やっと中間あたりの羽幌へ
朝の8時20分に豊富温泉を出て留萌を目指す沿岸バスの豊富留萌線(幌延留萌線)。初山別市街地を出て日本海沿いを走り続けた。このあたりでもうすぐ全行程の半分に差し掛かろうかという頃合いだ。もうすぐ羽幌町に入る。

バスは何もない所にポツンと佇む小さなバス停をいくつも通過してゆく。ほとんどのバス停で乗降は無いけれど…

しかし路線北部の豊富や幌延では、乗降はほとんど無かったものの、南に進むにつれ、たまに誰かが乗って来た。
羽幌中心部に近づくたびに家屋やお店がどんどん増えていき、久しぶりに大きな街に来たなと感じた。昨日早朝の稚内以来だ。羽幌町は沿線では留萌市に次ぐ規模の市町村だ。
そして本社ターミナルに停車した。その名の通り、沿岸バスの本社が置かれ、バス待合所も併設された建物は昭和レトロな趣き。
ターミナルでトイレに行かせてもらえると聞いていたので申し出ると、次の羽幌ターミナルでどうぞとの事。
少し走ると羽幌ターミナルだった。豊富駅から約2時間30分という長い旅路の中間点的な位置だ。国鉄羽幌線の羽幌駅跡地に開設されたバスターミナルで、羽幌町内昔からの沿岸バス拠点停留所を本社ターミナルと呼んで区別している。
羽幌ターミナルは1997年の自転車旅行でちょっと奥まった立地にあったのを見ていて、いかにも駅らしい立地だなと思ったのはおぼろげながら覚えている。

羽幌ターミナルは、行き止まりのプラットホームのように、車両の駐車位置が設置されていて、どことなく昔のバスターミナルっぽい風情。
ここでトイレに行きたいと申し出て、バスの外に出た。久しぶりに触れる外の空気の中でなまった体を軽くストレッチし、ふぅと大きくひと息ついた。もう少しターミナルを見ていたかったが、ダイヤを乱す訳にいかない。
戻って来た時、バスの行先表示を見ると「幌延留萌線」系統番号「12」番と示されていた。朝、豊富温泉停留所で撮影した画像を見て見ると、番号は32、路線名は豊富幌延線(留萌直通)となっていた。律儀に32番と12番系統の境目になる幌延深地層研究センター前で切り替わったのだろう。
私が戻るとバスはすぐに出発となった。日本最長クラスの路線バスの旅は、残すところあと1時間40分。
日本海を眺めつつ終点の街、留萌へ
トイレに行き一安心、車内でうとうとひと眠り…

バスは小平町内へ。右手にはニシン漁が盛んだった時代の面影を伝える旧花田家番屋をかすめた。自転車旅行の頃は、アップダウンが続くこの道を走る事に必死だったもの。いつか三度目に通る時は、名所に立ち寄りながらゆっくり行くのもいいかもしれない。

左手には崖の上との間に微妙な狭さのある草生した空間が続いていた。羽幌線の廃線跡かなと思いながら眺めた。

谷間の原野に流れる川にコンクリート橋台の跡があるのが見えた。羽幌線の廃線跡だ。廃線から30年過ぎても色々遺っているもの…

車窓右手には雄大な日本海がひたすら広がっていた。
留萌に近づくと、乗客は私を含め10人程度に増えていた。女性の姿が多かった。

のどかな風景が終わり家屋が増えてくると、長かった路線バスの旅の終わりが近づいている事を実感。終点の街、留萌だ。

バスは留萌の中心街の留萌十字街に停車した。温水プール「ぷるも」などが入る留萌十字街西ビルの一角に、沿岸バスの待合所があり、留萌駅前停留所と共に、旭川行きバスの乗り換え地点として案内されている。ここで何人が下車した。
あと20分で長かった旅も遂におしまい。終点の留萌市立病院はいよいよだ。
しかし、この先のプランを考え。留萌駅前で降りようか、この期に及びまだ迷っていた。というのも、豊富留萌線完乗に加え、折角なので留萌本線で一駅、大和田駅も訪れてみたかった。そうなると、13時37分に大和田駅を出る上り列車がある。何とかつなげる事はできそうだが、乗り継ぎが各所ギリギリだった。もし、どこかで狂えば次の大和田駅の上り列車は3時間後だ。少し妥協しようかという考えは頭から離れなかった。

とは言えやはり初志貫徹。車窓左手に留萌駅をやり過ごしこのまま乗り続けた。いつの間にか乗客はまた私だけになっていた。街中、何度も信号に止められながらもラストスパートだ。

市街地が過ぎ、車窓は再び郊外の雰囲気になっていった。終点直前、旅を共にした萌えっ子フリーきっぷをパチリと撮影。
そしてバスは田舎風景にそびえる城郭のようなビルの足元に滑り込んだ。遂に終点の留萌市立病院に到着。12時27分、一分の早着。豊富駅を出発し4時間7分、そして私が豊富温泉から乗って約3時間57分。私と私を乗せてきたバスの長い旅の終わりを噛み締めた。長距離だがよく時間通りに走れたもの。

終わった~と思い、バスから飛び出ると、バス停に並ぶ人々の列が目に入った。観光地でもなく、私自身が病院に用事がある訳でも無いのに、旅でこんな所に来るのは何とも変な気分。
しばし余韻に浸る間もなく、バスは回送となりすぐに行ってしまった。列車ならしばらく停車してるものだろうが、まあそうだろうなぁ…。バスも運転士さんも営業所に戻りひと休みだ。
旅は終わらない…
とは言え私も余韻に浸ってはいられない。国道233号線沿いのバス停から、沿岸バスの旭川行きのバスに乗り換え大和田駅近くに行かなければいけない。そもそも、市立病院の裏を留萌本線のレールが通っている。駅を作ってくれれば良かったのにと、ちょっと恨めしくも思う。乗り換え時間は13分。足早に留萌市立病院を後にした。

不慣れな道をスマホで地図を確認しながら早歩きしていると国道が見えた。川を渡り周辺を見渡すと目的のバス停、南九条橋を発見した。目の前には陸上自衛隊の留萌駐屯地があった。

数分余裕があった。ついさっき到着したばかりの留萌市立病院に振り返った。
「長かったけど楽しいかったなぁ…」
さっきまでの旅の感触がいくつも頭の中に蘇っていた。ようやく余韻を噛み締める事ができたひと時だった。

少し遅れ旭川行きのバスが到着した。こっちは高速バス仕様だった。
車内に入ると弁当の匂いが漂っていた。ちょうど昼時なので、そうだろう。匂いのもとに目をやると、20代位の若い女性が丼ものの弁当にかぶりついていた。この人、さっきの豊富留萌線の車内で見た人のような気がする。留萌十字街で乗り換えて旭川に行くのは一般的なルートなのだろう。こうしてまた道が交わるのも不思議な気分。私はすぐに降りるけど…
[2020年(令和2年)7月訪問]