古い駅舎の側にひっそりと…
飯田線の東上で下車し、駅舎や周辺をあれこれ見ていると、駅出入口脇の植え込みの中に、枯れた池がひっそりと残っていた。小さな池だが、池の前のコンクリートで固められた部分に「友情の池」と書かれているのが目を引く。こんな池に名前が付けられているとは珍しい。しかし荒れ果ててしまい、もの悲しさを感じずにはいられない…
この池に水があって、もっと駅が賑わっていた頃、この駅を利用していた学生達は、友情の池を見て何かを思ったのだろうか。友を想いながら自分も新しいスタートを切ったのだろうか…。もしかしたら同じ東上駅を利用する学生同士、末永く友情があらん事を願って、この池が造られたのかもしれない…
桜咲く門出の4月、この池を見て、そんな事を思い浮かべていた。
[2006年(平成18年) 4月訪問](愛知県豊川市)
余談だが、以前、NHKの熱中時間という番組に枯池をネタに出演した時、事前の打ち合わせでスタッフの方にとてもウケていたのがこの東上駅の枯池だった。意外な反応に思えたが、何でも「友情の池」という名がつけられいるのがとても面白かったようだ。
駅舎改築後、再訪
私が東上駅を訪れて一年も経たないうち、あの木造駅舎が取り壊された。
そして2007年の夏、飯田線を訪れた時、東上駅に降り立ったみた。味気ない簡易駅舎はもちろん興味は無く、ただ「友情の池」がどうなったかが気になった。
新駅舎の右横、おそらくフェンスで囲まれた自転車置場がちょうど旧駅舎の跡地だ。その左側に入口があったはずだ。かすかな記憶をもとに、枯池の痕跡を探してみたのだが…
無い。高い木の左斜め上あたりがその場所だったはずだが…、せめて池の縁の岩くらいは無いかと思ってよく見てみたのだが…、無い。枯池があったと思われる一帯は、駐車場に敷かれているような砂利が敷き詰められいるだけだった。
このへんかと思い、砂利を足で掻き分けてみたが、土面が現れただけだ。そして、落ちているコンクリート片を「友情の池」と標されたプレートかと思い拾うと、裏を返し、また表に返しまじまじと見つめた。
東上駅訪問ノート
豊川市の東端に位置し、東に100mちょっと進むと新城市に入る。
国道151号線から200mばかり奥まった所に位置し、周辺は人家が点在するのどかな農村風景と言った感じでひっそりしている。駅舎はコンクリート造りの小さなものに変わってしまった。しかし、春は桜の大樹が変わらず咲き誇る。
※関連ページ: 飯田線南部、桜駅めぐり(2)~桜で彩られる日常の風景~東城駅