東大館駅(JR東日本・花輪線)~駅名標が国鉄時代を醸し出す木造駅舎~



印象深い木造駅舎と駅名標

 大館に到着し、一旦、ホテルで旅装を解いてから、再び自転車で出掛けた。行く先は花輪線の東大館駅。明日、東大館駅から列車に乗るので、その時に見てもよかったのだが、早朝で時間が無さそうなので、じっくり見ておきたいと思った。

 市内を20分ほど走り、ひらけた片側2車線の道が終わり、急に古めかしい感じの街並みになった。右に向くと、目的地の東大館駅があった。

東大館駅、木造駅舎正面の国鉄時代醸し出す駅名標

 この車寄せに掲げらている木の駅名標に、まず目が強く引き寄せられた。手彫りか手書きか…、木造駅舎を背景に、楷書体でただ「東大館駅」と標された木の板は、素朴で昔風。何十年も昔の国鉄時代の駅を見ているかのよう。

 引いて全体を見渡すと、これまた味わいのある木造駅舎だ。白く塗られているが、昔ながらの雰囲気を壊すような改修はされていなく落ち着いた雰囲気。この木造駅舎だからこそ、あの駅名標が似合っているもの。

 東大館駅の開業は1914年(大正3年)7月1日。後に花輪線の一部となる秋田鉄道の大館-陸中花輪(現・鹿角花輪駅)の、大館-扇田間の開業時に設置された駅だ。現駅舎は1929年(昭和4年)築。

 大館市の代表駅は大館駅だ。そんな駅からの支線の1つ目の駅は、小規模だったり閑散としている場合が多い。しかしこの東大館駅の駅舎はやや大きめで、支線なら主要駅規模と言ってもいい。

 大館の中心街は大館駅より東大館駅の方がむしろ近く、東大館駅前は大館一の歓楽街という。だから立派な駅舎が建ったのかもしれない。

東大館駅、日本の鉄道開業100年記念碑

 駅舎の右手側に「鉄道100年記念碑」なるものがあった。最初、花輪線か東大館駅に関連するものかと思った。しかし「十月十四日」と標されているのを見てピンと来た。どうやら1872年(明治5年)、新橋-横浜間に日本初の鉄道開通を記念した碑のようで、その100年後の昭和47年に建立されたようだ。

無人駅となった東大館駅舎内部、窓口跡と待合室

 待合室の中に入った。2020年に無人駅化され、窓口跡は塞がれている。出札口は大きく改装されているのだろう。しかし、こじんまりとしてものではく、斜め向きに配されたやや大きめで、主要駅で見るような形状だ。

 隣のジャバラのカーテンは何だったのか気になる。

昔日の賑わい感じさせるホーム側の情景

大館市の東大館駅の秋田犬(忠犬ハチ公?)像

 駅舎ホーム側に出て見ると、軒下には大館らしく秋田犬の像が鎮座していた。有名な忠犬ハチ公は大館の生まれで、大館駅前の秋田犬の里のハチ公像は有名だ。こちらは東大館のハチ公…と言った感じだろうか??

花輪線・東大館駅の木造駅舎、ホーム側と側線跡の草地

 ホームまでは草生した空地に隔てられているかのように距離があった。側線の跡で、島式ホームの駅舎側もレールが剥がされているから、余計に広く見える。駅舎はそんな片隅に佇むかのような風情。ホームとは構内通路で繋がれていた。かつては貨車などが賑やかに留置されていたのだろう。

花輪線・東大館駅、片側が廃され1面1線になった島式ホーム

 島式ホームだが、片方は廃され棒線駅に。残ったレールの隣にも、側線跡と思しきレール1線分の空間があった。

花輪線・東大館駅、駅舎横の業務用の木造建築物

 駅舎の北側には、小さな木造の建造物が3棟寄り集まっていた。倉庫か詰所か何かか…?古めかしいが、奥の1棟は引戸がサッシに交換されている。今でも何かに使われているのだろうか?

花輪線・東大館駅の木造駅舎、軒を支える古びた木の柱

 長い軒を支える古い木の柱が、均整を取るように並ぶ。そんな柱たちが夕日を浴びる様は何と美しいことか…

駅前

大館市、花輪線・東大館駅から見た駅前

 駅前からまわりを眺めた。駐車場は広く、その中に駅に降り立った人に、大館市をアピールするメッセージが標されたモニュメントが設置されていた。かつては急行「よねしろ」も停車した、大館市のもう一つの玄関口と感じさせた。

大館市、東大館駅舎と駅前の歓楽街(跡)

 東大館駅前一帯は大館の歓楽街という。昭和を感じさせる造りの飲食店が並ぶが、やや寂れいるよう。レトロな店構えがかつてをしのばせた。

秋田県大館市、夕暮れの東大館駅舎

 旅で訪れた駅の夕暮れは心にしみるもの。
「また明日、よろしく!」
と心で声を掛けながら、東大館駅を後にした。

そして翌朝…

 早朝5時半頃、ホテルをチエックアウト。自転車を展開し走り、12時間ぶりに東大館駅にやってきた。

夜明後の東大館駅

 もう夜は明けたが、木造駅舎は朝日の余韻を浴び佇んでいた。

花輪線・東大館駅の木造駅舎と駅巡りの相棒・BROMPOTON

 今回の旅を共にしている折りたたみ自転車・BROMPTONを、木造駅舎とあの駅名標をバックに記念撮影。楽しいけど、ホテルからたった1㎞走っただけで、また折りたたんで袋にいれなければいけないのは面倒だけど。

花輪線・東大館駅、石積みのホームと側線跡

 ホームの上屋や待合室は新しくなっているけど、側面の石積みのまま。こんな所にも長年の歴史を感じる。

JR東日本・花輪線、東大館駅に入線する上り始発列車

 大館からの上り始発、6時26分の盛岡行きの列車がやってきた。さあ、今日も旅が始まった。

[2023年(令和5年)9月訪問](秋田県大館市)

レトロ駅舎カテゴリー:
二つ星 JR・旧国鉄の二つ星レトロ駅舎