美作加茂駅から折りたたみ自転車で知和駅へ…
知和駅を訪れるため、早朝5時1分津山発の因美線始発列車に、輪行袋に入れた折りたたみ自転車を抱え乗り込んだ。と言っても、この列車は快速で知和駅は通過してしまう。智頭始発の上りに、車両を送り込むためのダイヤで、需要があっての快速ではない。なので、さっさと車両を送り届けるため、利用者が特に少ない駅は通過しているのだろう。
私の他1人の乗客を乗せ、列車は夜が明け始めた空駆けだした。
定刻の5時28分、美作加茂駅に到着した。
少し駅を撮影すると、駅の外で自転車を展開した。ここからは自転車で知和駅へ走る。道はほぼ因美線に沿っているので、大体4㎞位だろうか?
レールができるだけ見える道を選びながら走った。この時間の列車は無いが…。道は緩やかな上りが続いた。だけど苦にならない程度で、すいすいと知和駅に進んだ。
もうそろそろかと思った頃、見慣れた感じの待合室やワンマン運転用のミラーが少し遠くに見えた。知和駅のプラットホームだ。
道中、写真を撮りつつ走り、30分程度で知和駅に到着した。まずは旅を共にしている愛車・Dahon(ダホン)K3を入れ記念撮影…。
2009年以来、約13年振りの訪問だ。そして初めて訪れたのが2004年。それから18年経っているが、素朴な木造駅舎は、ほとんど変わらぬ姿のまま私を迎え入れてくれた。
変わらぬ佇まいの純木造駅舎
毎年、いくつもの古駅舎が失われているが、これぞ純木造と言える駅舎は相変わらずで、何と喜ばしい事か。新しさ感じる現代的なものは無く、古びた木の質感が更なる風格をを添える。
知和駅の開業は1931年(昭和6年)9月12日、美作加茂駅‐美作河井間の延伸開業時。その時以来の木造駅舎が現役。何と築91年だ。
ホームは一面だ。駅舎との間に植栽が植えらているのが田舎の駅らしいゆったりとしたムード。桜の木も何本も植えられている。今度は絶対、桜咲き誇る春に来たい。
旅客ホームは1線だが、智頭方には側線ホームの跡があった。ただ廃されて何十年と過ぎたのだろう。すっかり雑草だらけになり地面に溶け込み、木々は小さな側線ホームを覆う程に成長している。
駅舎側面には倉庫の引戸があって、駅員さん用の出入口があって…。こんな所の昔のままの造りもまた味わい深い。
駅舎の窓はすべて木枠。外観が木の質感豊かな純木造と言える駅舎でも、窓はサッシ窓に取り替えられている駅が多い。しかし知和駅の窓枠は全て木製。何と郷愁溢れる佇まい!正面、駅事務室跡の窓はかつてサッシだった。しかしいつしか木枠に取り替えられた。「ほとんど変わらぬ姿のまま…」と言ったのは、この部分が変わってていたから。だけど、いい風に変わったものだ。
駅舎の木の板張りは古びている。いや…、長き年月に削らたようにすっかり風化しているといった趣。薄くなった板には皴のような木目がいくつも浮かび上がっていた。
板張りがすっかり古くなり、地面に近い部分には苔さえ生していた。長き年月をしみじみと感じる。しかし少し心配ではあるが…
列車接近の気配がしたのでホームに出てみると、津山行きの列車が入線してきた。知和駅に停車する今日最初の列車だ。先ほど美作加茂駅までり、智頭から折り返して来た車両だ。
素晴らしき待合室、そして窓口跡…
外観だけでも素晴らしいのだが、知和駅の凄みはこの待合室にこそあると思う。改札口、造り付けのベンチ、窓枠、窓口跡、天井…、すべて古びた木のまま。まさに何十年も前で、時が止まったままの空間。ここまでの木造駅舎はもうほとんど無い。知和駅に来るのは3回目だが、その度に同じ写真を撮っている。それでも飽きる事は無い。
出札口(切符売場)と手小荷物窓口も昔の造りをほぼ留めている。木のカウンターもそのままだ。
細かい事を言えば、JR西日本シールが張られた出札口の窓部分が改修され、一枚の大きな窓になったと思われる。昔は木次線の八川駅のように、木枠で細かく仕切られていたのだろう。しかしそんな改修をものともしない程い、木で組み上げられた空間は、しみじみと味わい深さを感じさせる。
知和駅が無人駅となったのは、1970年と半世紀も前だ。しかし駅事務室内部は、昨日まで駅員さんがいたのではと思わせるほど昔の造りを留めている。そして古いながらもきれいで、荒んだ感じは皆無だ。
室内の黒板を見ると、地元の老人会の方々が出入りしているよう。きっとこの駅舎に、色々と気を配り大切にしてくれているのだろう。いつか私もこの中に入ってみたいもの…
美作加茂駅で自転車を展開したばかりだが、再び輪行袋に収納しホームまで担いだ。そして、智頭行きの下り列車を待った。今日の駅巡りは始まったばかりだ。
[2022年(令和4年8月訪問)](岡山県津山市加茂町)
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