終着駅のレトロな木造駅舎
JR御坊駅から紀州鉄道の御坊駅へ。路線距離2.7㎞で日本一短いローカル私鉄と称される紀州鉄道、運賃表は小さい看板一枚でこと足りる。単純に見れば芝山鉄道の2.2㎞に日本一短い鉄道の座を譲った。しかし他線からの乗り入れは無く、たった2.7㎞を単独でいったり来たりしている。その中に5駅がひしめいている。
わずか10分程度で終着駅の御坊駅に到着した。1面1線の棒線駅で、古めかしい木造駅舎が街並みの一角に遠慮がちに佇む姿は、昔ながらの私鉄小駅らしい風情溢れる。
西御坊駅の開業は1932年(昭和7年)4月10日で、紀伊御坊駅からの延伸時だ。当初の駅名は松原口駅と言った。駅舎は何年築かは不明だが、開業時からのものだろうか…?
出入口まわりは黒く塗られローマ字の駅名表記も入る。今どきのお洒落な改修レトロ駅舎風だ。
待合室の天井は異様に低く、感覚がおかしくなりそう。片隅に出札口があり、薄汚れたカーテンが無人化されたのかと思わす。しかし朝のみの営業らしい。
西御坊駅は御坊市の昔からの中心地付近にあり、商店街があり家屋が建ち並ぶ。
正面出入口反対側にも、小さな出入口がある。しかし薄暗い細道はまるで路地裏のよう…
反対側の出入口は、空家と駅舎…古色蒼然とした建築物に挟まれ、まるで昭和の裏通りに迷い込んだかのよう。人がすれ違えない程狭い。一見さんは知らない、地元民の知る人ぞ知る道なのだろう。
駅正面以外は改修で張り付けたトタンさえ古び、飾り気無い古き趣きが存分に残る。石積みホームと三角屋根が印象的だ。
列車はここまでだ。西御坊駅から日高川駅までの0.7㎞は四半世紀以上前の1989年(平成元年)4月1日に廃線となっている。しかし錆びたレールは、幻影のようにその先に続いていた…
街中の廃線跡を辿り日高川駅跡へ…
廃線跡に魅かれ日高川駅跡まで歩いてみる事にした。一部は整地されたが、それでも大部分でレールが残っていた。すっかり風景に溶け込み人が通っていたり、庭先のようになっていたり…。ここは駐車場同然に。
道路との交差部分には踏切の設備さえそのまま残る。もう長い事、音をかき鳴らしていないのだろうが。
街中を歩き、あっさりと日高川駅跡到着した。空間だけが残っているのではなく、2面2線のホームに側線…、鉄道遺跡のように、その姿をいまだ留めているのには驚かされた。
日高川駅は日高川の河口付近に位置し、国鉄から貨物列車も乗り入れ、みかんなどが港から船で各地に運ばれたと言う。また王子製紙の専用線も分岐していた。
西御坊駅から日高川駅跡まで、廃れているものの道床がここまで残されているのは、日高川の港湾整備が進んだら、貨物列車を運行するためと言われているが、果たしてそんな日は来るのだろうか…
ホーム上の家屋は廃線後に建ったのだろうが、ホーム跡も良く残っているもの。
貨物で賑い専用線が分岐していたとは言え、国鉄駅に比べれば、その規模は驚く程小さい。紀州鉄道は今も昔もミニ鉄道なのだ。
[2013年(平成25年)1月訪問]
- レトロ駅舎カテゴリー:
- 私鉄の二つ星レトロ駅舎
西御坊駅基本情報+FAQ
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レトロな木造駅舎は何年築?
残念ですが不明です。
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駅の営業形態は?
2018年8月27日より無人駅に。私の訪問時は朝のみの営業でした。
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JR御坊駅から西御坊駅までの運賃は?
大人180円、子供90円。
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西御坊駅の所在地
和歌山県御坊市薗563。JR御坊駅から約2.4㎞南に位置。
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鉄道会社と所属名
紀州鉄道・紀州鉄道線。
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近くの興味深い見所は?
二つ御坊駅寄りの紀伊御坊駅近くの「ほんまち広場603」に、2009年まで紀州鉄道で運行されていたキハ603が静態保存されている。以前、車内で営業していた飲食店は撤退済みとの事。
(※2022年3月現在)