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新八日市駅 (近江鉄道・八日市線)~大正の洋風駅舎はかつての本社~


2階に本社が置かれた歴史もある古びた木造駅舎

 近江鉄道の主要駅の1つで本線と交わる八日市駅から、八日市線の近江八幡行きに乗ると、すぐに新八日市駅だ。八日市駅からわずか0.6kmで八日市市街地に意外い近いが、乗降した乗客はまばらで、駅前はこじんまりとしている。

近江鉄道・新八日市駅。1912年(大正11年)築の洋風木造駅舎。
( 近江鉄道・新八日市駅。1922年(大正11年)築と言われる洋風木造駅舎。 )
近江鉄道・新八日市駅、駅舎と駅前。
(前身の湖南鉄道などの本社も置かれた駅だが、ひっそりしている… )

 しかし、そんな状況に反し、2階建ての立派な木造駅舎が威風堂々と建つ。パステル調の緑を基調とした明るい感じの駅舎だが、剥げている部分も目立つなど相当に年季が入っている。徐々に日が傾き始め、木造駅舎は夕日色に染まり、濃い影に刻まれる。

 この新八日市駅は、八日市線の前身、湖南鉄道が1913年(大正2年)に近江八幡駅から伸びてきた際の終着駅で、当初の駅名は八日市口駅だった。1919年(大正8年)に現在の駅名である新八日市駅となった。既に近江鉄道の八日市駅が開業していたので「新」が付いたのだろう。駅舎は開業9年後の1922年(大正11年)に建てらたと言われ(※1)、湖南鉄道の本社も置かれた由緒正しき駅舎で、小駅なれど堂々とした雰囲気も納得だ。

 その後、1927年(昭和2年)後に琵琶湖鉄道汽船と合併、1929年(昭和4年)に分離され八日市鉄道となり、1944年(昭和19年)近江鉄道に合併という変遷を辿った。そして1946年(昭和21年)に、僅かしか離れていない八日市駅と新八日市駅の間に連絡線ができたのは合併の帰結として当然の成り行きだったのだろう。そして、新八日市駅は徐々に衰退していったという。

 今は2階が使われているかどうかは解らない。たぶん使われてはいないのだろうが…。しかし、かつては湖南鉄道、八日市鉄道の拠点として、何かと慌しかったのだろう。

新八日市駅駅舎、ユニークな車寄せ。
( 軒飾りがユニークな車寄せ。)

 入り口の軒の下には凝ったデザインの軒飾りがズラリと並んでいる。軒飾り一つ一つに小さな穴が開き、先がちょこっと尖っているのが面白い。

 軒の横には、軒に届きそうなもみの木が植えられた植木鉢がある。この木が洋風の駅舎やこの軒に雰囲気にとても合っている。このもみの木をここに持ってきた人はなかなかセンスがあるかも。クリスマスシーズンには、飾り付けをしたら、まるで海外の駅に居るような、華やかで楽しげな雰囲気になるだろう。ウェブ上や書籍などで見た他の新八日市駅の写真では、この木は、まだ苗木程度の高さだった。成長したものだ。

新八日市駅駅舎、窓口の横に小さな部屋がある。
( 窓口の横には、不思議な小さな部屋がある・・・ )

 駅舎の中には飲み物の自動販売機やベンチがある以外は、がらんとしている。窓口は業務に使われいるが、駅員は通勤通学で賑わいそうな朝の7~9時にしかいなく、ほとんど無人駅と言ってもいい。

 持て余し気味の広さの待合室だが、窓口横には更に“隣りの間”と言えるような小さな部屋が、待合室とは扉も無く続いていた。中に入ると、こちらには何も置かれていないベージュと白の小さな空間があった。この空間は今はあっても無くても良さそうな場所だ。ただ、壁には使われていない小さな窓口が1つあった。昔はこの空間が必要とされる程、この駅は賑わったのだろう。売店などお店がすっぽりと収まりそうな空間だが、こうも利用客が少なくては商売にならない。でも、今は無意味な空間に、かつての本社駅の風格を感じる。(※2)

近江鉄道・新八日市駅、駅舎の外の古い木製改札口。
( 駅舎の外には古い木製の改札口が残る。)

 ちょうど私が訪れた時間には、他にもこの洋風駅舎目的の来訪者が居た。やはり貴重な鉄道遺産として名が知られているのだ。お互い気を使い、譲り合いながら撮影した。

 駅舎正面向って左側にはすっかり古び、腐りそうな木製の改札口が残っていた。隣りにあるベンチもなかなか古そうだ。駅舎の周りをぐるりと一周し、2階への階段は無いのかと探してみたが見当たらなかった。駅務室内にはあるのだろうが。

新八日市駅・駅舎とプラットホーム。
( 駅舎ホーム側。)
新八日市駅、大正のレトロな駅舎が夕陽に染められていく…
( 夕日が大正のレトロな駅舎を染めていく… )

 日が傾き、古い駅舎は、刻一刻と夕暮れ色い染められていく。暗くなりかけた頃、この駅を後にした。再びこの地に来た時に、この駅舎と出会える事を願いながら…。


[2003年1月訪問]

追記: その後の新八日市駅etc...

 その後、新八日市駅を訪問しているが、窓口横の小さな部屋は板で塞がれ、入る事が出来なくなっていた。また、駅舎は健在だが、蔦がどんどん成長し、駅舎の半分を覆うほどに、窓口横のあの小部屋など未使用部分にも侵入するほど。状態は決して良好には見えず、何らかの対策が望まれる所。


(※2) 窓口横の小部屋は、旧特等待合室との事。湖南鉄道の特等は国鉄の2等・ロに相当し、下位等級として並等(3等相当)があったという。(ご教授ありがとうございます。)


 2017年3月、八日市市議会が新八日市駅駅舎を観光資源として活用するため、耐震工事などの改修を行うと報道された。また、現在は近江鉄道の所有となっている駅舎を、市が譲り受ける方向で協議を進めているとの事だ。

新八日市駅、基本情報まとめ

鉄道会社・路線名
近江鉄道・八日市線
駅所在地
滋賀県東近江市八日市清水二丁目 ※訪問時は八日市市。
駅開業日
1913年(大正2年)12月29日 ※湖南鉄道・八日市口駅として
駅舎竣工年
1922年(大正11年) (※1,出典:「鉄道史料147号」。明確な竣工年の根拠は無いが、この年が有力との事。)
駅営業形態
有人駅(現在は平日のみ。7:00~8:50、16:00~18:50(降車客の改札業務のみ)。)

近江鉄道の木造駅舎

彦根口駅 (近江鉄道・本線)
※古色蒼然とした木造駅舎。残念ながら2014年に取り壊された。

洋風木造駅舎

原宿駅 (JR東日本・山手線)
※東京23区内に現役で残る。建て替え決まり先行きが危ぶまれる…。
採銅所駅 (JR九州・日田彦山線)
※ローカル線の小駅。正面のペディメントや待合室内照明の台座が特徴的。(福岡県)