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大矢駅 (長良川鉄道・越美南線) ~木造駅舎の旅~

目次
国鉄時代からの木造駅舎が残る大矢駅
大矢駅基本情報まとめ
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国鉄時代からの木造駅舎が残る大矢駅

長良川鉄道・大矢駅構内。国鉄駅の雰囲気を留める。
(国鉄駅の風情を残す長良川鉄道・大矢駅のプラットホーム。)

 20年振りに長良川鉄道を訪れ、昼頃、大矢駅で降りてみた。国鉄越美南線時代は美濃下川と名乗り、第3セクター転換後に現在の駅名に変更された。

 小高い山に囲まれた中、2面2線の相対式プラットホームがあり、さらに駅舎北側に行き止まりの側線ホームがある。国鉄のローカル線小駅の標準的な構内配線だ。こういう配線の痕跡を残している駅は多いが、側線ホームは残っていても、レールは剥がされホームが崩れるなど、廃れきっている場合がほとんどだ。しかし、この大矢駅の場合、側線ホームの側面はコンクリートの板で補強され、錆び付きながらもレールが残る。転換後も使われていたのだろう。

 駅舎の待合室を見ると、男性が座っているのが目に入った。今、上り列車が行ったばっかりなので、迎えを待っているのだろうか…。まあ、他の所から見ていこう。

長良川鉄道・大矢駅、古色蒼然とした木造駅舎。
( 古色蒼然とした大矢駅駅舎。)

 早速、駅舎の正面にまわってみた。古色蒼然とし昔ながらの造りを良くした佇まいは非常に味わい深く、小奇麗に改修された駅舎には無い風格を宿す。サッシ窓に取り替えられているが、それをちっぽけな問題にしてしまっている。左右に植えられた植栽は、ローカル線の駅らしいゆとりある光景で、古き駅に趣きを添える。

大矢駅、迫り来る木の質感、これぞ木造駅舎
( 迫り来る木の質感、これ木造駅舎!)

 近づいてみると、磨り減らされ使い込まれた木の質感がまさに眼前に迫り来る。これぞ木造駅舎と声に出して賞賛せずにはいられない。

 事前にネット上で長良川鉄道の駅舎をざっと見て、いちばん気になっていたのがこの大矢駅だった。しかし、実際に降り立ってみると、期待以上の素晴らしさだ。

大矢駅の木造駅舎、車寄せの柱は修復され使われている
( 修復されている車寄せの柱。)

 しかし、車寄せを支える木の柱を見てみると、補修の跡が傷跡のように生々しく残っていた。痛んだ一部が新しい木材に取り替えられ、古い部分と新しく取り替えられた部分は鉄の板で接合されている。古き良き味わいをその身にまとう事と、廃れゆく事は紙一重だ…。。

大矢駅、駅舎左手には業務用の用地が広がっていた。
( 駅左手には業務用のスペースが広がっていた。)

 駅舎左手には、更に駅の敷地が広がっていた。先程見た側線ホームがある辺りだ。現代のローカル線の無人駅は、ホームに待合室という最少の設備がコンパクトにまとめられた駅が多いが、昔の駅には貨物などを扱うこんな広い空間が、ほとんどの駅にもあったのだ。

 しかし見渡すと、隅に駐車されている白い軽トラックが、唯一使われていそうなものだ。あとは廃棄された電柱が山積みになっていたり、標識が無造作に置かれていたりと、廃材置き場と化していた。

大矢駅、側線跡のはいくつかの建物が残る。
( 側線跡にはいくつかの建物が残る。)

 その敷地の奥に進むと、隅に3棟の小屋が並んで建っているのが見え、更にレールを隔てた反対側にも木造の小屋があるのが見えた。3棟並んだ建物のいちばん奥のものはかなり昔からある古そうな木造の建物だが、他の2つはプレハブで木造のものよりは新しそうだ。

