国鉄時代で止まったような駅風景
2015年秋、大矢駅など長良川鉄道のレトロ駅舎を巡り帰路に就いていた。
やや高い所にある美濃市駅に停車した。予定には無かったが、車窓の外に広がった夕景が私の足を引き留めた。ホームで灯された灯篭も、しっとしとした夜の駅のムードをより印象深いものにしていた。
その時、駅舎など古い駅施設が残ってるものと思い駅を見たが、夜だったためあまりはっきり見られなかったし、写真も十分に撮れなかった。
それから約6年後、再び美濃市駅に降り立った。
国鉄越美南線から引き継いだ駅は、支線のローカル線なれどホームの幅は広く、構内片隅には詰所跡と思われる木造建築物も残り、国鉄駅の風情をいまだ漂わせているかのよう。
斜面に造成した難しい立地の駅だが、北濃方には広い側線と側線ホーム跡も備えられていた。側線にはかつて活躍していたレールバスの廃車体が留置されていた。
桜の老木が昔からの地方の駅らしい風情を添える。
ホーム上にはペンキで塗られているが、木目浮かぶ古い待合室がいまだ使われていた。建物財産標を見ると昭和12年6月という古さだ。
構内美濃太田方の詰所跡と思われる古めかしい木造建築物。今では他の長良川鉄道の駅でも見た「通信機器室」の表示を掲げていた。
ホームは斜面の築堤上に位置するが、駅本屋は階段を下った街と同じ高さにある。地上に降りる階段を覆う屋根までも古い木のままだった。
改修されているけれど木造駅舎らしい味わいに溢れる駅
階段を下りると地下のような通路が続き、そして古めかしい木の構造物が現れた。使い込まれ古びた質感の木の上屋は鎮座する木造駅舎に繋がっていた。短いけど、歴史的建造物の回廊のごとくの重厚で渋みのある味わいに思わず感嘆の声が上がった。
駅舎は1923年(大正12年)の開業以来のもの。市の玄関口、線の主要駅だけあって、素朴な造りながらも大柄で堂々たる木造駅舎だ。真ん中増築部分のトタンの板張りが惜しい気もするが…
しかし、それ以外から漏れ出るように伝わってくる使い古された木の質感はやはり印象深く、あと2年で100歳という大いなる歴史を感じさせる。現在、そして過去… 幾人もの人が行き来したこの駅の年月に思いを馳せた。
それにしても古い木造駅舎にレトロな丸ポストは何と似合う事か!
この駅舎はプラットホーム・待合所と共に、2013年(平成25年)に、国の登録有形文化財に登録された。
待合室は天井の古い板張りや一部の壁は古い木のまま。造り付けベンチも撤去されるなど改修されているが、いい味わいを残している。
駅舎の隣には、小さな木造倉庫が残されていた。
駅は街の隅にあり、どちらかと言うとひっそりしていた。
有名なうだつの上がる町並みは、美濃町駅から1㎞弱だ。
[2021年(令和3年)11月訪問](岐阜県美濃市)
- レトロ駅舎カテゴリー:
- 旧国鉄の二つ星レトロ駅舎
美濃市駅周辺ミニ情報
保存駅舎、旧名鉄美濃駅
美濃市駅から徒歩数分の位置に1999年に部分廃線となった名鉄美濃町線の終着駅・美濃駅の木造駅舎と往時の車両が静態保存されている。内部には美濃市出身の歌手・野口五郎の展示があった。郷土が誇る有名人だが、ヒット曲「私鉄沿線」のイメージが、私鉄である名鉄と被るのだろう。
うだつの上がる町は丸ポストの町?
美濃市駅からうだつの上がる町並みと周辺を2時間程度歩いただけだが、偶然にも丸ポストを7個も発見した。もっと歩き回れば、更に多くの丸ポストを発見したかもしれない…
重要伝統的建造物群保存地区に指定された美濃市のうだつの上がる町並みは、長良川鉄道の美濃市駅から徒歩で15分ほど。一駅北隣りの梅山駅の方が少し近いので、両駅を組み合わせて訪れてもいいかもしれない。ただ、梅山駅はホーム一本だけの地味な無人駅なので、鉄道ファンではない人にはお勧めできない…