南甲府駅 (JR東海身延線)~重厚感溢れるターミナル駅風のレトロ駅舎~



甲府市内、JR東海側の拠点駅

JR東海身延線・南甲府駅ホームですれ違う313系電車

 甲府駅から身延線に乗り換え3駅、南甲府駅で下車した。身延線はJR東海の管轄でオレンジ色の帯の313系電車がすれ違う。

 駅は市街地にあり、帰宅時間帯で多くの人々が下車していた。

JR東海身延線・南甲府駅、留置線が何本もある広い構内。

 ホームは1面2線だが、何本もの側線が広がる風景はまるでレールの海。出番待ちの313系や作業用車が留置されていてもなお余る。今はひっそりしているが、昔は貨物駅もあり貨物の取り扱いも盛んだったという。そして側線の向こうに見える駅舎は、ローカル線の駅とは思えない威風堂々とした大きさだ。

 甲府駅はJR東日本の管理駅で、身延線は片隅に行き止まりホーム2線を間借りしていると言った感じだった。JR東海側、身延線の拠点となっているのがこの南甲府駅なのだろう。

JR身延線・南甲府駅、何本もの留置線を横切る長い構内踏切

 駅舎とホームをつなぐ構内踏切は4線もの側線を乗り越えていた。

身延線・南甲府駅、駅舎ホーム側には池のあるミニ庭園も

 駅舎側には見事な池のある庭園まであった。このテの池は枯れてしまっている駅が多いが、JR東海社員が勤務する有人駅で、手入れが行き届いている。うっすらと張られた水は透明感があり池の底も澱み無く見える。あちらからこちらからと角度をあれこれ変え、しばし撮影に没頭した。

JR東海身延線・南甲府駅、待合室にはみどりの窓口も

 大きな駅舎の1階中央部分が待合室になっている。出札口には駅員が勤務し、みどりの窓口の機能も有する。JR東日本の駅では特急が多く止まるような主要駅でも、近年、みどりの窓口が廃止され、遠隔での有人対応の券売機が取って代わっている。それを思うと有人のみどりの窓口が残っている光景は、今や貴重と言えるのかもしれない。

前身の富士身延鉄道の本社が置かれた重厚感溢れる駅舎

JR東海身延線・南甲府駅、富士身延鉄道の本社が置かれた堂々たる駅舎

 駅の外に出て駅舎を見渡してみた。横に長い左右対称の2階建てのコンクリート駅舎は威風堂々と鎮座しながらもレトロな気品漂い、見る者を圧倒する。南甲府駅は身延線の中間駅に過ぎないが、どこの県都の中心駅かと思える風格。まさに現代の世に残った昔ながらのターミナル駅舎だ。

 南甲府駅は身延線の前身の富士身延鉄道時代の1928年(昭和3年)、市川大門駅から甲府駅まで延伸開業した時に設置された駅で、現在の駅舎はその時以来の歴史を誇る。内部には富士身延鉄道の本社が置かれたという。開業当初は甲府南口という駅名だったが、1938年(昭和13年)に鉄道省が身延線を借り上げた時に、現在の南甲府駅へと改称された。

甲府市内、南アルプスの山々がそびえる南甲府駅前の街並み、

 駅は甲府盆地の真っ只中に位置し、周りに目を転じると、駅前の街並みの背後には南アルプスの山々がそびえていた。

JR東海身延線・南甲府駅、昭和築の重厚なビルディング駅舎

 ホーム側で撮影に興じてるうちに、いつの間にか駅には夜の足音が忍び寄っていたが、照明で浮かび上がる駅舎もまた味わい深いもの。古い昭和のビルディング風の造りだが、一見、素っ気ない建物に見える。だが細かく見ると、駅舎正面の縦長の窓周りの装飾、上部の四角い規則的な模様など装飾が洒落ていて洋風の趣も漂わす。

身延線・南甲府駅、重厚な駅舎の端部分の装飾

 両端部分の出っ張った部分の頂上は切込みが入れられている。真ん中の四角い装飾の部分がカラなのが物足りないが、かつて富士身延鉄の社章など何かエンブレムが刻み込まれていたのだろうか…

南甲府駅・駅舎の壁が剥がれ木のようなものが見える…

 2階部分で、ごくわずか壁が剥がれている部分があった。剥がれた部分には不思議なことに木目のような見える。木の板だろうか?コンクリート駅舎と聞いているが、部分的に木が使われているのだろうか…

身延線、松の木が似合うレトロな駅舎、南甲府駅

 駅前ロータリーに植え込まれた松の木が歴史ある駅舎に味わいを添えていた。

 見たところ、待合室部以外の部屋は照明がついていない。その大きさは、今となってはやや持て余し気味に映る。もっと活用され、末永く堂々とした佇まいを見せて欲しいものだ。

[2020年(令和2年) 10月訪問](山梨県甲府市)

~◆レトロ駅舎カテゴリー: 三つ星 JR・旧国鉄の三つ星駅舎