元山駅(高松琴平電鉄・長尾線)~ことでん最古の明治の木造駅舎~



私鉄小駅舎の面白さ

ことでん(高松琴平電鉄)最古の駅舎、長尾線・元山駅の木造駅舎

 「ことでん」こと高松琴平電気鉄道・長尾線の元山駅は高松市内の住宅街にあり、狭い駅前には自転車がひしめき、多くの利用客がいる事を覗わせる。

 駅舎は1912年(明治45年)、高松電気軌道として開業した時以来の古いもので、ことでん最古の駅舎だ。しかし、トイレが駅出入口の真ん前に覆いかぶさるように設置されているのが目障りだ。狭い駅前で、利用者の利便性を考えればしょうがないのかもしれないが…。

 築90年を越える古さだが、琴電の他の古い木造駅舎と同じく、明るい色に塗装し直され、白をメインに水色がアクセントに入っている。塗装を除けば、一見、素朴でありふれた古い木造駅舎に見える。

高松琴平電鉄・長尾線・元山駅、ギザギザの軒飾り

 屋根の縁には、ギザギザとしたノコギリの歯のような楽しげな軒飾りがズラリと並ぶ。元山駅と表示された駅名看板は「駅」の字が旧字体なのは目を引き、この駅の歴史を感じさせる。

高松琴平電鉄・元山駅、軒飾りなど装飾が楽しい木造駅舎

 そしてホーム側の屋根にも、ノコギリのような軒飾りが並んでいる。隅の丸いボールのようなオブジェがワンポイントだ。

高松琴平電鉄・元山駅の木造駅舎、待合室

 ホーム側には壁が無く、駅舎と言うよりまるで、まるでホーム上の上屋かと思うような開放的な造りだ。

 しかし、外から入って右側が小部屋のような造りになっている。2~3畳程の広さだろうか?今ではドアは取り払われ改装され、待合所の一部になっているが、かつては有人駅で、ここに駅員さんが居て、切符の販売などをしていたのだろう。本当に切符を売るためだけの最低限のスペースで、中小私鉄の昔の小駅はこんな風だったのかと思わすものがある。国鉄の昔ながらの駅ででよく見られる、駅本屋を中心に、宿直室、倉庫と言った駅の付帯設備一式の類は見当たらない。

 この切符売場跡もじっくりと見たかったが、作業員の方がICカード「IruCa(イルカ)」の読み取り機器のメンテナンスに来ていて、少し離れてチラチラと見るしかなかった。

高松琴平電鉄・長尾線・元山駅、駅舎の軒を支える木の柱

 木の柱や軒支えが賑やかに入り組み合い、古い木造駅舎を支えている様が面白く、そして味わい深くもある。

高松琴平電鉄・長尾線・元山駅ホーム、名古屋市営地下鉄車の600形電車

 元山駅は一面一線の棒線駅とシンプルな構内だ。

 上り列車が入線してきた。元は名古屋市営地下鉄250形だった車両を改造した600形電車だ。地下鉄は幼い頃から身近な交通機関で幾度となく乗ったものだ。もしかしたら、私はかつてこの車両に乗った事があるかもしれない…。そう思うと、時を越え再び、この地でこの車両との邂逅に不思議な気持ちを覚えながら、車内に中に足を踏み入れた。そういえば、名古屋の地下鉄にも「もとやま」っていう駅はあった。書き方は「本山」だけど…。

[2005年(平成17年) 6月訪問](香川県高松市)

◆レトロ駅舎カテゴリー: 三つ星~私鉄の三つ星クラス駅舎~

元山駅・基本情報まとめ+

会社と路線
高松琴平電鉄・長尾線
駅所在地
香川県高松市元山町
駅開業日
1912年(明治45年)4月30日
駅舎建築年
1912年※開業時の高松電気軌道時代から残る唯一の駅舎で、ことでん最古の駅舎。
駅営業形態
無人駅。
その他
2009年、駅舎が「近代化産業遺産」に認定された。