原宿駅 (JR東日本・山手線)~都内最古の木造駅舎は今日も大忙し~



神宮の森が似合う洋風駅舎

JR東日本・山手線、東京都内最古の木造駅舎、大正13年築の原宿駅舎

 原宿駅には、洋風の造りが非常に印象的な洋風木造駅舎が現役で残っている。ファサードや外壁の、英国調のハーフティンバー、屋根の塔と言った造りがお洒落で目を引く。しかもこの駅舎、1924年(大正13年)築と言う、東京都内でいちばん古い木造駅舎だ。ビルが密集する首都東京の山手線内に、こんなにも古く味わい深い駅舎が建て替えられず残っていたとは驚かされている。この洋風駅舎がある方は表参道口と呼ばれ、北側の出入口は竹下口と呼ばれている。

JR東日本・山手線・原宿駅、関東の駅百選認定駅のプレート

 原宿駅は1997年に、「関東の駅百選」に認定された。選定理由は「神宮の森とマッチしている西洋風の駅舎」だという。原宿駅は明治神宮の最寄り駅だ。出入口に掲げられた「関東の駅百選認定駅」の金色のプレートがどこか誇らしげに輝いている。木の板の駅名看板もレトロ感を醸し出す。

屋根の塔やハーフティンバーなど造りが洋風の木造駅舎・原宿駅

 大正時代のモダンが伝わってくるような洋風木造駅舎が残っているだけでも嬉しいが、立派に現役なのがもっと凄い。原宿と言えばブティックやカフェなど若者向けのお洒落な店が立ち並ぶ街で、駅からは竹下通り、表参道へ繰り出す人々で賑わうのだろう。原宿駅の1日の利用客は約7万との事。田舎の素朴で小さな木造駅舎も素晴らしいが、大都会の荒波にもまれながら生き抜く木造駅舎もまた素晴らしい。

明治神宮への初詣のため正月だけ使われる原宿駅3番ホーム

 新宿方面行き外回り線は、通常使われる2番線の反対側に3番ホームもあり、レールを共有している。しかし3番線は普段使われる事は無い。正月に明治神宮への初詣客に対応するための臨時ホームだ。東京の雑踏の中にある駅だが、代々木公園、明治神宮に面した側で、森のような緑深く、まるで地方のローカル線のような風景だ。

 この日は広い空間を活かし、ホームに沿って色とりどりのチューリップが花壇に植えられ、華やかでメルヘンチックな光景が楽しかった。

 原宿駅のすぐ北側には、宮廷ホームなる皇室専用の駅がある。ただ最近では、ほとんど使われていないようだが…。私自身が降り立つ事が絶対に無い駅ではあるが、この区間を通る時は必ず目が引き付けられる気になる存在だ。

原宿駅3番線、国鉄型駅名標とチューリップの展示、そして原宿村

 原宿駅3番ホームの駅名標は昔ながらの国鉄型でレトロなムードを漂わせる。

 駅名標の足元には「ミニ原宿村」なるものがあった。茅葺屋根やなまこ壁の家など、日本の古民家が寄り集まる小さな田舎風景がミニチュアで再現されていた。

 そして「この水は神宮の泉の流水です」という看板も気になる。この水…、もしかしたらこれは池のある空間だったのか…、そしてこの泉の水は飲めるのだろうか…。写真から察するに水が流されている様子は無かったが、3番ホームが使われる正月には水が流されるのだろうか…。

日曜日の原宿駅前、木造駅舎から溢れるような人波…

 日曜日という事もあり、狭い駅前は気の遠くなるような混雑だった。夕方で家路に就く人…、そして暮れなずむ街に繰り出す人…、絶え間なく大勢の人が小さな洋館から吐き出され、そして吸い込まれていく。大正の小さな木造駅舎は、齢80の今日も大忙しだ。まだまだ引退している場合ではない。

[2004年(平成16年) 3月訪問](東京都渋谷区)

追記: 原宿駅舎建て替えへ…

 2016年6月5日の各メディアの報道で、JR東日本が原宿駅現駅舎の使用をやめ、新駅舎を建築する方針である事が明らかになった。2020年の東京オリンピックで、同駅が国立競技場に近く、多数の乗降客が見込まれるため、現状でも手狭な現駅舎を建て替える。

 2020年(令和2年)3月20日、木造駅舎での最後の営業日となり、翌21日から新駅舎が供用開始となった。利用を終えた大正築の木造駅舎は商業施設に建て替えられるという。

 旧駅舎は取り壊される事になった。しかし現在とほぼ同じ位置に、できる限り旧駅舎の部材を再利用しながら復元される事になった。取り壊しは2020年8月24日から始まる予定だという。


~◆レトロ駅舎カテゴリー: JR・旧国鉄の失われし駅舎

2018年の原宿駅再訪記はこちらに↓
原宿駅舎のディテール~失われゆく都内最古の木造駅舎~

原宿駅・基本情報+

鉄道会社と路線
JR東日本・山手線
駅所在地
東京都渋谷区神宮前一丁目
駅開業日
1906年(明治39年)10月30日。※開業時は現在よりやや北側に立地していた。1924年(大正13年)に現在の場所に移転。
駅舎建築年
1924年(大正13年)
駅営業形態
有人駅