駅と駅舎の旅写真館-railwaystation.jp-

嘉例川駅(JR九州・肥薩線、木造駅舎)※第3回目訪問


登録有形文化財となった嘉例川駅駅舎

 今回2007年6月の九州旅行の最終訪問駅は嘉例川駅になった。嘉例川駅には2004年の2月に初めて訪れ、その約1年半後にも再び訪れている。数年の内に3回の訪問と、遠く離れた九州の駅の割に訪問頻度は高く、それなら未訪の他の駅に行ってもよかったのだが、近くを通るとなると見過ごす事できず、どうしも立ち寄りたいと思わせる駅だった。

 それに帰路は鹿児島空港からの飛行機だ。嘉例川駅は実は鹿児島空港の最寄駅で、空港までは約5kmの道のりで、無理すれば歩けなくもない距離だ。しかし、空港行きのバスが、1日数本ではあるが新設されたのはとても有り難い。今回はバスを利用して空港まで行く事にしていた。

嘉例川駅木造駅舎の登録有形文化財記念碑
( 嘉例川駅駅舎の登録有形文化財記念碑。)

 降り立つと、百年の木造駅舎は変わらぬ佇まいのまま、私を迎えてくれた。1903年(明治36年)築のこの駅舎は、2006年に国の登録有形文化財になり、その記念碑がホームに設置された。記念碑は百年の木造駅舎にちなみ、霧島の百年の杉材を使ったもので、木の駅空間にあって浮くこと無く馴染んでいる。

観光客で賑わう嘉例川駅
( 観光客で賑わう嘉例川駅。)

 九州新幹線の開業を機に、嘉例川駅は昔ながらの造形を残した築百年の木造駅舎のある駅として、観光スポットとしてアピールされ、鉄道ファン以外にも広く知られるようになった。鹿児島中央駅‐吉松間で運行されている観光特急「はやとの風」も停車する。私が訪れた時も、訪問客が絶えず、誰もが「うわ~、懐かしい~」、「昔のままだね」などど感嘆の声を漏らしている。

嘉例川駅、余分なものが置かれず木造駅舎の良さが引き立つ
( 余分なものが置かれず駅舎の趣き深さが際立つ。)

 駅の出入口と言えば、自動販売機、電話ボックスなど何かが駅を遮っていたり、ポスターや看板などが掲示されていたりする事が多い。それら駅の「必須アイテム」は、古い駅舎では趣を大きく損ねてしまう場合が多い。しかし嘉例川駅に、そのような余計なものは一切置かれいてないのがいい。木造駅舎が持つ渋味や懐かしさをしみじみと感じることができる。

 駅舎は保存のため旧隼人町がJRから買い取った。広く知られるようになり、やや俗化してしまった感はあるが、必要以上に俗化させず、昔のままの雰囲気を保とうとしている事に好感を感じる。

嘉例川駅横に新設された公衆トイレ
( 新設された公衆トイレ。)

 駅舎横にトイレが新築されたが、こちらも駅の雰囲気を壊さない木を使った外観に仕上げられた。混雑時は隣接した公民館のトイレもどうぞという掲示があり、訪問者の多さを窺わす。

嘉例川駅、待合室も昔のままの趣き…
( 駅舎内部も昔のままの趣き深さ…。)

 待合室、窓口、木製ベンチ、天井など、使い込まれた木に包まれた味わい深い空間が心地よい。

嘉例川駅、駅弁「百年の旅物語かれい川」は売り切れ。
( 駅弁「百年の旅物語かれい川」は売り切れる人気振り。)

 嘉例川駅の人気は、駅弁「百年の旅物語かれい川」が作られるまでになった事からもうかがい知る事が出来る。事前予約制で観光特急「はやとの風」で販売している他、土日は現地でも販売している。人気は高く完売の貼紙が。これまで3回、嘉例川駅を訪れているが、この駅弁を食べた事は無い。

 また、名誉駅長として、駅の名物と言っても過言ではない存在の福本氏にもまだ会った事が無い。次回はこの駅で名誉駅長に会い、「百年の旅物語かれい川」をこの駅舎の中で食べる事を楽しみに、この駅を訪れたいものだ…。

