戦後築の木造モルタル駅舎が残る駅

夕刻、空が暗くなり始めた頃、江部乙駅で下車した。縦長の窓が印象的なモルタル駅舎で、寒さが厳しい北海道の駅らしく二重窓になっている。外側の窓枠は木製のままだ。

札幌方向には、雑草に埋もれながらも側線ホームの跡が残っていた。

駅舎内の待合室は意外と広い。江部乙町は現在では滝川市と合併しているが、1971年までは独立した町だった。かつては町の中心駅で、急行かむいも停車していて、その威容を感じさせる広さだ。だが、夕方で曇の天気もあり、待合室内は薄暗く、利用客は少なく、この広さはかえって侘しさを強調しているかのようだった。
1997年から簡易委託駅となっていたが、2003年に無人駅となってしまった。窓口はブラインドが下ろされ、無人化を知らせる貼紙が未だに残されたままだった。

江部乙駅のホームは2面3線となっている。現在は普通列車しか止まらない。2・3番ホームをうろついていると、2本の木が植えられているのが目に入った。よく見ると何と梨だった!下膨れの形をしていて洋梨かと思ったが、千両梨という北海道特産の品種の梨だ。

プラットホームは落ちた梨が一つ、また一つ転がっていた。どれも、まだ食べ頃までは遠く、青々しい実ばかりだった。

駅舎の正面にまわってみた。やはり縦長の窓が目を引く。駅の開業は1989年(明治31年)だが、今の木造モルタル駅舎は1953年(昭和28年築)に建てられたものだ。
こちら側(写真左手)にも梨の木があり、この駅には全部で3本の梨の木があるのだ!

駅舎正面には、りんごををかたどった駅名看板が掲げられていた。江部乙はリンゴの産地として知られ、駅前にはリンゴを扱う商店もあった。駅には梨の他に、かつてはリンゴの木も植えられていて、収穫されると無料で駅利用客に配られたという。

駅前通は旧江部乙町の中心駅だったというが、こじんまりとしている。商店とか飲み屋などの飲食店などが並んでいる。駅からすぐの所に日帰り入浴と宿泊ができるえべおつ温泉があった。
[2008年(平成20年) 8月訪問](北海道滝川市)
~◆レトロ駅舎カテゴリー: JR・旧国鉄の一つ星駅舎~