JAL羽田発女満別行き、そして西女満別駅へ…



隠れ空港アクセス駅!? 西女満別駅

 いよいよ存続が危うくなってきた、ちほく高原鉄道ふるさと銀河線に乗りたいと思いスケジュールを練った。

 往路か復路のどちらかで、ふるさと銀河線にアクセスしやすい空路を選ぼうと思った。そこで、候補となる空港が、北見駅に近い女満別空港か、帯広駅と池田駅に近い帯広空港かに絞られた。空港バスの所要時間は大差無い。しかし、結局、女満別空港を選んだ。それには、石北本線の西女満別駅という隠れ空港アクセス駅への興味が大きかった。

 鉄道書籍やレールファンの間で、空港アクセス鉄道が語られると、成田、関空などと言った、既に鉄道が直接乗り入れている空港はもちろん話題にのぼる。だが、女満別空港と石北本線、そして西女満別駅も、両者間の近接した距離ゆえに、話題にのぼる事が多く、石北本線を女満別空港の空港アクセス鉄道として活用してはという意見も聞かれる。駅と空港間の距離は道を歩くと約2kmだが、直線距離は約1km程度と意外と近い。石北本線と女満別空港ターミナルビルの最接近部分は、地図で測ると約500m程度とより接近する。この位近いのであれば、むしろルートを変更して、直接、空港に乗り入れてしまえとさえ思う。

 だが、近隣主要市町村からのバス路線が既にあり、モータリゼーションが進んでいる中、わざわざ空港アクセス鉄道を作っても採算は取れなのだろう。それに西女満別駅を空港接続駅として使うにしても、約2kmも重い荷物を持って歩くのは煩わしく、雪深く寒さが厳しい冬は論外だろう。列車ダイヤは航空便との接続を考慮したダイヤとは言えない。なので、女満別空港を利用するために、列車を利用し西女満別駅を使う人はまずいないだろう。

JALとなった旧JAS機で北海道・女満別へ

 夜行快速ムーンライトながらで名古屋を発ち、夜明け前の品川駅に降り立った。京浜急行の列車に乗り換え、6時過ぎに羽田空港駅に到着した。早朝にも関わらず、列車は大勢の人々を吐き出し、ホームは一瞬にして雑踏と化した。吹き抜けの巨大ターミナルも、国内各地へ向かう人々で賑やかで、さすが日本全国と空路で結ばれた首都東京の空港だけあるなあと感心。空港内のレストランで朝食を食べると、早々に、保安検査を受ける人々の列に並んだ。

 示された搭乗口付近に行くと、日本エアシステム(JAS)塗装の機体がたむろしていた。元々、JASが使っていた区域なのだろう。JALとJASの合併後、数ヶ月しか経っていないので、一気にJALの塗装に刷新するのは難しいのだろうが、それでも機体には小さくJALのロゴと社名が記載されている。でも、私自身、JASが無くなった事に慣れていないせいか、JAS塗装の機体に、JALの社名が入っているのは妙に浮いているというか違和感を感じる。

 搭乗案内があったので、指定された搭乗口に行くと、ボーディングブリッジではなく、バス乗り場だった。どうやらオープンスポットからの搭乗のようだ。乗客を乗せたバスは、2分程、空港の中を走ると、A300の前に停車した。A300はもちろん元JASの機体だ。折角だから、オープンスポットに駐機するA300の写真を撮ろうとしたら、係員に機内に入るように促されチャンスを逃した。

 平日とは言え、機内は異様な程、空いていた。2列席、4列席に、1人づつ程度の乗客しかいない。観光シーズンを迎えた北海道に向かう午前の便だから混雑していると思っていたが…。

 便は定刻に離陸し、羽田空港上空を大きく旋回しながら上昇し、機首を北海道に向けた。

離陸したJAL女満別行き、羽田空港を見下ろす

 JAS…じゃなくJALのA300は洋上を順調に飛行し、降下が始まると、遂に緑の大地・北海道が見えてきた。眼下には、釧路市街や、背後に控える釧路湿原までも見え、少し霞んではいるが、遠くには、厚岸湖、霧多布湿原、根室半島まで望めるダイナミックなパノラマが広がる。地上に居れば、広大な広さだが、上空を飛ぶ飛行機には、一跨ぎとばかりに、次の景色が展開する。

