原宿駅舎のディテール~失われゆく都内最古の木造駅舎~



大正より首都の雑踏に佇み続けた木造駅舎を愛でる

 2016年6月、原宿駅が建て替えが発表された。原宿駅と言えば1924年(大正13年)築の木造駅舎が現役で残り、都内最古の木造駅舎として知られていた。建替え発表時点では、今の駅舎をどうするかの発表は無かった。

 原宿駅は2004年に訪れたっきりだった。もしかしたら無くなってしまうかもしれないので、そうなる前に訪れたいと思った。

JR東日本山手線・原宿駅、大正築の洋風駅舎をホームから見上げる
ホーム側から駅舎を見上げた。改修されながら使い続けられているとは言え、山の別荘のような優雅な佇まい。
原宿駅臨時ホーム(旧3番線)片隅の原宿駅開業70周年記念碑
正月のみ利用された3番線はもう工事中。片隅に「原宿駅開業七十周年記念碑」がポツンと佇む。
JR東日本山手線・原宿駅、北側にある皇室専用の宮廷ホーム
そして駅北側には皇室専用の通称「宮廷ホーム」がある。「宮廷」の名に比し驚くほど簡素だ。
JR東日本山手線・原宿駅、東京都内最古の木造駅舎
都内最古の駅舎は洒落た洋風の佇まい。有数の乗客数を誇る山手線にこんな駅舎が存在するのは奇跡だ。
大正の洋風木造駅舎の原宿駅、小さな塔と風見鶏
屋根の上にはレトロで小さな塔を戴く。チューリップハットのような屋根やてっぺんの風見鶏が遊び心感じさせる。
原宿駅、洋風の造りが趣深い大正の木造駅舎
ハーフティンバー調の木の装飾が洒落ていて、使い込まれた様が味わい感じさせる。時計回りの葉っぱの装飾も楽しい。
JR東日本・原宿駅、車寄せの木の装飾
車寄せのちょっとした木のレリーフも心憎い装飾…
JR東日本・原宿駅、木造駅舎らしい軒の造り。
小さな木の庇は他の古駅舎同様、使い込まれ、木造駅舎らしさ溢れる。支えの木の棒がATMの上部のカバーを貫いている!
趣ある造りの東京都内最古の木造駅舎、JR東日本原宿駅
原宿駅舎の魅力を凝縮したような角度から一枚…

[2017年(平成29年) 訪問](東京都渋谷区)

そして終焉、再建へ…

 大正築の木造駅舎は建築的に価値が高く、長年、原宿に佇み続けた小さな駅舎は街の風景に溶け込み、人々の愛着も並々ならぬものがあった。取り壊されるのか… それとも保存されるのか移築か… 建替えが発表されてから駅舎の処遇は大きな関心が寄せられていた。

 だげど結局、取り壊される事になった。

 2020年(令和2年)3月21日、新駅舎が供用開始となり、旧駅舎となった木造駅舎のシャッターは固く閉じられた。しかし直ぐに取り壊しに入る事は無いという。当初はオリンピック・パラリンピックの閉会後に取り壊される予定だったと記憶している。なのでしばらくは残りそうだ。

 2020年8月、取り壊し後、旧駅舎が復元される事が公表された。旧駅舎とほぼ同じ位置で、防火性に配慮しつつ、旧駅舎の部材をできる限り再利用するという。

 完成後のイメージ図を見ると、出入口とその両脇の窓部分までの構造が残るよう。少しズレるものの、ほとんど同じ位置なので、これならこの歴史的建築物をそのまま保存すればいいのにと思わなくもない…。しかし、人が多い街中という事で、防災面で難しいものがあるようだ。

 そして8月24日より旧駅舎の解体工事に入る事も発表された。残された時間はほんとうに僅かとなってしまった…。復元される駅舎がいいものになるよう期待している。