田端駅の鑑賞池(JR東日本・山手線、京浜東北線)



せわしなく列車が過ぎゆく片隅で…

 駅の中にひっそりと存在する池のある庭「池庭」や、廃れたその遺構「枯池」に興味を持つようになって、ウェブ上で何気にあれこれ調べていると、いつしかJR東日本の田端駅に「鑑賞池」なるものがある事を知った。

 田端駅と言えば東京都北区にある山手線と京浜東北線の乗換駅で、1日の利用客は約4万以上と混雑する都会の駅で、そんな駅のどこにそんなゆとりがあるのかと思う。だが、レール脇に現役の池があり、しかも鯉ま泳ぎ、鑑賞池という名前まで付けられているという。

 これは見なければと思っていた所、寝台特急はやぶさの最終列車に乗るため東京に行く時、乗車までに時間があった。これを機会に早めに東京入りし、鑑賞池なるものを見に行く事にした。

田端駅1番線・京浜東北線大宮方面ホームにある鑑賞池

 例の池は京浜東北線の大宮方面ホームとなっている1番線にあるとの事。田端駅の1番線を歩き探すと、レールと掘割の壁に挟まれた非常に狭いスペースにその鑑賞池はあった。数分おきに列車がやって来ては大勢の乗降客をさばき立ち去ってゆく…。列車のジョイント音が響く足元に鯉が泳ぐ池がある。そんな様を目の当たりにすると、何故こんな所にという疑問はさらに深まるっていく。一体、いつ鯉に餌をあげたり掃除をしたりと手入れしているのだろう…?きっと終電後か始発前の、駅が静まり返っている数時間の内に駅員さんがしているのだろう。

JR東日本・田端駅、金魚や鯉が泳ぐ鑑賞池

 小さな池だが、十匹以上の色鮮やかな鯉が池の中を賑わし、周囲にはささやかな緑が添えられている。広い駅構内のほんの片隅の空間だが、せわしない雑踏の中、ここだけがどこかのんびりとし、和まされる心地がする風景だ。たまたまこの位置で列車を待つ人々の目を引くようで、中には物珍しげに覗き込もうとしている人の姿もちらほらと見られた。

 池には「鑑賞池」という小さな立札が添えられている。この池の名前と言ったところだが、鑑賞池とはこれに限らす、庭園や鯉飼育の専門的なもののようだ。

JR東日本・田端駅の鑑賞池、2連の池

池は元々、2連だったが、今では一つは空っぽだ。


 この池は田端駅という利用客が多い駅にある事もあり、それだけ多くの人の目に付くようで、ウェブ上で検索すると、多くの人が、この田端駅の鑑賞池に言及している。「駅に池」は彼らにとっても意外性のある気になるモノのようで、彼らのコメントを一つ一つがとても興味深い。

 でも何十年も昔は、日本全国の駅に、池のあるささやかな庭園のある風景が珍しくなかった。しかし、現代では、駅の改修で姿を消したり、無人駅となって管理放棄され、枯れ上がったまま残るものがほとんどだ。

 ローカル線では、都会に比べ古き良き鉄道風景を留めている事が多いが、この田端駅の鑑賞池に関しては全く逆だ。よくこの大都会に昔ながらの駅風景が生きたまま存在しているものだと思う。

 
[2009年(平成21年) 3月訪問](東京都北区)

鑑賞池、撤去へ…

 ニュースで、隣接する石垣の耐震工事に伴い、この鑑賞池は撤去されると報じられた。2018年3月6日未明の終電後、金魚たちは近くのJR施設に移されるという。

 ニュースの中の、この池は1970年、当時の駅員さんが自費で手作りをしたもので、草花を植え山も作るなで風情あるものだったという。現在のものとは違うものとの事で、とても興味深かった。撤去時に残っていた金魚は6匹だったという。

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