昔の名前が出ています~新旭川駅~



もっと大柄だった木造駅舎が残る分岐駅

「あた信じてここまできたわ 昔の名前で出ていますぅ~~~」
…という訳ではないですが、2013年5月、一日上下一本ずつしか列車が停まらない上白滝駅など、石北本線駅巡りの旅で、新旭川駅で下車しました。2008年の夏以来、約5年振りで2度目の訪問となります。

宗谷本線と石北本線の分岐駅、新旭川駅の木造駅舎

 新旭川駅は旭川市内にあるJR宗谷本線と石北本線の分岐駅です。籍上は石北本線の起点駅ですが、列車は全て旭川駅に直通するので、実質的にはいち中間駅と言えます。

 また、かつては日本製紙旭川工場など、周辺の工場への専用線もいくつか延びていて、旅客上だけでなく、貨物列車の往来も盛んで、重要な要衝駅であった事が窺えます。

 街中にありますが、無人駅となっています。しかし、今も残る木造駅舎は半分化されたとは言え、屋根も高く大柄で堂々とした佇まい。屋根の煙突や、そのメンテナンスのためと思われる梯子や通路が屋根に設けられているのが冬は雪深い北海道の駅舎らしく、私の好きな駅舎の一つです。

新旭川駅訪問記

JR北海道名物、サッポロビールの広告付き駅名標…だけど??

新旭川駅、JR北海道の標準的な駅名標

 新旭川駅の駅名標。JR北海道の標準的な駅名標です。

新旭川駅の「しんあさひがわ」サッポロビール駅名標

 ホームの柱や電柱などに取り付けられた縦長のサッポロビールの広告付き駅名標は、最大のターミナル駅の札幌から秘境駅にまで掲げられ、JR北海道名物というか、もはや北海道の鉄道風景らしい溢れているとさえ言えます。

「しんあさひがわ駅。ん…? しんあさひがわ!?」

新旭川駅、サッポロビールの広告付き駅名標

「しんあさひがわ? しんあさひかわ?」

JR北海道・新旭川駅、縦型駅名標が並ぶプラットホーム

「しんあさひがわ」「しんあさひかわ」「しんあさひかわ」「しんあさひかわ」


 難読駅という言葉があるように、地名は漢字の読み方がその地で独特である場合が珍しくなく、日本人でさえよく解らなく間違える事があるもの。

 新旭川駅は正しくは「しんあさひかわ」。但し、かつて「しんあさひがわ」という駅名だった時代もあります。

 新旭川駅は、1922年(大正11年)の駅開業当初「しんあさひ“が”わ」という駅名でしたが、1988年(昭和63年)3月13日に市名にあわせ現在の「しんあさひ“か”わ」へと変更されました。読み方が変わっただけで、漢字は同じ。ですが、こんな所に昔の名前が残っていたなんて驚かされました。

 市の中心駅である旭川駅は1898年(明治31年)の駅開業当初は「あさひかわ」で、1905年(明治38年)に「あさひがわ」、そして新旭川駅と同じく1988年(昭和63年)3月13日に現在の「あさひかわ」と変遷しています。

 なんで「か」ではなく、「が」だったのかは知りません。駅名として通俗的に「あさひがわ」という読み方があったのかもしれません(似たような例って他の駅にもあったと思いますが、直ぐに思い出せない…)。それに遠方の人間にとっては、駅名の方が馴染み深く、もう一つの読み方としてある程度定着していたのかもしれません。


 サッポロビールの広告入り駅名標は、何十年前の看板でよく使われた「琺瑯(ホーロー)」が使われています。ホーロー看板は、昭和レトロを感じさせるアイテムとして人気ですが、何十年も昔に作られたものでも、いまだに色彩を保ちレトロな味わいを今に伝えています。非常に耐久性が高くメンテナンスフリーで、コストパフォーマンスもいいのでしょう。


 だけど何でこんな「しんあさひがわ」の駅名標が残っていたのでしょうか?いくら琺瑯看板が丈夫だとしても、日本人の律儀さを考えると、新駅名で営業に入る前夜に即、正しい方に取り替えるものでしょう。それに看板自体も古い感じがしなく、むしろつややかで、年数もそれ程経過していないように思えます。もしかしたら、ちょっとした遊び心で、昔の駅名をこっそり潜ませたのかもしれません。だとしたら、こういう遊び心って悪くない…、というかとても楽しいです。

[2013年5月訪問] (北海道旭川市)