関西本線・佐那具駅の枯池~ひっそり佇む信楽焼のタヌキが哀愁誘う…~



ホーム片隅の廃れた池庭

 名実共に「本線」だったかつての名残を留める長い長いホームのあるJR西日本・関西本線の佐那具駅。上りホーム西側、奈良方に枯池があった。荒れ果てた雰囲気だが、岩が組まれた燈篭のようなオブジェが目を引いた。

関西本線・佐那具駅上りホームに残る枯池
関西本線・佐那具駅、上りホーム端の信楽焼のたぬき

 そしてよく見ると、信楽焼の狸が佇んでいるのが見えた。

 トボけたような愛らしい表情や出っ張ったお腹が滑稽で親しみやすい風体なのは相変わらずだが、色褪せ、何者かの仕業か傘が壊れているのが可哀相だ。

 タヌキの焼き物が有名な信楽焼と言えば、滋賀県甲賀市信楽町が本場だ。山を挟むが、佐那具駅からは直線距離で北に約10kmと意外に近い。池こそ無いが、新堂駅、笠置駅と言った近場の関西本線の駅にも、信楽焼のたぬきが置かれていた。駅に何かちょっとした物を飾ろうとなると、やはり近場の名産品という事で、信楽焼のたぬきが選ばれているのだろうか。でも、なによりも、あの姿をると和まされずにはいられない。関西本本線の三重県内の山間部は、今や単行か数両の列車が行き交うだけの完全なローカル区間と言えるが、編成が長かった頃、きっとプラットホーム隅のこの辺りにも車両が停車し、乗客達は池庭の中にたぬきがいるのを見て、顔を綻ばせていた事だろう。タヌキは駅や路線の栄枯盛衰まで見つめてきたのだ。

関西本線・佐那具駅、上りホームの枯池と信楽焼のたぬき

今日もタヌキは

 駅を・・・
 線路を・・・
 列車を・・・
 乗客を・・・

じっと見つめている。

[2010年(平成22年) 4月訪問](三重県伊賀市)

佐那具駅訪問ノート

JR西日本関西本線・佐那具駅、古い木造駅舎

 駅の関西鉄道時代の1897年(明治30年)と古い歴史がある。1914年(大正3年)築の木造駅舎が改修されながらも使い続けられている。簡易委託駅。

 春は上りホームに沿って植えられた桜並木が美しく咲き誇る。

 この地区は、大和街道佐那具宿があった所で、駅前にはその面影を残したこじんまりとした街並みが残っている。


~◆レトロ駅舎カテゴリー: 一つ星 JR・旧国鉄の一つ星駅舎