女満別空港着陸直前、屈斜路湖を見下ろす

 阿寒国立公園の上空に差し掛かり、摩周湖が見え、翼が屈斜路湖をかすめると、田園風景がぐっと近付き、女満別空港へと着陸した。

女満別空港から歩いて西女満別駅を目指す

 列車の時間まであまり余裕が無いので、印刷した地図で道を確認すると、キャリーバッグを引き摺りながら、西女満別駅に向け歩き出した。

女満別空港を遠ざかり西女満別駅へ…

 歩みを進めるほどに、女満別空港と私を運んだ旧JASのA300がどんどんと遠ざかっていく。周りは人家は少なく、空港に出入りする車など、空港に関係した音を除けば、至って静かな所で、のどかな田園風景が広がっている。そんな中、私が引くキャリーの耳障りな音がガラガラと響いていた。

 平坦な道が続いたが、道は途中から鬱蒼とした木々に囲まれた下り坂に変った。私は下りだからいいが、もし逆だったら荷物を抱えならが、この坂を上がらなければいけない。やっぱり西女満別駅は、女満別空港へのアクセスには使えないなあ…。

 途中で石北本線の跨線橋に差し掛かった。レールを眺めると、深い木々に埋もれながら、小さなプラットホームが佇んでいる姿が見えた。西女満別駅だ。できれば直線距離ではすぐの距離だが、そのような道は無く、遠回りをしなければいけないようだ。

緑豊かな中にポツンと…石北本線の秘境駅・西女満別駅
西女満別駅、駅前の風景

 そして坂を下り終えると、鬱蒼とした木々を抜け、目の前には田園風景が再び広がった。

 右手に曲がる道をよく見ると、道沿いに、矢印と共に「西女満別駅」と書き添えられた小さな看板を発見した。駅はもう近いのだろう。看板に従い進んだ。

秘境駅、石北本線・西女満別駅

 矢印の通り、道を曲がり緩い上り坂を少し歩くと、西女満別駅があった。まずは何とか列車に間に合い一安心した。

女満別空港最寄駅?石北本線の秘境駅、西女満別駅

 駅は無舗装の空地のような場所に、小さな待合室と機械室か何かの小屋がぽつんと佇んでいるだけだ。周囲は鬱蒼とした木々に囲まれているが、駅の所だけ切り開かれている。

 駅は女満別空港に近いと言っても、空港利用客を迎える立派な設備がある訳でなし、空港へいくバスや、客待ちのタクシーが停まっている訳ではなない。空港を案内している紙切れさえ1枚も無かった。あんなに空港の近くにありながら、空港とは全く無縁だ。

 空港からの道のりや、道すがら見てきた周辺の風景も考えると、いわゆる秘境駅と言える雰囲気だ。しかし空港の存在ゆえ、数ある秘境駅の中でも風変わり感は際立っている。

石北本線・西女満別駅、JR北海道標準型の駅名標

 旅道具が詰まったキャリーバックを引き摺り、カメラバッグを背負い、三脚を肩に掛けながら少し急いで歩き続け、ようやく着いた。途中で写真を撮りつつ歩いて、女満別空港からここまで、30分弱かかった。

 列車の時間まで30分弱しか無い。駅名標の側に荷物を置くと、すぐに駅の探索を始めた。

JR北海道・西女満別駅、1面1線のホームと待合室があるだけの無人駅

 そう言えば、歩いていたら何時の間にかホームに辿り着き、2本の線路が見えていた。本来なら、板張りやら、コンクリートなどで、明確にホームという台状の構造物を造るものなのだろう。しかし、傾斜地を切り開いてレールを敷いたため、地形に対し、道床部分だけが窪んだ形になっていて、その段差を利用してホームを造ったのだろう。そのせいで、どこからが駅で、どこからが駅前なのかはっきりしない、野趣溢れるプラットホームだ。

