秋深まる砂原支線を駆ける~函館本線2022年廃止予定駅を自転車で巡る駅旅(2)~



鹿部駅までは普通列車に自転車をのせて…

 来年2022年で廃駅が見込まれている函館本線の5駅。本石倉駅、石谷駅など函館本線の駅を巡り、森駅前に泊った。翌日は銚子口駅、流山温泉駅、池田園駅と言った砂原支線の廃止予定駅を中心に巡る計画だ。

ダホンK3で北海道の輪行鉄道旅行へ

 森駅6時6分発の砂原支線上り列車に、自転車と共に乗り込んだ。

 最初に渡島砂原駅で下車した。そして一駅戻り、掛澗駅、そしてまた進み、渡島沼尻駅を車窓から眺め鹿部駅で下車した。折りたたみ輪行袋に入れた状態とは言え、かさばる自転車を持っての駅巡りで、超軽量のK3とは言え8kgの荷物はやっぱり重い。しかし、駅を観察している間、始終、持ち歩いている訳でなく、どこか邪魔にならない所に置いておけばいいので、意外と苦にならなかった。

函館本線砂原支線・鹿部駅と折りたたみ自転車・ダホンK3

 そして自転車を展開し、鹿部駅から自転車での走行に転換。大沼駅か大沼公園駅まで約30㎞弱を走る事になりそうだ。

銚子口駅への道

 鹿部駅からは色づいた紅葉に飛び込むように颯爽と坂を下った。

 鹿部駅から銚子口駅までは鉄道では7.8kmだが、道路では約14㎞と倍近い距離になる。鉄道が駒ヶ岳の麓に沿ったルートなのに対し、道路だと直角に遠回りするようなルートとなる。

 鹿部町の中心地は、駅からは約4.5kmも離れている。国鉄駅は地方だと町の中心部からやや離れ位置している場合が多いが、これは離れすぎのような気がする。

 鹿部駅周辺は緑に囲まれた長閑な雰囲気で、街と言った雰囲気ではない。駅北側や西側にゴルフ場があり、更に西の奥には陸上自衛隊の演習場がある。東側一帯は別荘地だという。走りながらざっと見ていると、古びた空家や崩れかけた廃墟といった田舎にありがちな建物は無く、小奇麗な家屋が森の中に点在する風景が続いた。ただ生活感は薄かったように思う。そのへんが別荘地に趣なのだろう。

鹿部駅から離れた鹿部町中心地

 坂を下り切り港町を走ると、国道278号線沿いにある鹿部町中心地に至った。昔は建物が立ち並んでいたのだろうが、所々、歯が抜けたように空地があった。

 コンビニで一休みし、進路を西へ向け道道43号線を走り続けた。森駅から列車で見下ろしてきた沿線の街や集落、鹿部駅からあれだけ逆を下ってきて予想はしていたのだが、上り坂が延々と続いた。何とか走れるが、疲れる…

鹿部町、紅葉が鮮やかに色づく道道43号線

 時折、道沿いで色づく紅葉に目を奪われ、風景を愉しみ写真を撮りつつひたすら上がった。

 途中、東大沼温泉の看板がある分かれ道があった。地図によると、この道を道なりに行けば銚子口駅に行けるはずだ。

 脇道に入ると、もうすれ違う車も追い越す車も無く、山の中に伸びる道を悠々と走った。

七飯町の東大沼温泉、ホテル休業中でも湧き出る温泉

 途中にホテルがあった。しかし、休館日なのか妙にひっそりしていた。敷地の片隅では、パイプからドボドボと水が吐き出されていた。水からはよく見ると湯気が立っていた。どうやら温泉のようだ。もったいないが、湧き出る温泉を捨てなければいけないのだろう。ひと風呂浴びたい気分だが、有り難く手を洗わせてもらった。

 再び走り出ししばらくすると、道はダートの坂道になってしまった。とても運転しづらい。ある程度の坂には慣れたつもりだったが、少しでもきつくなると、もう降りて押すしかなかった。

 しばらくしとんでもない事に気づいた。道が無い所を走っていたのだった!正確に言えばGoogleマップで表示されていない道なのだが。誤差かと思いペダルをこぎ続けていると、ますます予定していた道から外れていった。これは完全に道を間違えたようだ。

 引き返した方がいいのか…?にしても登って来た道を引き返すのも抵抗があったし、銚子口駅や大沼はもう1キロ圏内のはずで、このまま進み続けても大沼には至りそう…

 幸運にも先に車が停まっていて、近くでは持ち主が犬を遊ばせていた。聞いてみると、道なりに進めば大沼に至るという。

函館本線砂原支線・鹿部-銚子口駅間の鉄橋

 さらに進むと、予定には無い函館本線の鉄橋が現れた。道を間違えた事を印象付けたが、大体の位置も解った。左側、つまりは西に進めば、地図で途切れている道に繋がり、銚子口駅に至るだろう。

