フラワー長井線では数少なくなった木造駅舎

第三セクター鉄道、山形鉄道フラワー長井線の羽前成田駅には、国鉄長井線時代から使い継がれている木造駅舎が残っている。フラワー長井線は、ちょっと前までは木造駅舎がよく残っていたらしいが、西大塚駅など残った木造駅舎は少なくなった。羽前成田駅はリニューアルされながらも古い駅舎が存えているのは嬉しい。外壁が白いトタン板で覆われていて、眩しいような白さがかえって印象的だ。駅の開業は1922年(大正11年)12月11日。それ以来の木造駅舎が現役だ。

車寄せはリニューアルされながらも木の造りを残している。

外壁はリニューアルにより木の味わい失われた感があるが、側面を見ると、木の造りをふんだんに残していて、木造駅舎らしさを垣間見せる。こちらは休憩室などに近く、駅員用の出入口だったのだろう。どこか民家の〝勝手口〟的な雰囲気が漂っているのが面白い。

駅構内の上り方面・長井方には、貨物用の切欠きホーム跡が残っている。ただ1981年(昭和56年)に、この駅での貨物取り扱いは廃止となったとの事。それから30年もの月日が流れ、雑草や土で埋もれ、でどんどん風化している。

待合室には誰かが持ち込んだソファーが置かれていた。古い駅舎だが寂れた雰囲気は無く、室内はきれいに掃除されていて快適だ。

木製の造り付けベンチがまだ残っていた。長い間…そして今もなお使われ続けすり減らされ、木目が目の前に迫るかのように浮き出ている。
ベンチはピタッと真っ直ぐではなく、微妙に程よくガタガタ感がある所が手作業的な雰囲気が漂う。大工さんがひとつひとつ木を組み釘を打っている様子が伝わり、一層の温かみを感じる。ガタガタ感は、もちろん見た目だけの話で、座るとびくともしなく安定している。

無人駅となっているが、出札口、手小荷物用の二つの窓口跡は見事なまでに原形を留め感嘆させられた。まさに、この駅が出来た大正時代にタイムスリップしたかのような心地で、窓口の向こうに今でも駅員さんがいるのではないかと思えてくる。




手小荷物窓口跡の引戸、出札口跡の木目浮き出るカウンターや、木のままの窓枠、カウンターを支える持ち送り…。驚くほどに昔の造りをそのまま残している。おそらく出来てから、ほどんど改修されていないのだろう。じっくりと見ていると、一つ一つの部品に年月が刻み込まれたかのような味わいが宿り、隅々まで刻まれたディテールに圧巻される。まさに骨董品の域だ。
風除室、鉄道林…雪国の駅らしいさ溢れる

駅舎のプラットホーム側は、軒下が壁で覆われ、密閉できる風除室になっている。雪深く寒い地域ならではの造りだ。壁面を良く見ると、木や漆喰など昔ながらの造りを良く残していた。そして掲げられている駅名標は木製で相当に古い。

ホームに出ると、鉄道林がレール沿いにずらりと並んでいた。昔から変らず、駅と列車、そして乗降客を冬の厳しい風雪から守っている心強い存在だ。
[2010年(平成22年) 4月訪問](山形県長井市)
追記: 羽前成田駅復原
2012年、駅舎が大改修された。特筆すべきが、外観が昔の木造駅舎の姿に戻されるように改修された事で、外壁は白いトタン板が外され木の板に、窓枠が木製に、風除室の壁の撤去など、よくここまでやったなという徹底振り。私の中では、東京駅丸の内駅舎に負けない程の駅舎の復原だ。
2015年(平成27年)、同線の西大塚駅の駅本屋(駅舎)と共に、登録有形文化財に指定された。

また、駅前住人の方々による「羽前成田駅前おらだの会」による、駅活性化の活動が、この駅の魅力を更に深いものにしている感がある。季節の風景、旅人が駅ノートにしたためた想いなど、ブログで積極的に情報発信をしていて、居ながらにして羽前成田駅の今を感じることができる。
※ブログ・羽前成田駅おらだの会
~◆レトロ駅舎カテゴリー: JR・旧国鉄の三つ星駅舎~