石北本線・西女満別駅、狭い待合室内

 待合室はグリーン基調のこじんまりとした空間で、壁際に造り付けの木製ベンチが据えられていた。

 今回の北海道旅行は3日の滞在だが、北海道フリーきっぷの普通車用を使うつもりだった。7日間有効の切符を僅か3日で放棄するような真似は馬鹿げている気もするが、北海道フリーきっぷはそれでも十分に元が取れる。

 前回、この切符を利用した時は、札幌駅の旅行センターから通信販売で購入したが、今回はあらかじめ購入しておく程でもなく、現地で購入するつもりだった。だが、今回の道内最初の乗車駅となる西女満別駅は無人駅なので、北海道フリーきっぷを購入する事はできない。もちろん車内で購入できる切符ではないので、北見駅に着いてから購入するしかなかった。

JR北海道・石北本線の秘境駅・西女満別駅、青空と雲

 天気は気持ちいいほどの快晴だ。空を見上げると、心地よく澄んだ青空に、薄くちぎったような雲がたなびいていた。
「そう言えば、ついさっきまでは雲の上にいたんだなぁ…」
昨晩は遠く名古屋駅でムーンライトながらを待ち、朝は羽田空港に居て、それから1時間ちょっとで、北海道の地を踏んだ。それらついさっきにあったかのような出来事が、一つ一つ過去のものになっていき、今、ここに居る事がとても不思議な事のように思えた。

JR石北本線・西女満別駅に入線したキハ40気動車

 駅に着いてから僅か20分位で、遠軽行きの列車がやってきた。もっとあれこれじっくり見たかったが、この後のふるさと銀河線の時刻も考慮すると仕方がない…。またいつか西女満別駅に来たいものだ。できればまた懲りずに飛行機で(笑)

 2両編成の列車の先頭車は白のボディに緑のラインが入ったキハ40だが、よく見ると、後ろの車両は国鉄時代のオレンジ色だ。あれ?国鉄色のキハ40なんて、北海道にまだ残っていたっけ?と思い返したが、独特の窓の配置を見て、すぐに「あ、ぽっぽや号だ!」と思い出した。根室本線の幾寅駅を舞台に撮影された高倉健主演の映画「鉄道員(ぽっぽや)」のロケのため、キハ40をレトロ調に改修した車両だ。見る機会はあっても、乗る機会には恵まれなかったが、まさかこの時、この駅でその機会が巡って来ようとは…。

 意表を突かれたと思いつつ、車内に入ると、エンジンが直にゴゴゴと音を立てた。2泊3日の北海道鉄道旅行が始まった。

[2004年(平成16年) 7月訪問]北海道網走郡女満別町。(※訪問時。現在は大空町) )

追記: 女満別空港鉄道アクセス実現の気配。だが…

 女満別空港の鉄道アクセスが現実味を帯びるようなニュースが、突如飛びこんで来た。それは、ローカル線の経営改善対策として、JR北海道がテストを重ねている道路と線路の両方を走行できる車両、「デュアル・モード・ビークル(DMV)」の試験運転が2005年9月と10月に北見駅‐西女満別駅‐女満別空港のルートで、2両編成のDMV「U-DMV」により実施されるからだ。DMVを2両繋ぐ事により、定員を増加でき、分割・併合により、目的地をきめ細かく設定できるとの事。近隣の町にとどまらず、原生花園や北浜駅が人気の釧網本線、更に知床観光といった広域の空港アクセスとしても期待できる。これから、DMVのテストに向けて、西女満別駅の配線や駅の構造も変っていく事だろう。

 これまで札沼線の末端部、日高本線や、釧網本線の藻琴駅で試験運行が行われてきたが、女満別空港も投入候補の一つである事は間違い無いかと思われた。

 しかし、2013年頃から、DMVではないが、JR北海道内で車両の故障や事故が相次ぎ、経営に大きな影響を及ぼすようになった。そのため安全対策と、開業を控えた北海道新幹線に経営資源を集中させるため、JR北海道によるDMVの実用化は断念された。結局、女満別空港鉄道アクセスの夢は潰えてしまった。

 しかし徳島県の第三セクター鉄道・阿佐海岸鉄道がDMVの導入を決定し、2020年の営業運転を目指し準備が進められている。