津軽新城駅(JR東日本・奥羽本線)~雪の中に佇む明治の木造駅舎~



定期廃止前の寝台特急日本海を見送る

JR東日本・奥羽本線・津軽新城駅プラットホームと駅舎

 青森駅から奥羽本線の列車に乗り、2駅の津軽新城駅で下車した。真冬を迎えた駅は雪で真っ白で、なおも雪が降り注いでいた。雪が滅多に積もらない地域に住む私は驚く事しきりだ。

 駅は2面3線の構造で側線もあり、片隅には除雪車が留置されてた。

JR奥羽本線・津軽新城駅、雪に埋もれるホームと駅名標

 寒さが厳しい2月、1番ホーム背後は除雪されず雪の壁と化していた。駅名標が雪に埋もれつつ、かろうじて姿を覗かせている。

JR奥羽本線・津軽新城駅、ホーム上のログハウス風待合室

 島式の2、3番ホーム上にはログハウス風の新しい待合室が設置されていた。中に入ってみたら、やたらと細長く狭苦しい室内で、先客がいたらかなり気を使いそうな雰囲気だ。

 ホーム上に、私と同じく一眼レフをぶら下げた人がうろついているのが見えた。同好の士と言った風情だ。駅巡りの旅をしていて同好の士と居合わせるのは珍しいなと思っていると、他にもホーム大館方の端でカメラを構えた人が数人いた。益々不思議に思っていると、そう言えばもうすぐ寝台特急日本海が通過していく時間だなと思い納得。昨日、ちょうど同じ頃、私も日本海に乗って終点の青森を目指していた。定期運行取りやめ1ヶ月を前にして、車内からは日本海の雄姿を写そうとする何人もの鉄道ファンを目にしたものだった。この時間に津軽新城駅で降りたのも行きがけの駄賃、何かの縁と思い、私も日本海を狙う事にした。

JR奥羽本線・津軽新城駅を通過する寝台特急日本海

 ホーム青森方で頃合を見計らい待っていると、数分遅れで寝台特急日本海が現れ、あと僅かの終着青森を目指し走り抜けていった。特に厳しい今季の冬の気候で、2月前半は何日も運休日が発生してしまったという。そんな中、よく無事に来てくれたものだ。

それでも歴史が垣間見える駅舎は味わい深い

雪深い奥羽本線、津軽新城駅の木造駅舎

 寝台特急日本海通過後、駅舎を眺めた。雪は止むことなく、しんしんと降り続くばかりで、駅舎の姿を霞ませる。

 この駅舎、新建材で覆われているが、実は駅開業の1894年(明治27年)以来という木造駅舎だ。外観からは古き良き趣きというものは感じないが、それでも築118年というのは凄い事だ。

青森市、津軽新城駅前の街並み

 跨線橋から駅前を見てみたら、住宅が立ち並ぶ街並みはすっかり雪に覆われていた。この駅の利用客は1日500人を越える。この辺りの主要駅ではない駅にしては利用客は多いほうだ。

奥羽本線、雪深い津軽新城駅、雪かき作業中

 ひとまず駅舎を通り抜け外に出てみた。するとヘルメットを被った作業着姿の人々が、除雪作業の真っ最中だった。

JR東日本奥羽本線・津軽新城駅、明治築の木造駅舎

 少し待って駅舎を改めて撮影した。人の動線に合わせて除雪をしているためか、雪の捨て場が無く動線から外れた所を雪の集積場にしているためか…、人の通り道にならない所は雪が高く積もり、駅はまるで雪の壁で囲まれているかのようだった。

 明治の木造駅舎で、それらしい形状ではあるが、やはり正面も改修され外壁は新建材ですっかり覆われてしまい、古さはゆえの味わいはあまり感じさせない。車寄せの柱は古い木の質感を感じさたが…。雪の間から垣間見える緑色の屋根と外壁の水色と白色の塗り分けが特徴的だ。左側にはトイレが増築されていた。

奥羽本線・津軽新城駅、出札口と自動券売機

 業務委託駅で早朝、夜間以外は駅員がいる。

 窓口も完全に改修されていて、手小荷物窓口跡と思しき所は2台の自動券売機が置かれていた。

奥羽本線・津軽新城駅の木造駅舎、待合室

 改修された待合室の中心にストーブが置かれていた。こんな凍える日にはありがたい。

明治の木造駅舎残る津軽新城駅、待合室の大黒柱

 そんな待合室で丸太の大黒柱が一際目を引いた。ペンキが厚く塗られているが、あちこちに傷が付き、そして切り裂かれたようなひび割れは、まるで悲鳴を上げているかのようで、長年、この駅を支えてきた証だろう。しかし私が思う以上に頑丈で力強いに違いない。傷だらけになりながら尚もこの駅舎を支えている様に迫力を感じる。まさに百年以上の歴史を誇る駅舎の大黒柱に相応しい風格がひしひしと伝わってくる。

 しかし、後で思うと、これと同等か大きな木造駅舎はあるのに、何でこの駅にはこんな柱があるのだろうか?あれこれ推測してみた。何十年も昔、軒下ぎりぎりまで待合室を拡大する改修を施した。すると建物の基幹となるような重要なこの柱が出てしまった…、そんな所だろうか?

 ホームに出ると、特急スーパー白鳥で使われる789系電車が3番線に停車していた。スーパー白鳥は津軽新城駅には来ないはずだが、始発の新青森駅が1面2線で留置線が無いため、ここで留置されているらしい。

奥羽本線・津軽新城駅の木造駅舎、古い木の柱

 ホーム側の軒を支える柱を見ると、白く塗られながらも、木目が露わに浮き出て質感が豊かだ。まっすぐな柱の上部にはちょっとした装飾が施され昔ながらの造りを留めている。「これぞ古き木造駅舎!」と感嘆させられる風情だ。立ち並ぶレトロな柱に大黒柱…最初、この駅舎に抱いていたた改修されすぎてつまらないなという印象は変わり、すっかり明治の趣きを垣間見せる駅舎を堪能した気分になっていた。

[2012年(平成24年) 2月訪問] (青森県青森市)

レトロ駅舎カテゴリー:
JR・旧国鉄の失われしレトロ駅舎・旧駅舎

追記: 津軽新城駅改築へ

 訪問時は業務委託駅とは言え有人駅で、みどりの窓口も設置されていたが、2020年(令和2年)3月14日に無人駅化された。


 2022年7月14日、JR東日本から津軽新城駅の木造駅舎が建て替えられる事が発表された。2022年7月から工事に入り、現駅舎の跡地に新駅舎が建てられる。新駅舎は12月に供用開始となる予定。新駅舎は待合室に機械室と小さな倉庫を備えた簡易駅舎で、新城川をイメージしたルーバー(板を隙間を作りつつ並べたもの)の外観が特徴的。

 2022年9月7日、津軽新城駅は改築工事に伴い従来の木造駅舎の使用を停止、プレハブの仮駅舎に切り替えられた。その後、旧駅舎の取り壊し工事が始まった。

津軽新城駅基本情報まとめ

鉄道会社と路線
JR東日本・奥羽本線
所在地
青森県青森市大字新城字山田
主な歴史
1894年(明治27年) 12月1日
開業。当時の駅名は「新城駅」
1915年(大正15年) 9月11日
津軽新城駅へと駅名変更。
1991年(平成3年)
外壁など駅舎改修
2003年(平成15年) 4月1日
業務委託化
駅舎竣工年
1894年(明治27年) ※駅開業以来の駅舎 。2014年に築120年に!
駅営業形態
2020年(令和2年)3月14日より無人駅。