階段の手すりの向こう、緑豊かな一角に…
青梅線も立川や青梅を超え鳩ノ巣駅まで来ると、周囲の風景は山深く、まるで中央西線か中国山地の駅かと思える。駅名標には標高306mと標されていた。駅前の人家はまばらでローカル線の風情満点。東京都の別の顔を実感させられる。きっと休日には登山やハイキングなど気軽な行楽地となっているのだろう。

ホームから駅舎に行こうと階段を下りていると、木の手摺りの向こうの、草木がやたらと茂ってぼうぼうになっている空間があった…

ピンと来て近寄ってみてみると、やっぱり枯れて干上がった池の跡があった。だが、夏の盛りで、草木があまりにもぼうぼう過ぎて、枯池はすっかり埋もれてしまっている。意識して探さなければ見つけられなかっただろう。でも、冬など緑が枯れる時期は、もしかしたら、もう少し庭園らしさを露わにしているのかもしれない。
だけど位置的にやや目立たない気がする。でも階段を通る時やホームから見下ろす時などいろいろな角度から楽しめたのだろう。

池の底をじっくりと見てみた。底がコンクリートで固められ、更に円形に掘り下げられている部分が気になる。金魚の運動、回遊を考慮してそのようにしたのだろうか…
そして、掘り下げられているのに比し、小さな台形状の土台のようなものがあるのが気になる。昔は何かが載っていて、水面から姿を覗かせていたに違いない。灯篭のようなものだったのか、それとも安全碑のようなものだったのだろうか…
[2010年(平成23年) 8月訪問] (東京都西多摩郡奥多摩町)
鳩ノ巣駅訪問ノート

駅の開業は1944年(昭和19年)の7月1日で、当時からの駅舎が使われている。駅舎は丸太の柱が特徴的な広い車寄せや、石壁の袴腰、斜めの変わった板張りなど、山荘を思わす木造駅舎だ。デザイン性が高く、戦中の大変な時期でもこんな駅舎が建てられるものなのだと感心させられる。当初から行楽駅として想定されていたのだろう。出来上がった駅舎を見て、平和な世の中になったら人々が遊びに来るのを夢見たのかもしれない…
そして現代では奥多摩は首都圏の気軽な行楽地となり、悠然とした佇まいの駅舎は、週末になると都会の雑踏から逃れ訪れる人々を迎え入れている。やたらと広い車寄せは、ハイカーがいったん足を止めた身だしなみを整えるなどしたのろう。そして、これから山に行く人々は、周囲の風景を見渡し「よし行くぞ」と思いながらバッグパックを背負い直し、帰路に着く人々は、無事に戻れた事を安堵し一つため息をついたのだろう…
~◆レトロ駅舎カテゴリー: JR・旧国鉄の三つ星駅舎~