レンガ、つっかえ棒…ユニークな造りを残す大正の駅舎
JR東海・参宮線の田丸駅で下車してみた。

駅の開業は参宮鉄道時代の1893年(明治26年)12月31日。1907年(明治40年)には国有化された。
現在の木造駅舎は1912年(大正元年)築だ。白色をベースにし柱や縁が赤色に塗られアクセントになっていで、古さは感じるが、明るい雰囲気に仕上げられている。

プラットホームの高さに合わせ、駅舎は嵩上げされ建てられ、階段で出入りするようになっていた。
土台の部分を見ると、レンガが積まれて、その上は人工石が組み上げられ、その上に古い木の質感まとう駅舎が建っている。何と魅惑的な三重奏かと思わせる味わい深い造りだ。

古い駅舎は木つっかえ棒で支えられている。

田丸駅は玉城町唯一の鉄道駅で、町の中心部にある駅だ。列車の時間が近づくと、古く素朴な木造駅舎の下の人々が集う。
街を歩いた後…
列車まで時間があったので、街中をぶらついてみた。

玉城町は初瀬街道と熊野街道が交わり伊勢本街道へと続く地点にあり、伊勢神宮や西国三十三ヶ所へ参拝する人々で田丸の町はとても賑わったという。街道の合流点には記念碑が建立されている。街並みは古さを残し、今でもかつての面影が漂っていた。

田丸城址の近くでは蒸気機関車C58-414が静態保存されている。414自体は北海道で1973年(昭和48年)に役目を終えた後、同年、この地に輸送されてきたものだ。しかしC58は参宮線でも活躍した歴史あるSLだ。

9月だったが、田丸の街並みではお正月に飾るしめ縄飾りを軒先に飾っている家を何軒も見た。田丸駅に戻って来てよく見ると、同じようにしめ縄飾りが掲げられていた。この地域ではお正月以外でもしめ縄飾りを飾る習慣があるようで、駅もその習慣に習っているのだ。

待合室は窓口などあれこれ改修されているが、古き良き趣をよく残していて、昔ながらのいい雰囲気が漂う。

木のベンチに座り一休み。地元の和菓子屋さんで買った最中をお供にひと息…

瓦が敷き詰められた屋根は、正面から見るのとまた違った古き良き駅の味わいを感じさせる。
町の中心部にある代表駅だが、快速みえは残念ながら足を止めることなく走り去ってしまった。
[2011年(平成23年)9月訪問](三重県度会郡玉城町)
レトロ駅舎カテゴリー: JR・旧国鉄の二つ星駅舎
駅舎保存に向けた動き
訪問時は簡易委託駅だったが、2012年(平成24年)10月1日に無人駅となった。
2021年(令和3年)、玉城町主導で田丸駅の駅舎を保存に向けて動き出していると報じられた。
玉城町はJR東海から田丸駅の駅舎を取り壊す方針である事を伝えられると、田丸駅舎は歴史的価値のある建築物と認識し、保存・活用に方向を定め計画を策定し進めていくという。町民に実施したアンケートでも半数の約60%が駅舎をそのまま残す事に賛成している。
今後が楽しみである。