待合室、スーパーのカゴの中は…
16年も前の1992年の夏、確か8月下旬だったと思います。宗谷本線の普通列車を乗継ぎ、稚内を目指している時、音威子府(おといねっぷ)駅で下車しました。何で下車したかはもう覚えていないのですが、有名な駅そばを食べるためか、音威子府駅が終点で乗り換えのため下車したのでしょう。
待合室に入ると、改札口横にスーパーのカゴが置かれていました。
何だろうと中を見ると、小さな発泡スチロールのトレーに入れられたミニトマトが積み上げられていました。トマトは赤々と熟していて食べ頃。
カゴの側には手書きでメッセージが添えられていました。
「いつもJRをご利用いただき誠にありがとうございます。
感謝の気持ちを込めて、駅でとれたミニトマトを進呈致します。
どうぞご自由にお持ち帰り下さい。 音威子府駅長」
「駅でとれた」って…。駅に花壇があって花や植物が育てられている事はよくありますが、音威子府駅ではそれがプチトマトだったのでしょう。寒さが厳しい道北とは言え、車窓を通り越す夏の日差しは熱く照りつけるほど。そんな天塩の日差をいっぱいに浴びながら、このトマト達は成長したのでしょう。
そのプチトマトを利用客に配布しているのが面白いです。宗谷本線の名寄以北となると、原野や山河が続く超ローカル区間で利用客は多くありません。そんな中で、利用客とのふれあいを大切にする駅員さんの気持ちに触れた気分です。きっと業務の合間に、お客さんに渡すのを楽しみにしながら、駅員さん一同で、丹念に育て上げたのでしょう…。音威子府村…、いや、まさに音威子府駅産のプチトマト。私も1パック有り難く手に取りました。
最北を目指す列車の車窓を眺めながら、おやつ代わりにいただきました。
[1992年8月訪問] (北海道音威子府村)