根府川駅~東海道本線の数少ない無人駅、慰霊碑と池庭…~



海が見える駅の池庭

 木造駅舎が残る神奈川県のJR東日本の根府川駅で下車してみた。東京‐熱海間の長大編成の普通列車が何本も行き交い、東海道本線東京口の圏内とも言えそうだが、ここまで来るとローカル色も混じり始める。根府川駅は美濃赤坂支線の美濃赤坂駅と荒尾駅を別にすると、東海道本線唯一の無人駅だ。

 駅は海沿いの斜面に位置し、ホームから跨線橋を上がり内陸側にまっすぐ進むと、駅舎に至る。改札内からはホームと広がる海を見下ろす絶景が望める。

東海道本線・根府川駅の金魚泳ぐ池庭、眼下を列車が走る

 跨線橋を出た所の右手の方に池庭があるのを発見した。池の真下を何本もの列車が行き来している光景がなんとも不思議な眺めだ。

 無人駅とは言え、水が湛えられ金魚さえ泳ぐ。今では珍しくなった現役の池だ。

東海道本線・根府川駅、関東大震災の慰霊碑

 1923年(大正12年)9月1日に発生した関東大震災の揺れはこの駅にも大きな影響をを及ぼし、駅舎、ホーム、列車もろとも海に転落する大惨事となり、乗客、職員100人以上もの人々が犠牲となった。

 池の脇には犠牲者を慰める慰霊碑「関東大震災殉難碑」がある。根府川駅から見る海の眺めは印象深いが、人々の命を飲み込んだ海と思うと、ただいい景色と言えない強い悲しみが混じる。

東海道本線・根府川駅、池庭と木造駅舎

池の周りには雑草が茂り、木々もぼうぼうとした感じで、無人駅のせいか、こまめに手入れされている様子は無い。改札口からの動線だと、左に曲がり数歩進むと、突き当たりにこの池庭が現われる。否応無く目立つ存在で、かつては駅員さんがこの池庭を目にした乗降客の反応を励みに、丹念に手入れしていたのかもしれない。

 無人駅だが、JRの制服姿の人が来ていた。何やらあれこれ作業をしていたようだ。そして、この駅での業務を終えたのだろう。何をするでもなく、しばしの間、缶コーヒーを片手に池庭の方を向きながら佇んでいた。きっと木々や泳ぐ金魚でもボーっと見ながら一息ついていたのだろう。この駅でひと仕事終え、軽くくつろいでいる後姿が妙に印象的に映った。そして、やはり駅の小さな庭園は憩いたくなるような場所なんだなと感じだ。

[2010年(平成22年) 3月訪問](神奈川県小田原市)

根府川駅訪問ノート

東海道本線の数少ない無人駅、根府川駅の木造駅舎

 駅は1922年(大正11年)12月21日、東海道本線・国府津‐真鶴間の開通時に開業した駅だが、1年もたたない1923年(大正13年)9月1日に関東大震災が発生し、駅と列車が崩落してしまった。

 現在の木造駅舎は震災翌年の1924年(大正13年)に再建された2代目駅舎だ。縦長の窓が洋風の雰囲気を醸し出し、パステル調の緑色の塗装は駅舎を明るく見せている。

 海の眺めは素晴らしいが、駅は山中のような今朝しいに立地している。駅前にはこじんまりとした街並みが形成されている。

東海道本線・海が見える駅、根府川駅の夜
( 無人駅から夜の海を見渡すのも、違う趣があってまた格別… )


~◆レトロ駅舎カテゴリー: 一つ星 JR・旧国鉄の一つ星駅舎