気になった駅、サンタレンへ…
リスボンからポルト行きのインテルシダーデ(Intercidade=IC、急行列車)に乗り、車窓から見て気になった駅、サンタレンで下車した。
下車すると「SANTAREM」と書かれた奥の給水塔(のようなもの)が目を引いた。ポルトガルのそこそこの規模の地方の駅には、この給水塔のようなものが残っている駅が多かった。
方や足元を見下ろすと、石畳のプラットホーム上にも「SANTAREM」と文字がモザイク状に形作られていた。
数線ある側線の脇には古そうな車庫があった。たぶん車庫なのだろうとは思っていたが、帰国してから調べると、現在では鉄道博物館になっている事を知った。しかし、一週間の内、火曜日しかオープンしていなく、訪問時も閉まっていた。
サンタレンという土地は、私が持っていた旅行ガイドブックでも紹介されていなかった。にも関わらず来てみようと思った理由はの一つは、この駅に停車中、車窓から見えたプラットホーム上の緑豊かなミニ庭園だった。植物棚や木のアーチまで設置され、庭園というよりホームの上のミニ公園と言った風情だ。列車の出発までここでのんびりと過ごせそうだ。だが、見た限り、ここに近付いている乗客は一人もいなかった。
木のアーチをくぐると、庭園の真ん中には菱型の小さな池があった。四方に小道が延びていて、ほんの数歩の距離だが、歩けるようになっている造りが面白い。四隅にはポルトガル鉄道(Comboios de Portugal)の略号、CPのマークが入った植木鉢が置かれていた。
ミニ庭園の駅舎に挟まれるように、小さな家屋のような建物が駅舎に付属しているように建てられている。しかも。軒まで巡らされているのが気になった…。。何だろうと思ったが、出入口横に待合室を示すピクトグラムが掲示されていた。しかし、鍵が掛けられ現在では使われていない様子だ。
元待合室には回廊のように軒が巡らされているのが優雅な雰囲気だ。軒下からは先程の庭園が眺められる。テーブルを置いてカフェなんかにすれば、いい風情だし、庭園を眺めながら風に当たるのもいいだろう。
アズレージョで世界遺産候補の街が描かれた駅舎
訪問の動機となる気になるものがもう一つあった。それは、駅舎の壁にズラリと並んだアズレージョ(ポルトガル独特の装飾絵タイル)だった。丸い柱の奥に並ぶ様は、教会などポルトガルの史跡を見ている気分にさせられる。アズレージョが飾られた駅と言えば、アヴェイロ、ポルト・サンベント、ピニャオンが有名だが、ここもとても印象的だ。
ずらりと並んだアズレージョには、教会や城跡など、サンタレンの建物や風景が描かれているという。このアズレージョは12世紀から13世紀にかけて建てられたサン・ジョアン教会だ。
古い建物が多く残るサンタレンは世界遺産の暫定リストに登録されているとの事だ。駅に描かれた風景や建物の数々が世界遺産として脚光を浴び、この駅が旅行者で賑わう日が来るのかもしれない。
外に出てサンタレン駅の駅舎正面に回ってみた。こちら側にはアヴェイロ駅のように、絵タイルのアズレージョは無かったが、腰辺りにダイヤ状チェック模様のタイルが敷き詰められている。
白い壁にオレンジ色の瓦はポルトガルの駅舎によく見られるスタイルだ。写真向かって左側の1階部分が窓口になっている。右側の1階部分はカフェだが、日曜日のためか休業していた。
3階部分に煙突があり、出窓が並んでいる様が面白い。1階のカフェと窓口以外は乗降客が入れない区画だ。一体、何に使われているのだろうか・・・。
駅前は石畳の道路が伸びるこじんまりとした通りになっている。倉庫らしき大柄な建物やアパートらしきもの、カフェなどが建ち並ぶ。カフェは地元の人々で大賑わいだった。
リスボンに帰ろうとインテルシダーデの切符を買うため、窓口に立ち寄った。ユーレイルパスを提示すると、割引のパスホルダー運賃で指定席券を購入できる。しかし、発券にやや手間取った。ポルトやリスボンと言った旅行者が多い駅ではパスホルダー運賃でも発券する機会が多いので、こういう場合、スムーズに進む。しかし、そうでないと慣れてない操作でスムーズに行かないのだろう。だけど、駅は狭く窓口は見つけやすく、何人も人が並んでいるという事もないので、ストレスは無い。
有名な観光地でもないサンタレン駅は、駅も駅前も観光客らしき人の姿は無く、地元の人ばかりでのどかなものだった。しかし、、サンタレンの街が世界遺産に登録された後は、駅は旅人で賑わうのだろう。そんな日が楽しみだ。
[2009年8月訪問]