沿岸バス・豊富留萌線乗り通しの旅(2)~羽幌線と昔の自転車旅を辿る路~



長いバス旅のはじまりは豊富温泉から

 日本屈指の長距離路線バスで、羽幌線代替バスでもある沿岸バスの豊富留萌線(幌延留萌線とも…)の旅。豊富温泉で一泊した後は遂に留萌まで一気に南下する。

 朝、外はの雨が降りしきっていた。今日は半日、バスの中なので、まあこの日に本降りの日が当たってラッキーと言えるのかもしれない。

沿岸バス・豊富温泉停留所

 豊富温泉停留所に着いたが、バスが来る直前まで、反対の豊富駅方面乗り場の建物の軒下を借り雨宿りをした。

豊富温泉に到着した沿岸バス、終点は留萌市立病院の超長距離路線バス

 1分前に羽幌・留萌方面の乗り場に戻ると、タイミング良く8時30分発の留萌市民病院行きのバスがやってきた。長距離路線とは言え、高速バス仕様の座り心地のいいシードではなく、街中の生活路線で走っているバスと同じ車両だ。これに4時間乗っていくのだと思うと、遂に大いなる路線バスの旅立ちを感じた。

 旅荷物の中に、道中のエネルギー補給にとペットボトルの水と一口サイズのチョコレート菓子を忍ばせてた。

 乗客はこの時点で私以外いなかった。できれば最前列シートに陣取って正面の車窓、いわゆるかぶりつきを愉しみたかったが、昨日と同じでコロナウィルス感染対策で使用禁止になっていた。なので後部座席の窓枠が目の前に掛っていない席を選んだ。

沿岸バス12留萌行き・豊富町の車窓

 豊富温泉を抜けると、バスは北海道らしい原野へ駆け出した。

沿岸バスの車窓、牧場が広がる酪農の町・豊富

 酪農が盛んな豊富町らしく、車窓の外には牛の放牧地が広がる。豊富牛乳や旅館のバター料理が美味しかったなあ…

沿岸バス豊富-留萌線、一般路線バスの車両

 途中で一名乗車。ローカル路線バスは、免許の無い年配者や通学の学生が大半だが、意外と若めの人が乗って来たので驚いた。

 昨日、豊富駅から乗った時は、USBの充電コンセントがある車両で、イマドキの路線バスの設備に驚いたものだが、この車両はコンセント無し。とは言え、車内はきれいで不快な所は無かった。

 そして幌延深地層研究センター前で停車。ここを跨いで乗車する場合も一旦、運賃の精算が必要になるが、萌えっ子ふりーきっぷを買っていたのであっさりパス。

 幌延市街が近づくと、車窓は徐々に街の風景になっていった。1997年の北海道自転車で日本海オロロンラインを走り抜けた私は、幌延の街外れのキャンプ場にテントを張ったものだ。

沿岸バス、幌延市街地を走る

 キャンプ場が見えるかなと思い、車窓の外に思いを馳せていると、昨日、駅巡りの途上に立ち寄った街を通り抜け、8時49分に幌延駅に到着した。すっかり列車が減った駅は人気が無く沈黙しているかのよう。主要バス停と言えるのだが、乗車してきた人はいなかった。

幌延から羽幌線を辿るように日本海へ

 幌延駅を出ると、遂に羽幌線の廃線跡に沿うようなルートで南下する。

沿岸バス12・留萌行き、幌延駅を眺め羽幌線廃線跡を辿る…

 羽幌線は稚内方から幌延駅を出ると、方向を180度変えるルートでレールが敷かれていたが、バスは南側の踏切を通った。踏切から少し遠くに見えた幌延駅に、車内から別れを告げるような気持ちで見つめた。

沿岸バス・豊富-留萌、日本海側の遠別町国道232号線に出る

 天塩川を渡り国道232号線に入り、しばらくすると日本海側に出た。

 稚内から札幌に至る「日本海オロロンライン」と称されるルートは、いくつかの国道と道道から成る。幌延から留萌までの約140㎞は大部分が国道232号線にあたる。この道はあの時の北海道自転車旅で印象的だった道の一つだ。この道を通るのはあの時以来。自転車の時は北上だったが、同じルートをゆく事に、輝かしい思い出に邂逅するかのような気持ちで溢れた。

 最初、右の海側の席に座っていたが、雨が西側から吹き付け車窓は霞んでいた。それに羽幌線の廃線跡を探すなら内陸側に座った方がいいだろう。乗客はまた私一人になってしまい、左側に座っても海を眺めるのにもあまり差支えは無かった。

 牧場や原野を眺めながら、この辺りを走っていたんだろうなと思っていると…

遠別町、沿岸バスから見た羽幌線廃線跡のコンクリート橋

 突然、コンクリート橋が目に飛び込んできた。明らかに羽幌線の廃線跡だ。1987年の廃線から30年以上も過ぎたが、まだこんなに強固に残っていたなんて…。今にも列車が走ってきそうなほど、しっかりしているように見えた。

初山別、呼び覚まされる自転車旅の感触

 バスは留萌に向けて走り続けていた。遠別町から初山別村に入る頃合いだ。

沿岸バス12留萌行き、上り坂をゆく

 すると目の前に上り坂が現れた。私は思わず
「うわぁぁ…」
と思った。
そしてすぐに下り坂になり、一瞬、爽快な気分になった。だけど次に来るのは上り坂…

 日本海オロロンラインは、何が印象的だったかというと、暑い夏、延々と続くアップダウンに散々やられたからだった。やっと上り切り下ったかと思うとまた上り…。時にはこれから行く先に、つづら折りのように坂が連なっている風景が広がっていた事もあった。何度も立ちはだかる坂に戦意喪失させられたが、行くしか無い。無理に自分を奮い立たせてペダルを踏み込み、息を切らし乗り越えた。

 今回はバスで楽々だが、目の前に坂が立ち塞がると、苦くも懐かしい思い出が何度も蘇ってきた。

沿岸バス豊富‐留萌、車窓の外に広がる日本海

 時折、内陸の方に入るが、窓の外にはほどんどの区間で日本海が続いた。時には見下ろし、時には近くに…

沿岸バス、初山別みさき台公園キャンプ場に立ち寄る

 バスは一旦国道から外れ、初山別みさき台公園に入った。温泉やキャンプ場がある公園で、私もここのキャンプ場で一泊したものだ。

 海近くにテントは張ったものだが、こんなに広かったっけ…。そんな広大なキャンプサイトもピークを過ぎた9月で、一張りのテントさえ無く、緑の芝生が広がっているだけだった。
「キャンプなんて道民にとっては夏の遊びだから!」
9月半ば、北海道は足早に秋がやって来る頃。旅で出会った方の言葉を思い出していた。

 初山別市街地に入る直前、羽幌線廃線跡の中でも有名な金駒内川橋梁というコンクリート橋があったはずだ。しかしウトウトしていたため、見逃してしまった。

沿岸バス留萌行き、初山別バスターミナル

 バスは初山別の市街地に入り、初山別駅跡地に建てられた初山別バスターミナルに停車した。一人乗車。乗客は少ないが、さすがにここに来るまでに途中で数人拾っていた。

沿岸バス豊富-留萌、日本海側のアップダウンの激しい道を走る

 市街地を抜けると、海沿いの原野へ。前方には留萌への道と日本海が延々と続いていた。

沿岸バス豊富-留萌、上り坂に昔の北海道自転車旅行を思う…

 そしてとんでもない上り坂。こんな道が留萌の手前まで繰り返される…

[2020年(令和2年)9月訪問]