長野地区の旧国鉄駅舎、ちょっと洒落た装飾



30年前に訪れた姨捨駅で…

 2026年1月、もしかしたら30年振りと、かなり久しぶりの訪問となったJR篠ノ井線の姨捨駅。木造駅舎があったとか、キオスクがあっておばあちゃんが店番していたとか、だいぶ昔の事だけど、記憶に残っている駅だった。
(※姨捨駅の写真はすべて2026年訪問時のもの。)

JR篠ノ井線、長野県千曲市にある姨捨駅、昭和レトロな洋風木造駅舎
JR篠ノ井線・姨捨駅の木造駅舎、正面の独特な装飾の窓

 当時、そんな姨捨駅でもう一つ印象的だった事が、駅舎正面出入口上の、星を縦長にデフォルメしたようなこの装飾。ピエロの顔のペイントっぽい形なので、個人的には「ピエロ模様」と呼んでいる。

 ファンシーと言うか、メルヘンチックと言うか…、何でこんな奇抜でシンボリックな装飾が、突然、ポンと出て来るのか?当時は駅舎には関心が無いにも関わらず、とても不思議に思い印象に残った。

 駅舎はきれいにリニューアルされたけど、この個性的な部分は残されていてひと安心。改めて見ると、ピエロ模様の少し下の両脇にある、正方形の中に玉が入ったような一対のレリーフの装飾も面白い。


 少しズームして見てみると…

JR篠ノ井線・姨捨駅の木造駅舎、正面の小窓の装飾

 ピエロ模様は木でできていて、真ん中には小窓がはめ込まれていた。窓枠は木製。そこから六方に向けて先細りしていく線が伸びていく感じだ。帰宅後、モニターで見ると、彫り込まれた木の質感が確認でき、シンプルなれどよく造りこまれているいるなと感心。

JR篠ノ井線・姨捨駅の木造駅舎、独特な装飾の正面小窓と側面通風孔

 この模様は側面にもある。そちらは窓ではなく通風孔だ。きれいなので修繕されたのかもしれないが、半世紀近く昔の姨捨駅の写真にも付いていたので、全く縁なくそこに付けたという訳ではないのだろう。

JR篠ノ井線・姨捨駅、トイレ外観の装飾

 このピエロ模様、姨捨駅のシンボルと見られているようで、駅舎に似せて新築されたトイレにも同じような装飾が施されていた。

姨捨駅、トランスイート四季島の停車に合わせて作られた展望ラウンジ・バー

 駅舎に隣接して建てられたトランスイート四季島乗客のためのラウンジ「更級の月」のレール側と側面の2か所にも、ピエロ模様はあった。この模様があるだけでガラス張りの無機質気味な建物が洒落た雰囲気になり、いいアクセントになっているなと思う。

長野県内、他の国鉄駅舎でも…

 21世紀になり駅舎巡りというものに目覚め、いろいろな駅に訪れるようになっていた。


 2008年8月、しなの鉄道・しなの鉄道線の大屋駅を訪れた。しなの鉄道は北陸新幹線の開業に伴い、JR信越本線の長野県内の区間が移管された第三セクター鉄道線で、軽井沢-篠ノ井間のしなの鉄道線、長野―妙高高原間の北しなの線からなる。

しなの鉄道・大屋駅の木造駅舎(旧駅舎)

 1896年(明治29年)の開業以来の木造駅舎が残っていたけど、残念ながら2023年に取り壊し…

しなの鉄道・大屋駅の木造駅舎(旧駅舎)、側面の星のような通風孔

 駅舎の側面を見ると
「あ!ピエロ模様だ…」
と姨捨駅を思い出していた。星を思わすという点では似ているが、デザインは全然違い、大屋駅の方がより星っぽい。…と言うか輝きを表したかのようなデザイン。そんな模様が三層重ねられ立体感ある造り。真ん中には細かい穴がぷつぷつ開けられた楕円模様がある。どうやら通風孔のようだ。でも、なんでありふれた木造駅舎のこの一点に、こんな奇抜なデザインを取り入れたのだろうか…?


 そして2019年7月、JR篠ノ井線の西条駅。

JR東日本・篠ノ井線・西条駅、リニューアルされた木造駅舎
JR篠ノ井線・西条駅の木造駅舎、側面の装飾

 新築のようにリニューアルされた木造駅舎側面にダイヤ状の通風孔が…

 その斜め下の、球形が入った正方形二つが一対となったレリーフが面白いなと思ってみていたが、似たような装飾が姨捨駅にもあるのに改めて気付いた。

姨捨駅、駅舎正面のレリーフ状の装飾

 こちらが姨捨駅のレリーフ。ちょっと違うけど、球形が入った正方形が一対という大まかなデザインは同じ。メインの装飾斜め下という位置も同じ。


西条駅の翌日に訪れたしなの鉄道・北しなの線・黒姫駅。

しなの鉄道北しなの線・黒姫駅、昭和7年築の洋風木造駅舎

 屋根が急角度で側面の半切妻が特徴的な洋風木造駅舎が現役。

しなの鉄道・黒姫駅の木造駅舎、側面の装飾

 屋根側面を見ると、真っ白な壁にデザイン性のある造形が施されていた。

しなの鉄道・黒姫駅、屋根側面の装飾

 ズームしてみた。長方形の土台が三層重ねられた立体感をもたせた造りで、中は四角く繰り抜かれたようになっている。その上部に半円の装飾ばあるが、茶色いアーチのようなものは14枚の小さなスクラッチタイルを並べ形作ったもの。その内側の半円部分はあえてモルタルを露出させている。

 元々、通風孔か窓だったものが塞がれたのか…?それとも単にデザイン性を高めるための装飾だったのだろうか…?


 もしかしたら他の駅にもこんな装飾があるかもと思い、三千以上の1970年代の国鉄駅舎の写真を掲載された本を取り出し、長野県や周辺の駅舎を見てみた。

 すると、信越本線(現しなの鉄道)・北長野駅の駅舎側面にも姨捨駅のような星状の装飾があった。県境を越えて新潟県の同線・関山駅の側面に黒姫駅のように四角を積み重ねた装飾があった。関山駅のものは窓が埋め込まれているように見えた。

 しかし、側面が写っている駅舎は少なかった。それにほとんどの駅舎が既に取り壊されてしまったので、もしかしたらそのテの装飾がある駅舎は、もっとあったかもしれない。

 ここであげた駅舎が何年築が見てみると…

 姨捨駅-1934年(昭和9年)
 大屋駅-1896年(明治29年)
 西条駅-1934年(昭和9年)
 黒姫駅-1932年(昭和7年)


 北長野駅は3回、駅舎が変わっているので、本の中の旧々駅舎は、開業時の1898年(明治31年)築との事。

 いずれも明治から昭和初期に建てられた駅舎だ。


 しなの鉄道…旧信越本線、そして篠ノ井線。何で長野県の国鉄駅舎にこのような奇抜で目を引く装飾が施されていたのだろうか…?国鉄の発足は1949年なので、正確に言うなら、鉄道省など国鉄の前身となる国有鉄道の事業者という事になるが。

 当時、駅舎の設計や建築を請け負っていた建設会社に変わったセンスの人がいて、ハイカラでインパクトのある造りをちょっと採り入れた…からだろうか?その駅のある自治体の図書館に行って郷土史をあたれば、路線の工事に関する事や施工業者、駅舎に関するちょっとしたエピソードなど、何か分かる事があるかもしれない。