七飯町の紅葉が鮮やかな道

 ダートは走りづらく大変だったが、紅葉のシャワー降り注ぐ山道をのんびりゆくのもまたいいもの。

 ようやく舗装道になったら、山林の中、右手に忽然と運動場が現れた。大沼多目的グラウンド・トルナーレだ。

銚子口駅

 グランド沿いの道から再び逸れ、荒れた道をゆくと、やっと銚子口駅に着いた。鹿部駅から1時間45分も掛かった。

函館本線砂原支線・銚子口駅、荒れた西口

 当初の予定と違い、駅西口への到着となってしまった。西口と言ってもホームからの階段があるだけで、周囲は申し訳程度に林を切り開いた空地だ。

 先程のトルナーレはラグビーやサッカーをメインにしたグラウンドで、サッカー日本代表も合宿に使った事があるという。トルナーレ訪問者の利用を想定し、この簡素な出入口を作ったのだろう。しかし結果は、廃駅という無情な現実…

函館本線砂原支線・銚子口駅、ホーム北端の詰所跡

 相対ホームの小さな駅だが、路線は長大編成の貨物列車のすれ違いができる長さを持つ。駅が廃止されても、信号所として残るだろう。

 下りホーム外れには詰所跡と思われる木造建築物がポツンと佇んでいた。

函館本線砂原支線、廃止となる銚子口駅

 駅舎はコンクリートの簡易駅舎で、狭い待合室と、倉庫か何かのスペースから成る。

 他の砂原支線の簡易駅舎のように、近年、整備・改修されたのか、薄いオレンジ色のペンキがよくのっている。赤色の屋根も錆び一つ無い。

銚子口駅「本場の味 サッポロビール」が消された駅名標

 駅舎には縦型駅名標が取り付けられていた。かつては駅名の下に「本場の味 サッポロビール」という広告が、街の駅から秘境駅まで、どのJR北海道の駅にも取り付けられていて、北海道らしさを感じさせたもの。しかし広告の見直しにより、今年2021年に一気に姿を消した。

 この銚子口駅でも、サッポロビールの広告は既に無く、その部分には代わりに白い板があてがわれていた。どうせ廃止になる駅だから、そのまま放っておけばいいのにと思うのだが、わざわざ変えるとは律儀だ。

函館本線砂原支線・銚子口駅、駅前の廃商店

 駅前は人家もまばらでひっそりとし、レトロな廃商店も残る。かつてはささやかながらも、もっと多くの人が暮らす集落が形成されていたものなのだと実感した。

行けない?? 流山温泉駅

 銚子口駅の後は、1.2㎞離れた流山温泉駅だ。流山温泉駅の情報を何気にネットで見ていると、検索候補に「行けない」があるの見て、どういう事かと思った。

 流山温泉はJR北海道が日帰り入浴施設を核として開発・経営した観光施設で、2002年に開業した。しかし経営は厳しく2015年に営業終了となった。現在ではどさんこを育てるパド・ミュゼ 大沼流山牧場が事業継承しているが、温泉は再開されないまま。

 肝心の施設は閉鎖されても、流山温泉駅は存続していた。その辺は行川アイランド駅を思い起こさせる。しかし乗降客は一日一人以下で、2022年のダイヤ改正で命運が尽きる。

 流山温泉駅に出入りするには、牧場の敷地を通る必要があるという。レストラン等を併設する観光牧場だが、コロナウィルス禍で休業中でゲートも塞がれている。駅は大沼沿いの道路から見られる近さだが、そちらからの通路は無い。

 八方塞がりで駅訪問者を戸惑わせ、行けない駅と称されるゆえんだ。しかし、駅利用者が牧場の敷地を通るのは認められているという。もし知らなかったら、私も現地でかなり困惑しただろう。


 銚子口駅からしばらく走ると、大沼沿いの道路に出た。湖畔沿いには自然豊かな風景が広がるキャンプ場もある。10月下旬だというのにまだテントの数も多い。晩秋の割に気候が温かいというのもあるのだろうが、コロナウィルスの感染状況が落ち着き、出控えていた人々が繰り出してきたのだろう。

 道沿いに観光客向けの飲食店もあり、レンタサイクルで走る人もちらほら見掛けた、行楽ムード感じさせた。こういうムードにあやかろうと流山温泉を開発したのだろう。だけどそんな雰囲気には乗れなかった。

流山温泉駅への途上にある函館本線の流山温泉踏切

 事前に調べた牧場の入口を目指し進んだ。北海道らしく自然豊かな風景の中、一本の道がまっすぐ伸びる風景の中に、函館本線をまたぐ踏切があった。その名は流山温泉踏切。踏切を渡り少し進むと流山牧場のゲートがあった。流山温泉駅の入口だ。

流山温泉駅への途上、のどかな大沼流山牧場と駒ヶ岳

 立ち入り禁止でないのを確認し、ロープが張られたゲート横から中に入った。駒ヶ岳に抱かれたような牧場は長閑なムード溢れる。とは言え観光的には休業中なので、恐る恐る先に進んだ。

