桜満開の大屋駅から丸子線丸子町駅跡まで折りたたみ自転車でゆるく辿る



しなの鉄道・大屋駅、最後の春を過ごす木造駅舎

 輪行袋に入れたDAHON K3を担ぎ、特急しなのに乗った。踏切の非常ボタンがどうしたとかで少し遅れたが、篠ノ井駅ではしなの鉄道の列車が待っててくれ無事に乗換え。お陰で予定通り大屋駅に到着した。

しなの鉄道大屋駅、間もなく取り壊される木造駅舎と満開の桜

 明治29年(1896年)の開業以来の木造駅舎に寄り添うような2本の桜の木は満開。15年ばかり前の夏に来た事があり、いつかこの桜の大木が咲き誇る姿を見たいと思っていたもの。ようやく来る事ができた。しばし春の風情溢れる駅舎に酔いしれるように撮影した。

 しかしこの歴史ある木造駅舎にとってこの春は最後…。もうすぐ取り壊し工事が始まってしまう。それを聞いて、遅ればせながら訪問を決めた。満開の日を注視し、狙っただけの事はあり桜は満開。趣ある木造駅舎は、改修されながらも120年という歴史感じさせ木の質感漂う。しばし酔いしれるように、そして目に焼き付けるように桜華やかな木造駅舎の風情を堪能した。

しなの鉄道・大屋駅、満開の桜と折りたたみ自転車・DahonK3

 桜の木々に引き留められ、つい長居してしまい、出発準備を整えたのは正午を過ぎてから。桜の大木の下では、我がDahonK3はなんてちっぽけに見える事か…

 ここからは上田電鉄前身、上田丸子電鉄の廃線跡…丸子線と西丸子線を辿りながら、別所線の駅まで走ろうかと思う。廃線跡巡りと言っても、綿密な調査という訳ではなく、見知らぬ土地で走りを愉しみつつ、緩~くかつてレールがあったあたりを走ろうかなという程度。20㎞位走る事になりそう。ゴールは下之郷駅か?あるいは中塩田駅八木沢駅か?はたまた他の駅になるのか…、まだ決めていない。その時の気分次第。

 それでは出発!だけど、離れがたく駅前でもう一度立ち止まり、惜しむように大屋駅の方に振り返った。そして再びペダルを踏みこんんだ。

上田丸子電鉄・丸子線の廃線跡を折りたたみ自転車で走る

 上田電鉄とその前身の鉄道会社は、上田市を中心に現存する別所線の他に、青木線、丸子線、西丸子線、真田傍陽線の4路線も運行していたが、4路線は1972年まで全て廃止となった。

 丸子線は上田駅近くの上田東駅から、この大屋駅を経由し南の丸子町駅までの11.9㎞の路線だったが1969年4月20日に廃止となった。大屋駅から丸子町駅跡までは、ほぼ道路に転用されたらしい。


 市街地を走り千曲川を渡る大石橋に差し掛かった。かつては丸子線の鉄橋を転用した跡だったが、台風で流されてしまい、新しいものに架け替えられた。だけど流れる川や取り囲む山々はたいして変わっていないのだろうな…。

 ペダルを漕ぎ進めるが、道路に転用された丸子線跡には、鉄道の面影は全く感じられない。廃線されて半世紀なので、それもそのはず。まあ、迷い様が無い道は、緩く見る程度の私には、ちょうどいいのかもしれないが。

 さて…、ちょうど昼時、本格的に走り始める前にエネルギー補給の昼食をと思い、Googleマップで表示されたレストランに行ってみた。すると本日の受付は終了という悲しい結果。ならば他の店に行ってみると、外まで待ち客があふれていた。待ってまでとは思わず、仕方無くコンビニに入り食べ物を買った。コロナ感染対策でイートインコーナーも使用されていなく、外で食べるしか無かった。

丸子線廃線巡り輪行旅、昼食で寄ったコンビニからの風景

 それにしても晴れ渡った空と山の景色の素晴らしき事よ!上田市は北陸新幹線の駅がある中堅規模の市なのだが、雄大な山をこんなに身近に感じられるなんて、信州らしい風景。意気消沈した気分を抱えコンビニに入ったが、山々と青空を眺めながらの昼食は、思いがけず印象的なひと時になった。

 そして本格的な走行へ。丸子線跡には、すぐ近くを国道152号線が平行している。国道があるのに並行しているのが謎な感じだが、そのあたりが鉄道跡を転用したと道路といった趣。国道より車の通行は少なく、トラックやダンプは走っていなく、だいぶ落ち着いた道だ。自転車には走りやすい。

大屋駅から上田電鉄丸子線の廃線跡を自転車で辿り丸子町駅へ…

 それでも徐々に道が細くなり、より裏道感が出てきて、建物は減って少し田舎らしいのどかな風景になっていった。丸子線の車窓風景を少しは残しているのだろうか?

廃線から半世紀、終着駅・丸子町駅の現在

 現在は上田市となった旧丸子町の中心部が近づくにつれ、少しずつ街の風景へと変わっていった。

上田丸子電鉄・丸子線、丸子町駅跡の現在

 綺麗に整備された道になり、ロードサイド店のような建物が見えてきた。ドラッグストアだ。しかし、この場所こそが丸子線の終点だった丸子町駅があった場所。大屋駅から走り始め約1時間半、昼食の時間を引くと、一時間位。

 旅の前に、丸子町駅の廃線前の空中写真を見たが、留置線や倉庫など広い設備を有していたようだ。しかし現在では土地の区割りにすら面影を留めていないのだろう。

 ただ、やや少し先の下り坂沿いには、タクシー会社の社屋があった。このへんはいかにも昔の駅前らしい。

上田丸子電鉄丸子線の終点・丸子町駅跡

 そして歩道にはバス停があった。ドラッグストアの一角には、窓口と思しき跡が残る待合室もあった。いくつものバス事業者が乗り入れているようだが、バス停の名前は「丸子駅」「丸子駅前」「丸子町」とちょっと違う。だけど「駅」という響きが、ここにはかつて町の中心だった駅があったんだなと、かつての面影を偲ばせた。


 一休みし、これからはこの街に乗り入れていたもう一つの鉄道…、西丸子線を辿る。

動画版

 この丸子線跡の自転車旅の動画版も作ってみました。完全なる動画初心者で稚拙な上、何のひねりも無い20分弱の淡々とした動画ですが(笑)、よろしければとうぞ!

[2023年(令和5年)4月訪問](長野県上田市)