大正時代の木造駅舎が現役
JR日豊本線・中津駅から一駅、中津市街の外れにある東中津駅。私が乗って来た下り列車からは、何人かの下車客があった。
ホームは1面3線だが、真ん中の番線はレールが剥がされ廃止されている。
駅舎正面の右側、南隣には空地のような空間が広がっていた。かつては駅舎から続きで建物が建っていたようだが、不要になり取り壊されたのだろう。
駅舎ホーム側には縦型の古い駅名標が取り付けられたまま。毛筆体のホーロー看板はレトロさに溢れる。作製されて半世紀以上過ぎていそうだが、耐久性のあるホーローのため、多少の錆びはあるが色艶は十分。
駅名標の上には、木製の手書き建物財産標が残っていた。この駅本屋のもので、標された年月は「T4(大正4年). 5. 30」。
東中津駅の開業は1901年(明治34年)5月25日。起源となる豊州鉄時代で、当初の駅名は大貞。
今も残る木造駅舎は、大貞駅時代の1915年(大正4年築)築。今年2022年で、何と築107年だ!築サッシ窓に換装されるなど改修されているが、それでも古い木造駅舎らしい、いい佇まい。東中津駅と改称されたのは、戦後の1952年(昭和27年)11月15日だ。
軒を支える柱は長年、風雨に晒され続けすっかり風化している。それでも土台のコンクリートは新しいものに作り変えられている。
軒の骨組みは新しいものに取り替えられている。風化し皴が入りでこぼこの柱と違い、真っ平でつるつるしている。古い駅舎を維持するだけでも大変なのに、よくイメージに合わせたいい改修をしてくれるものだ。大切に使い継いでくれているのを感じる。
趣ある待合室
待合室と出札口。荷物扱いはだいぶ昔に廃止され、窓口は大きく改修されている。
近年、JR九州では駅の無人化が進んでいるが、東中津駅は中津市により簡易委託駅の駅員さんが配置されている。一日の乗客数は300弱位で、ICカードの普及で仕事は減っていそうだが。
木の扉というのが重厚で味わいある。吊り具こそは換えられてるが、いかにも木造駅舎らしい風情に溢れる。
天井を見上げると見事な板張り。改修された待合室を木の味わいで包み込むかのよう。
東中津駅を堪能した後は、折りたたみ自転車で隣の今津駅へ。袋から出し展開する作業を、少し離れた所から委託の駅員さんが興味深そうに眺めていた。
[2022年(令和4年)11月訪問](大分県中津市)
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