直江駅(JR西日本・山陰本線)~駅の一員ではなくなった木造駅舎~



そこにあれど乗降客を拒む駅舎!?

改札口が塞がれた!? 山陰本線・直江駅の駅舎

 出雲市駅から東に一駅隣の直江駅で下車してみた。駅舎は残っているが、もう閉鎖されていると聞いていた。しかし、いざ列車から降りて、改札口がポスターや新建材で塞がれているのを見て、一体どこから外に出ればいいのかと戸惑った。直ぐに「出口」と書かれた看板を見つけはしたが…。

JR山陰本線・直江駅、駅舎機能は跨線橋上に…

矢印に従い跨線橋を上がった所に、切符回収箱や自動券売機があった。駅の跨線橋に平行して、もう一本跨線橋が設置されている。こちらは町の南北を結ぶ自由通路だ。

 券売機は駅と自由通路のつなぎ目の小部屋のような場所に埋め込まれていた。その隣にサッシ窓がある。改札口や窓口だったのだろう。しかし無人駅となり、閉じられたガラス窓の向こうは薄暗く、使われている雰囲気は感じられなかった。

JR西日本・山陰本線・直江駅、昭和12年築の木造駅舎

 駅舎を正面から見てみた。改装されてはいるが、軒を巡らした昔ながらの造りを良く残す木造駅舎だ。この地域の他の木造駅舎のように、JR西日本のコーポレートカラーを意識したと思われる、青い瓦に葺き替えられている。先端の鬼瓦には白い「JR」の文字が入っている。「直江駅」の駅名看板も掲げられ、一応、健在と言えるが、列車の乗降客は中に足を踏み入れる事が出来ない。

山陰本線・直江駅の木造駅舎、古い柱

 改修され、一見、面白味に欠けるように思えたが、木製の軒や軒を支える柱は、剥がれたペンキから古さが垣間見え、この駅の歴史が感じられた。古き良き趣あり「旧駅舎」としておくのが何かもったいない。

山陰本線・直江駅、駅舎は閉鎖されている

 この駅舎は何故、取り壊される訳でなし、残されているのだろう?そう思って見ていると、出入口の窓に「会議室のため無断入室はご遠慮下さい」という貼紙がしてあり、南京錠で固く閉ざされていた。貼紙の末尾には、この建物の借主(持主?)である住民の自治会と思しき組合の名前が書いてあった。

 どうせなら、駅舎の待合室は開放すればいいのにと思った。確かに窓口的なものは橋上の一箇所に集中させた方がメンテナンスやコストは楽なのかもしれないし、防犯上、待合室を開放しておくのが不安なのかも知れない。だけど、駅舎側から駅に出入りしたい場合、運よく1番線からの発着ならば、階段を昇降する手間が省けるし、今日のように冬の寒い日に列車を待つ場合、寒さをしのげる。島式の2、3番ホーム上には待合室はあるが、1番線には待合室は無い。微妙に住民のためになっていないのが気になった。

山陰本線・直江駅、駅舎と反対の南東側の出入口

 駅舎の反対の南東側からも跨線橋で出入りする事ができ、小さなロータリーが作られている、ロータリー中央には、住宅地造成の記念碑が立っている。周辺には比較的新しい住宅が多く、新興住宅地の雰囲気が漂っていた。

[2006年(平成18年) 1月訪問](島根県簸川郡斐川町)

~◆レトロ駅舎カテゴリー: JR・旧国鉄の保存・残存・復元駅舎

追記: 直江駅改築へ…

 2018年(平成30年)9月、直江駅旧駅舎の建て替えが明らかになった。時期は2022年度(令和3年)の予定。駅舎は1937年(昭和12年築)との事なので、旧駅舎時代も含め、築85年にして完全に役割を終える事になる。

 改築の報を聞いて、まだ駅の施設扱いされていたのだと不思議な気分になった。駅として使われていなくても、一応、駅の敷地にあるのであたりまえか…