 でも建物をつぶさに見ていくと、どれも荒れていて、今では打ち棄てられているのが解る。たぶん、この敷地は第3セクター鉄道に転換された後しばらくは、保線基地として使われていたのだろう。

大矢駅駅前、こじんまりとし静かだ
( こじんまりとし静かな駅前。)

 駅前からの道を出ると一本の道と交差した。車がやっと擦れ違える程度の細い道で、かつては商店なんかもあったようだが今では閉店となってしまっている。すぐ西側を流れる長良川の対岸に国道が通っていて、車のほとんどはそちらを走るのだろう。駅周辺はひっそりとしていた。

大矢駅、駅舎の周囲には桜が植えられている。
( 駅舎の周囲には桜の木が植えられている。)

 駅舎に振り返ると、少し坂を上がった所に、木造駅舎があるのが見えた。道の両脇には、桜の老木がアーチを造るように枝を伸ばしている。ああ…、春に来てみたいものだ。

大矢駅、待合室はきれいに改修されていた。
( 待合室はきれいに改修されていた。)

 待合室を見てみると、列車の発着が無いにもかかわらず、あの男性がいつの間にかいなくなっていた。そう言えば、白い軽トラックも無くなっていた。迎えを待っていたのではなく、静かな休憩場所を求めて、この大矢駅に来ていたのだろう。

 待合室のやや広めだ。そして内部は、木造駅舎らしい造りを留めながらもきれいに改修されていて、廃れた雰囲気は無い。休憩に来たくもなるだろう。

 窓口まわりは大きく改修されていた。右側に改修された出札口跡が残るのみだ。

 左側の窓口跡を見ると、サッシ窓越しにダンボールが置かれているのが目に入った。以前は何かの会社が入居していたのだろうか…?長良川鉄道は無人駅の駅舎を賃借しているケースも見られるが、この駅にもそんな気配が残っている。同社のウェブサイトを見ると、大矢駅の旧駅事務室も貸し出し中の旨が告知されていた。どなたか、いかがだろうか?

大矢駅待合室、作り付けの木製ベンチは古いまま
( 作り付けのベンチは古いまま…。)

 何かと改修されている待合室だが、造り付けの木製ベンチは見事に昔のままの造りを留めていた。磨り減り皺のように浮かび上がった木目が、この駅の年月を私に静かに語りかける…。

長良川鉄道・大矢駅、ホームに置かれた円空仏
( ホームの円空仏。)

 駅舎ホーム側には三体の円空仏が置かれ「円空のふるさと美並」という看板が添えられていた。今は郡上市の一部となっている旧美並村は、円空の出生地と推定されているという。

 仏像はさすがにレプリカなのだろうが、木をざっくりと削っただけの素朴さは親しみやすく、独特の魅力を感じるものだ。

長良川鉄道・円空仏と古き木造駅舎、そして列車…
(今日も円空仏に見守られ…。)

 円空仏は優しい顔でこの駅という空間に佇んでいる。きっとこの古き木造駅舎と行き来する列車を見守ってくれているのだろう。


[2015年11月訪問]


【※この本編には掲載とならなかった大矢駅の画像は「補完ブログの記事」までどうぞ!】

大矢駅・基本情報まとめ

鉄道会社・路線名
長良川鉄道・越美南線
駅所在地
岐阜県郡上市美並町大原
駅開業日・略歴
・1927年(昭和2年)10月9日 - 当初の駅名は美濃下川。翌年5月に深戸に延伸開業するまでは終点。
・1986年(昭和61年)年12月11日 - 国鉄越美南線からから第3セクター鉄道へ転換。現在の駅名に。
駅舎竣工年
??おそらく開業以来の駅舎
駅営業形態
無人駅

国鉄から転換された第3セクター鉄道の駅舎

法華口駅(北条鉄道)
※古色蒼然とした木造駅舎。近年、改修されパン屋が入居した。(兵庫県)
羽前成田駅(山形鉄道・フラワー長井線)
※外観はトタンで改修されていたが、待合室は昔の造り。近年、復原された。(山形県)