嘉例川駅、昔のままの旧駅事務室内部
( かつて駅事務室も昔の造りを残す。)

 旧駅務室内部は広いが、無人駅となった今、がらんして少々寂しげな雰囲気が漂う。昔は農作物など、貨物も扱っていて、最盛期は何人もの駅員が忙しく動き回ったのだろう。昔の駅名標など、いくつか物が置かれているが、内部は普段何に使われているかわからない。

 室内は大きく改装された様子は見受けられず、窓口裏側は引出しやテーブルなど使い古した木の造りのままだ。外観同様、昔の姿をよく残しているものだ。

嘉例川駅、廃止された島式の2・3番ホーム
( 廃止された島式の2・3番線。)

 昔は2面3線のホームがあったが今では、駅舎に面した1面しか使われておらず、島式ホーム方はレールが剥がされている。草が覆ったホームにつつじの花が咲き、まるで荒れた庭のような趣きだ。

嘉例川駅、木造駅舎色のワンマン運転用ミラー
( ワンマン運転用のミラーも木造駅舎色だ。)

 ワンマン運転用のミラーも駅舎に合わせ渋めの「木造駅舎色」に塗られ、駅の雰囲気を損ねていない。このミラーのポールや枠は通常、黄色に塗られ、ローカル駅の撮影をしている時、けっこう目立って浮いてしまう位で、写真撮影の時はどう扱っていいかいつも悩む。こんな細かい所まで配慮し、駅の雰囲気を大切にしようという心意気が感じられ嬉しい。 

嘉例川駅北側、吉松方の側線ホーム跡
( 駅北側の側線ホーム跡。)

 駅北側、吉松方のホーム先端には、雑草に覆われた側線跡が残っていた。その近くには、プレハブではあるが詰所も残る。こうした昔ながらの駅施設が秘かに残っているのも嬉しい。こちらもいつか昔の姿を取り戻さないものだろうか…。

嘉例川駅、年月を感じさせる木の造り付けベンチ
( 駅の年月を感じさせる造り付けの古い木製ベンチ。)

 改札口の横にはすっかり古びた木の造り付けのベンチが残る。1世紀もの間、列車を待つ幾人もの人がこの木造ベンチに腰掛け、そして、風雨に晒され続けてきた。すり減らされ浮かび上がった紋様が、この駅の歴史を私に語りかけてきているかのようだ。

 きっとこれからもこの駅舎は、幾多の旅人を受け入れながら、時の流れの中で超然と佇んでいくのだろう。だけど、嘉例川駅の駅舎と私は、どちらが早くこの世から消えて無くなるのだろうか…?多分、私の方なのだろう。そうあって欲しい。


[2007年6月訪問]

追記: その後の嘉例川駅

 2012年4月に訪問した時、旧駅事務室部分の中に入る事ができた。その時の様子は以下へどうぞ。
気になる木造駅舎の内部、窓口の向こう側の風景 - 嘉例川駅


 2015年11月頃から1匹の雄猫が住み着くようになった。「ニャン太郎」と名付けられたこの駅猫は、地元の人々や観光客から可愛がられ人気者となり、2016年5月に「嘉例川観光大使」に任命された。

嘉例川駅・基本情報+

会社・路線名:
JR九州・肥薩線
駅所在地:
鹿児島県霧島市隼人町嘉例川2176
駅開業年:
1903年(明治36年)1月15日
駅舎竣工年:
1903年。※開業以来の駅舎
駅営業形態:
無人駅
その他:
・鹿児島空港‐妙見温泉‐隼人駅の路線バスが嘉例川駅に立ち寄る。空港まで約11分。乗り場は駅から約150mの駐車場。時刻、運賃など詳細は下記ページへ。
妙見路線バス時刻表(運行会社:いわさきコーポレーション)※2016年3月現在
・大人気の嘉例川駅の駅弁「百年の旅物語かれい川」は、事前に駅弁引換券購入の上、特急「はやとの風」車内で受け取る事が可能。詳しくはJR九州ウェブサイト・特急はやとの風の、車内販売・駅弁の項目へ。

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