風格ある木造駅舎

東武鉄道の駅を巡り、夕刻、伊勢崎線の木崎駅にやってきた。相対式プラットホームの2面2線の配線の間に、中線1線が外された痕跡があった。
駅舎と反対側の2番線の背後には、サッポロビールの工場があった。

使い古された板張りが夕陽を浴びる光景は、古き木造駅舎の情感を一層かき立てる。
私が駅巡りを始めた2000年代には、群馬県や栃木県の東武の末端区間には、レトロさ溢れる木造駅舎がいくつも残っていたもの。しかし2010年頃までにほとんど取り壊された。東武には今日でも木造駅舎は意外と残っているが、新築ように改修された駅舎ばかりだ。
外に出て木造駅舎に対峙するように立つと、古く威容ある姿に驚かされた。ローカル線の小駅というより、堂々たる主要駅の風情。小泉線の終点・西小泉駅は木造ではないが大柄で、こんなふうに威容を感じさせたもの。
木崎駅の開業は1910年(明治43年)3月27日。現駅舎はその時以来のものと推定されてる。
サッシ窓になるなど、あちこち改修の手は入っているが、駅舎右手辺りは古びた木のままの造りをよく残している。

すり減らされたような木の板、汚れた漆喰、木の軒と柱…、まさに年月を経た木造駅舎らしい佇まいに溢れる。東武にもまだこんな駅舎があったのだ。
もうちょっと木崎駅を見ると…

待合室の内部はさすがに改修され外観ほどの古さはではない。でもどこか昭和後期のようなムード。

ICカードリーダーに挟まれながらも、年季が入った鉄パイプの改札口がまだ残っていた。

側線ホーム跡は石積みの造りを残していた。
昔は利根川で採れた砂利を運搬する東武の貨物線・徳川河岸線が、この木崎駅から分岐していた。半世紀も前の1968年(昭和43年)に廃止されているが、この石積みのホームからも、かつては貨物列車が盛んに出入りしていたのだろう。

駅舎の古い軒を木の柱が支えている。しかしそれ程古びていなく部分もあり、打ち込まれたネジも新しい。適時、改修されているようで何より。
そして軒と繋がったトイレへの通路の屋根も木でてきている。こちらは完全に新しい。駅舎に合わせて、わざわざ木で新調したのだろう。たくさんの木造駅舎が失われてきたが、木崎駅の駅舎が大切にされている事が感じられ嬉しい。色々な事を思いながら木の柱が入り乱れるような光景に見入った。
[2018年(平成30年)3月訪問](群馬県太田市)
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私鉄の一つ星レトロ駅舎