童話に出てきそうな可愛らしい駅舎
レンガ積みに平屋根を載せているのが特徴の釜石線・青笹駅駅舎。無人駅で、駅舎と言うよりは待合室ではあるが、単純な造りがかえって面白い。しかし屋根は大きく、待合室はまるで大きな翼の下で護られているかのような雰囲気だ。
シンプルだが、駅舎はレンガ造りで、日本の駅舎としてはかなり珍しい部類だ。古びたレンガの質感を見るにつけ、この駅の年月が伝わってくる。そして、そこに掛けられた木の駅名看板やホーローのレトロな駅名看板が、味わい深さを更に引き立てている。古いのだろうが、建築年を知る際に参考となる建物財産表は見つけられなかった。
天井に木の板張りが古さを窺わす。無人駅で、待合室のみの造りで、窓口跡など他の設備の痕跡は無い。 この背後に自転車置場がある以外、これと言った設備は無くトイレさえも無かった。メンテナンスや掃除はしっかりされているようで奇麗だ。
片隅に置かれていたゴミ箱は、釜石線仕様のお洒落なデザインだった。
青笹駅のプラットホームは、道路一本隔てたやや離れた所にある。かなり変った駅構造だ。一見、待合室すらない棒線駅に見間違えてしまうかもしれない。駅舎とホーム…、両者は関係があるような無いような微妙な距離感が面白い。
青笹駅のエスペラント語の愛称は「カパーオ(kapap)」。「河童」という意味で、この地域の河童伝説から取っている。
釜石線は前身の岩手軽便鉄道が、宮沢賢治作「銀河鉄道の夜」のモデルになったと言われている。作中でエスペラント語の単語が使われた事に因み、釜石線各駅にはエスペラント語の愛称が付けられている。それを掲示したメルヘンチックな駅名標も設置されている。
去り際、ホームから駅舎を見渡した。小さなレンガの駅舎は、童話にでてきそうなかわいらしさで、まさに銀河鉄道の夜にぴったりなのかもしれない…。
釜石行きの列車が到着した。ローカル線にしては4両という長く堂々たる編成だった。
周囲は田園地帯で、空は気持ちいいまでに晴れ渡り青空が広がっていた。駅には終始、のんびりとした時間が漂っていた。
[2006年(平成18年) 8月訪問](岩手県遠野市)
- レトロ駅舎カテゴリー:
- JR・旧国鉄の二つ星レトロ駅舎
追記: 車窓から16年振りに見た青笹駅
健在で何より。
壁のレンガがよりレンガらしい茶色に塗られているのが目を引いた。しかしよく見ると、窓の上の2積みだけが元の灰色っぽい色のままだった。