舎を巡る。まずは二塚駅へ。

 二塚駅は高岡駅から二駅…、新高岡駅ができるまでは一駅で、わずか3㎞ちょっとしか離れていない。これなら高岡駅で袋に収納した重い自転車を抱え広い構内を移動し列車に乗るより、ホテルから走っていた方が面倒が無いのではと思い、直接走って行く事にした。

 途中、街を東西に横切るあいの風とやま鉄道や氷見線の線路に行く手を阻まれた。目の前の跨線橋は自転車通行禁止。大回りかと当惑したが、運よくすぐに地下道を見つけた。

 少し走ると、もう郊外のような趣になっていった。そんな中、北陸新幹線の高架や新高岡駅、イオンモールが忽然と姿を現す。北陸新幹線の工事に関連し、だいぶ整備されたのだろう。

 新高岡駅を越えると、建物が減っていき緑が増え、田舎の町と町を結ぶ道路のような風景になっていった。

高岡市、城端線・二塚駅の駅前通り

 地図を見て、この道と思い右に曲がると、昔ながらのこじんまりとした街並が現れた。まさに駅前を感じさせる風景。二塚駅はこの中にある。

不思議なレトロさ残す大正の木造駅舎

折りたたみ自転車・ブロンプトンで高岡市街を走り二塚駅に到着。

 程なくして二塚駅が目の前に現れた。まずは駅舎を背景に旅を共にしている折りたたみ自転車・BROMPTON C LINE と記念撮影。

 引いて駅舎全体を眺めてみた。現在の二塚駅は二代目になり、初代は城端線の起源となる中越鉄道時代の1899年(明治32年)の4月3日で、今より約500m南に位置していたと言う。しかし、僅か3年後の1902年(明治35年)5月15日に廃止された。

 しかし1914年(大正3年)2月20日に現在地に移転して簡易停車場(その後、停留所)として再開業、国有化の1920年(大正9年)9月1日に駅に昇格した。今に残る木造駅舎は、駅昇格時の大正9年に建てられたと思われる。

 L字状の形状の横長の駅舎で、左側4分の1程度の待合室部分以外は、駅事務室など業務用の区画になっている。

トタン張りの木造駅舎、城端線・二塚駅

 よくある造りの木造駅舎だが、さすが築100年と年月を経るとガタが来て改修の必要があるのだろう。しかし、二塚駅の外壁はトタンですっかり覆われているのが特徴的。

 そう言えば昭和の頃はトタン壁の建物をよく見た気がする。昭和、平成と時代を超え現代に残るそんなトタン壁の建物は、独特でレトロさを醸し出す。

 木造駅舎の改修と言えば、新建材が用いられる事が多いが、新築のようでプラモデルのような印象さえ受ける。昭和末期かある時期から新建材が使われるようになったのだろうが、それ以前はトタンなど他の手法が用いられたのだろう。古い木の質感が素朴な木造駅舎のようでもなく、新建材のように味わいに欠ける訳でもない…。これはこれで古き味わい。二塚駅は一昔じゃなくて、二~三昔前の古駅舎改修の姿を今に残したユニークな存在なのかもしれない。

城端線・二塚駅、駅出入口横のコンクリートで埋めれられた池庭跡!?

 駅舎の中に入ろうとし出入口右横の木が茂る部分に何気に目をやると…、むむ!小さな岩で囲まれたコンクリートのこの狭い平面は…庭園と池の跡だろうか??

JR西日本城端線・二塚駅の木造駅舎、木の造り残す…

 大半がトタンで覆われていると言っても、木組みとか細部に古い木造駅舎らしさを残す。こんな秘めた質感がたまらない。

城端線・二塚駅、無人駅となり塞がれた窓口跡

 二塚駅は、近隣の中越パルプ工業まで引込線が伸び貨物列車が走っていた事もあり、JR貨物の駅も置かれ、同社による業務委託駅でもあった。しかし2015年に休止となると同時に無人駅となった。窓口跡はすっかり塞がれていた。約2年後の2017年4月1日に、貨物駅としては正式に廃止となった。

城端線・二塚駅、窓口跡に置かれた金銭受け

 改修で手小荷物窓口のカウンターは鉄板で覆われていた。そんなカウンターの片隅に謎の台がひとつ。花でも置かれていそうな趣。これは…、出札窓口に固定されていた金銭をやりとりするトレーで、窓口が塞がれた時に外されたのだろう。。

JR城端線・二塚駅舎、こじんまりとした待合室

 待合室は狭い。奥の壁際に造り付けの木製ベンチが設置されていた。

JR城端線・二塚駅、待合室の住友生命の鏡広告

 壁には縦長の鏡が吊るされていて、よく見ると鏡の中に住友生命と標されていた。数か月前の6月の愛媛旅行で住友が運行していた別子鉱山鉄道跡の星越駅舎を見に行った記憶がまだ鮮明なので、駅で見つけた住友のマークには不思議な親近感を覚えた。

 鏡広告と言えば、同じ富山県内の富山地方鉄道の古駅舎でもよく見る。富山地鉄の方は手作りの一点もの感漂うが、こちらは定形の販促品で、ある程度まとまった数作られと言った感じ。

貨物駅の面影

高岡市、JR城端線・二塚駅、のどかで広々とした砺波平野を望むプラットホーム

 ホームの方に出て見ると、のどかな農村風景が広がった。伸びやかな砺波平野の眺めが心地よく癒される心地。

城端線・二塚駅プラットホームと貨物線の名残残る留置線跡

 ホームは2面2線の相対式だが、反対ホームの背後には何線かの留置線が残る。ローカル線の城端線だが、比較的、近年まで貨物列車が運行されてた名残りを感じさせた。

 少し北には高架の道路が見え、その奥には新高岡駅前にある東横インの姿も見えた。

城端線・二塚駅、駅舎正面右側

 ぐるっと回って、駅舎正面右手側に来てみた。プロパンガスを固定していた棚、すっかり錆びたエアコンの室外機、古び色褪せたホースが絡む蛇口…、すっかり廃れたムード漂う。同じ駅舎正面とは言え、わんさか茂る植木に隔てられ待合室側とは違う駅のよう。

 古いトタン壁のせいか、他の木造駅舎とはどこか趣が異なる。2015年までJR貨物が使っていたせいもあるのだろう。

JR城端線・二塚駅、駅舎閉塞器室のひょうたん

 駅舎ホーム側の出っ張り…閉塞器室の内部には、なぜか瓢箪がたくさん吊るされていた。

 貨物駅があった時代のものだろうか…?室内には何か機器が残されたままだ。

JR西日本城端線・二塚駅1番ホームに入線した城端行き列車

 ホーム側の上屋は鉄筋に取り替えられていた。冬は砺波平野を吹き抜ける風がいっそう厳しいのだろう。風除けの壁が設置されていた。

 1時間弱、個性的でレトロな木造駅舎を愉しみ、やってきた城端行きの列車に輪行袋に収納した自転車を抱えて乗り込んだ。

[2023年(令和5年)10月訪問](富山県高岡市)

レトロ駅舎カテゴリー:
一つ星 JR・旧国鉄の一つ星レトロ駅舎