2025年6月、雨…
会津大塩駅から折りたたみ自転車で只見線沿線を西に走った。雲行きは悪く遂に雨が降りだした。元々体調が悪かった上に、落車して怪我までしてしまった。それでもなお降り注ぐ雨に、心の片隅で敗走している気分を抱えながらペダルを漕ぎ続けた。

午後2時半過ぎ、密林のように竹や高い木々が立ち並ぶ奥に、やっと会津中川駅の姿を見つけた。

駅舎を背景に愛車を何枚か撮影すると、自転車を直ぐに折りたたみ輪行袋に入れた。何より雨から逃れたく、自転車を抱え待合室に入った。

待合室は5~6畳位だろうか…?たいして広くない。古い木造駅舎だけど、内部はきれいに保たれていてホッとした。列車まであと1時間位ある。
無人駅で窓口の痕跡はすっかり無い。
しかし、おかしな事に気づいた。入って左側に造り付けのベンチが取り付けられ、右側には引戸が設置されていた。待合室は駅舎右側に位置し、そういう場合、駅事務室に面した左側に窓口がある事が多い。ベンチはそれ以外の部分に設置される事になる。
右側の引戸が無い部分に、2人用程度のベンチを置けなくもないが、そうするとホームと駅舎を行き来する動線に被ってしまう。
待合室に全くベンチが置かれないとは考えられない。最初、左側に造り付けのベンチが設置されたのは、窓口跡が改修され壁になった後かと思ったが…
もしかしたら会津中川駅は開業当初から無人駅で、駅舎もそのように設計されたのかもしれない…

駅舎からホーム側に出て待合室部分を見てみた。左側に小室が取り付けられたような造りになっていて、待合室とも引戸で行き来できる。この小室、横に通気の筒のようなものも付けられているので、たぶんトイレなのだろう。だが、今では封鎖されて使えない。

やっと一息つき、駅舎を見てみようと言う気になった。駅舎は木造で、大きな改修の跡もなく木の板張りのまま。1956年(昭和31年)の開業以来のものと思われる。
階段で上がった1m弱の高さの所に建てられ、大きな庇が付けられる事もなく、トイレが右側にある以外はシンプルな形状。正面には窓がたった1つだけ。他の木造駅舎にはもうちょっと窓があるものだが…。
壁面を見るに窓が埋められた形跡も無い。元々、正面には窓が1つしかなかったのだろう。倉庫のような武骨さだ。

ホームは1面1線だが、以前は貨物側線があったようで、線路の隣にもう1線分の空間がある。側線ホーム側面のコンクリート部分だけ、まるで遺跡のように残っている。
側線ホーム跡には「1953-7」と標されたプレートが埋め込まれていた。このホームが1953年7月に造られたことを表しているのだろう。会津中川駅開業の1956年9月より3年も早い。
会津中川駅は旅客駅としてのみの開業。しかし電源開発(株)が、田子倉ダムと滝ダム建設のため敷いた会津川口‐田子倉間の専用線建設で、列車で運ばれてきた大型の資材がこの会津中川駅で降ろされ、建設現場まで運ばれていったという。隣の駅で当時の終着駅の会津川口駅まで行けばいいのにと思うが、土地が狭く大型資材の取り扱いは不可能だったという。
側線ホームと言っても、一般的な鉄道貨物を扱った訳でなく、他の駅とは随分と性質が違うようだ。そして1957年の専用線開通後は、もう無用の長物となってしまったのだろうか…?

ホームの背後すぐの所は水田だ。その背後には緑豊かな山があり、抱かれるように民家がぽつりぽつりと点在する。雨に濡れる山里の風景もまた味わい深い。

ホームから駅舎を眺めた。こちらも板張りで古い木の質感が趣ある佇まいだ。東側のこちらには普通に二つの窓があった。側面の窓は高い所にありどこか倉庫的…

駅間には、駅舎を取り囲むように桜の大樹が並んでいた。きっと春は見事なんだろうなぁ…。またその頃に来たいもの。
2026年4月、晴…
それから10ヶ月後の2026年4月、再び只見線を旅していた。どの駅を訪問しようかと迷った。会津中川駅にも行きたいけど、前回、訪れたからまあいいかと思っていた。

だけど結局、会津中川駅で下車した。

春の旅で、駅に咲く桜を期待していたが、会津中川駅のあの駅舎を取り囲むような桜達は、もう散ってしまっていた。会津柳津駅の係員さんによると、桜のピークは10日ほど前の4月10日あたりだったと言う。桜の時季を予想して、旅の日を決めたが、だいぶ外してしまった。

それにしても青くどこまでも広がる空!温かな陽射し、輝く駅。晴れ渡る風景に心まで晴れ晴れとしてくる。前回が雨から逃げたく怪我までし陰鬱な気分を抱えながら走ったからなおさら、そんな風景が心にしみる。前回は気分も体調もいま一つながらも思い出深いものになったが、今回、新しい思い出を重ねる事ができた。会津中川駅で降りて本当に良かったと思った。

木の質感が味わいあるのは相変わらず。窓枠まで木製だ。
駅舎のホーム側には庇が設けられる事が多い。この方が雨をしのげ駅員さんも仕事がしやすいものだろう。この駅は出入口やトイレ部分こそ軒があるが、それ以外の部分には無い。思えばそんな所も有人駅らしくない。

正面から見てみた。前回は雨だったりレンズが曇ったりで、あまり上手く撮れなかったので、改めてカメラを構えた。
当然ながらこちらも相変わらず。いい木造駅舎だなぁ…。
この日の朝は、なぜか駅に車でやってきては立ち去る人の姿がチラホラ…。見ていると駅前に粗大ゴミを捨てに来ているよう。粗大ゴミの回収日で、駅が回収場所になっているのだろう。

今回も折りたたみ自転車と共に旅をしている。展開し走る体制を整え、会津若松行きの列車を見送った。駅北側の踏切まで回ってみて、方向を変え会津川口方面に向け出発した。
駅周辺は家屋が点在し、無人の神社もある小さな集落。すぐ近くに道の駅がある。
駅前の国道沿いにはお茶屋さんがあった。古色蒼然とした木造商店で、長い間、ここで店を構えているのだろう。でも、きっと昔は何軒かのお店などがあり、ささやかながらも駅前らしさ感じる町並みがあったのだろう。そう言えば駅前の古くからの街には、呉服屋、お菓子屋、お茶屋、床屋なんかがよくあるものだなあ…

「今度来る時は駅が桜で溢れる春がいいな…」
一旦止まり名残惜しく駅の方を見つめそんな事を思った後、再びペダルを漕ぎ出した。
(福島県大沼郡金山町)
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JR・旧国鉄の二つ星レトロ駅舎