1日目: 高滝駅から夜の月崎駅へ
今回、千葉県の小湊鉄道へのアクセスは、飛行機で成田空港まで行き、バスで鶴舞バスターミナルまで行き、そこから小湊鉄道の駅まで歩くという一風変わったルートにしてみた。
地図を見ると、バスターミナルから最寄り駅は上総鶴舞駅、上総大久保駅、高滝駅の3駅で、それぞれ約4kmほど離れている。どこの駅で第一歩を標そうかと考えたが、選んだのは高滝駅。
うららかな陽気の中、歩き続け高滝湖を渡り、高瀧神社の横を通ってそろそろかと思ったら、もうひと坂越えなければいけなかった。
そして坂の上に至り開けた風景を見下ろすと、桜に包まれた高滝駅が眼下に現われた。
あのルートを選んだからこその高滝駅とのファーストコンタクト。満開の桜並木に包まれる高滝駅の風景に酔いしれるように堪能した。
そして桜の中へ… 廃ホームの桜並木が見事。
小1時間ほど高滝駅にいて、上総中野行きの列車に乗り込んだ。車内は席が8割位埋まり、しかも乗り鉄や観光客など、ほぼ行楽一色のムード。田舎ムード溢れる沿線風景が印象的な小湊鉄道は、首都圏から気軽に訪れる事ができる行楽地で、春めき桜が満開。沿線で開催されている「中房総国際芸術祭いちはらアート×ミックスの影響もあったのかもしれない。
最初、月崎駅で降りようと思ったのだが、近くに座っていたグループも月崎駅で下車するみたいで、落ち着けそうにない。そして列車が月崎駅構内に差し掛かると、20人以上の人がレンズの砲列を向けているのにびっくり。久しぶり訪れる月崎駅は、のんびりと堪能したかったので、後回しにする事にした。
養老渓谷駅の駅舎を見た後、折り返し、上総大久保駅で下車。駅舎は無く木造の待合所があるだけの無人駅で、駅至近は家屋もまばら。秘境駅ムードが漂う。待合所の背後には、桜が高くそびえ、側線ホームと思しき空地にも何本もの桜が植えられていた。
そしてようやく月崎駅で下車した。昼間とは違い、日が傾き始めたこの頃、人は随分と減り、落ち着いた雰囲気を取り戻しつつあった。
夕方の色をまとい始めた駅には桜が華やかに咲き、レトロな気動車が駅味わいを添える。
成田空港近く、いくつもの旅客機が上空をかすめては、私の耳にジェットエンジンの音を残し飛び去っていった。
夕から夜へ…、刻一刻と時が移りゆくほどに、桜は艶めかしく表情を変えていった。
二日目は人気の上総鶴舞駅から
翌日、まず上総鶴舞駅に向かった。昨日の賑わいを考えると、土曜日のこの日は相当な混雑となるだろう。特に関東百選の駅に認定され、メディアのロケも多く人気のある上総鶴舞駅はそうだろうと思った。
上総鶴舞駅に降り立った。人はちらほらと居るがまだそれほどでもない。早く来て良かった。
上総中野方面の線路に沿って桜並木があった。十数年前、初めてこの駅を訪問した時、この桜たちは植樹されてから数年で、蹴れば簡単に折れてしまいそうなほど、なよなよしていたものだ。それがよくここまで成長したもの。でもまだ大きくなるだろう。またいつかの春、この駅を訪ねるのが楽しみで。そして、その頃、私はどうなっているのだろうと先の事を思うと、なんだか気が遠くなってくる心地だ。
この駅は昔はそこそこの規模の駅だったようだ。駅舎とは反対側一帯に、廃ホームや倉庫、発電所跡など、かつての賑わいを感じさせる施設が構内跡が残っている。そしてそれらが使われなくなり、もう幾つもの歳月が流れたのだろうか…。かつて駅員さんや保線員さんが忙しく働いた構内は、まるでそこだけ野山に還ったかのごとく草が生い茂り、桜や菜の花が春を謳歌していた。その風景の中に身を置いていると、自然豊かな田舎の野を歩いているような気分になった。
桜と菜の花が咲き乱れる風景の中、列車が通り過ぎてゆく。
馬立駅。おじいちゃんとお孫さん。列車と咲き誇る桜をバックに、思い出の一コマを留めていた。
上総山田駅では枝垂桜がお出迎え。素朴な木製駅名標がレトロな味わいを添えるよう。
海土有木駅。読み方は「あまありき」で、どこか魅かれる駅名。側線ホーム跡の貨物倉庫に寄り添う桜が満開。懐かしい鉄道風景を背後にした見ごたえのある桜にしばし見とれた。
[2014年(平成26年) 4月訪問](千葉県市原市)