この駅舎、大丈夫なんだろうか…



 6月に九州を旅して
「何これ…、この駅、台風とか来たら大丈夫なんだろうか?」
と、心配になった駅舎がありました。


まずはJR九州・日豊本線の上臼杵駅

JR九州・日豊本線・上臼杵駅。開業の大正6年以来の木造駅舎

 1917年(大正6年)の駅開業以来の木造駅舎が現役。最初は訪れるつもりは無かったのですが、行程に余裕ができたため、少しだけ立ち寄ってみる事にしました。上の写真は2007年に訪問した時のもの。それから約13年振りの訪問です。

日豊本線・上臼杵駅、駅舎を覆いつくさんばかりのカイヅカイブキ

 そして2020年。駅舎正面に密着するように植えられている4本の樹木が成長し過ぎ、凄い事になっていました。駅舎を覆い隠さんばかり。多分、十何年かに1回位は剪定をしているのでしょうが…

 近年では、毎年、台風や大雨など、日本列島のどこかが大きな災害に襲われています。もし超大型の台風がこの辺りを襲い、木々ががなぎ倒され、この大正築の貴重な文化財はひとたまりもないのでしょう。


 そして翌日に訪れた肥薩線の嘉例川駅。JR九州・肥薩線の駅で、築百年の木造駅舎が残り、今や有名観光地の一つに。

明治築、百年の木造駅舎、肥薩線の嘉例川駅

 こちらは初めて訪れたのは2004年の姿。それ以来、この駅舎の虜に。

 近年ではにゃん太郎という駅長猫がいたり、さらにメイドまで出現し、観光地化が更に進んだ感がありますが、明治の木造駅舎は超然と佇み人々を包み込んでいます。

JR九州・肥薩線・嘉例川駅、明治の木造駅舎の横に成長した樹木

 そして2020年の今回。駅舎左横の木が、更に存在感を増した感…。こちらも木が台風でなぎ倒されたらと思うと心配。


 上臼杵駅と嘉例川駅に植えられいるこの樹木、同じ品種でカイヅカイブキといいます。緑色の炎のように上に向かって葉が茂る様が印象的。丈夫で害虫に強く、生垣や公園にもよく使われているそう。ただ大きくなり過ぎないように手入れするのが重要との事。この2駅のカイヅカイブキは、まさに大きくなり過ぎて、やっかいな事になっている感。

 カイヅカイブキは丈夫らしいので、木ごと倒される程の台風だったら、その前に駅舎自体が危ないのかもしれません。また駅に植えられている事が多い桜の木が倒れて被害を及ぼしたという話は、聞いた事は無いような気はします(自信ありませんが…)。

 ですが、幹が劣化して脆くなっている可能性もあり、広がった枝に盛んに茂った葉が桁違いの強風をもろに受け止めて、木がへし折られてしまうかもしれません。

 人の都合で気が引けるのですが、歴史ある木造駅舎を守るためには、いっそ伐採した方がいいのではと思います。少なくとも剪定する必要はあるでしょう。それだけでも倒木による駅舎の破壊というリスクは大きく避けられます。


 「桜が倒れて駅舎に被害を及ばした話は聞いた事が無い」と書きましたが、台風による倒木で駅舎が被害を受けた例はあります。

富山地鉄立山線・五百石駅の旧駅舎

 富山地方鉄道立山線・五百石駅です。上の写真は修復後の姿なのですが、富山地鉄らしい個性的でハイカラな造りが印象的な木造駅舎です。

 修復前は、駅舎左手に幹が太く大きな杉が植えられていました。しかいしそんな杉も、2004年の強力な台風によりなぎ倒され、駅舎半壊という被害をもたらしました。

 この五百石駅の駅舎は2005年に修復されましたが、それも虚しく、10年と経たない2011年に取り壊され、今どきのお役所のようなピカピカな合築駅舎「立山町元気交流ステーション(みらいぶ)」に建て替えられています。


 最後に倒木ではないのですが、これ大丈夫かと思える駅舎をあと一つ…

近江鉄道・新八日市駅、改修されつつある大正築の洋風木造駅舎

 滋賀県、近江鉄道八日市線の新八日市駅。前身の湖南鉄道の本社が入っていた洋風木造駅舎は大正11年(1922年)築。2003年に初めて訪れ、今年2020年3月には3回目の訪問を果たしました。

 東近江市有数の歴史的で、同市によりより改修工事が施されていて、まずは車寄せ部分の改修が完了したようです。

 冬から春へと移ろう時期は、まだマシなのですが…

近江鉄道八日市線・新八日市駅、蔦で覆われた木造駅舎

 むさ苦しい程の蔦が駅舎を覆っています。2003年訪問時、蔦はほどんど生えていなかったのですが、その後、急速に成長したようで、2007年に訪れた時は、窓の隙間から特等待合室だった1階の小部屋に入り込んでいました。そしてここ10年に撮影された写真をネットで見ると、むさくるしいまでの蔦だらけで、今や駅舎正面の半分以上を覆うまでに。多少の蔦は趣を添えるものなのでしょうが、そんなものを超え、木造駅舎に悪影響を及ぼしそう…

 ずっと心配していたのですが、東近江市が少しずつ駅舎の改修工事を進めているので、いずれは蔦を取り払ってくれるものと思います。