 「流山温泉駅」の表示に従い進み、奥まった道を進むと、遂に流山温泉駅に至った。

函館本線砂原支線・進入禁止な??流山温泉駅

 林を切り開いた空地の奥に、駅施設が忽然と現れた。しかし建物は一つもなく、雨をしのぐ上屋さえもない。一面一線の北海道の無人駅によくある棒線駅だが、21世紀に開業した駅だけあって、車椅子用のスロープが設けられている。

 ここでも駅敷地の出入口にロープが張られ、利用者を拒む廃駅のよう。しかし脇に小さな注意書きがあり、動物の侵入防止のためのロープで、駅利用者はロープを外すかくぐって出入りしていいと標されていた。

200系新幹線が静態保存されていた流山温泉駅、パーツだけが残る…

 流山温泉駅には、かつては東北上越新幹線の200系が3両静態保存され、同駅の名物として知られていた。しかしそれも老朽化が進み撤去され、今や残骸のような鼻と車輪が残るだけ…

JR北海道・函館本線、秘境駅と化した流山温泉駅

 ホームは2~3両分の長さで、このクラスの駅としては長め。駅名標は太字の筆記体と独特で、観光駅として鳴り物入りで登場した事を感じさせた。

 ホームからは木々越しに大沼と道路が見えた。こっち側からも出入りするようにしていれば、流山温泉や駅の運命は違うものになっていただろうか…?

池田園駅

 牧場の敷地から出て、再び流山温泉踏切を渡り大沼沿いの道路に出て、池田園駅に向け走りだした。

 途中、林の中に玄関のような門があり、そこから車が通れる程度の道が奥に伸びている所が数か所あった。駒ヶ岳と大沼を望む絶好のロケーション。金持ちの別荘でもあるのだろうか…

 池田園駅が100メートルほどの場所に至った。しかし駅に行く前に…

池田園駅近くのレストラン、ランバーハウスの大沼牛ステーキ

 大沼牛を使ったステーキが人気のレストラン・ランバーハウスで贅沢なステーキランチを堪能。

 ランチを終えると池田園駅に向かった。目の前に跨線橋やホームが見えたが、その前には牧場跡と思しき柵が立ちはだかっていた。どうやらこちら側には出入口は無いように見えた。

七飯町大沼沿いの道、池田園駅への道を示す看板

 大回りだが反対側にまわるしかなく、地図を見て来た道を戻ると、脇道に池田園駅の方向を標した小さな看板があった。看板に従い落ち葉が敷き詰められたような道に入り、再び現れたダートを走った。

函館本線砂原支線、こじんまりとした集落にある池田園駅

 集落に至ると程なくして池田園駅が見えた。銚子口駅よりは家屋が多く感じたが、駅前はやはりひっそりとしていた。

JR北海道・函館本線砂原支線・池田園駅、駅舎ホーム側

 駅舎はやはり他の砂原支線の駅のように改修されていて、きれいな色をしている。約半年後に廃止になるとは思えない。

 規模は銚子口駅など簡易駅舎程度の他の駅に比べやや大きく、ホーム側には閉塞機室と呼ばれる出っ張りもある。1980年に駅舎が改築されたとの事だが、有人駅としての利用を想定して建てられたのだろう。

函館本線砂原支線・池田園駅、自然豊かな風景の中のホーム

 ホームへは線路を横切る構内通路ではなく、立派な跨線橋を備えていた。周囲は深い木々に閉ざされ、駅前以外に人家は見当たらない。

 ホームは島式の一本だが、だいぶ昔に片側は廃止されたよう。雑草が深く生い茂り、木々が何本も高く成長していた。

 ホームを歩いていると、反対側にも出入口があったのに気付いた。無駄に遠回りしてきて損してしまった気分になったが、自転車を抱えて跨線橋を上がらなければいけなく、それはそれで面倒だったかもしれない。

ゴールの駅へ…

 この先、大沼公園駅に行こうか、その前に木造駅舎が残る大沼駅に寄るかとか、いくつかルートを考えていた。私の走力だったら、あまり欲張るより余裕かました方が安心だなと思い、ゴールの駅は大沼公園駅に定めた。

七飯町、池田園駅から大沼公園駅へ自転車で走る…

 田舎道を走り続け、次第に街らしい風景になっていき大沼公園駅に到着した。

 北海道では晩秋とは言え、昼間はまだ暖かい。お土産屋やレンタサイクル屋など行楽ムード漂う駅前には、まるでコロナに押し込められた人々が解き放たれたように、多くの人々で賑わっていた。

 この先は新函館北斗駅から新幹線で一気に名古屋まで帰路に就くが、自転車で走るのはここまで。久しぶりの自転車旅で不安もあったが、無事に感想できてホッとした。

函館本線・大沼公園駅、駅舎を眺めながら大沼だんごをいただく

 まだ余裕があったので、うららかな日差しの下、大沼名物・大沼だんごをいただいた。名駅舎の大沼公園駅を眺めながら愛車と共に打ち上げをしているかのように…

[2021年(令和3年10月訪問)]