スイス最大のターミナル駅・チューリッヒ中央駅

ハンブルグからチューリッヒ中央駅に到着した夜行列車

 前夜、ドイツのハンブルグから夜行列車シティナイトラインに乗り、朝の9時にスイスのチューリヒ中央駅(Zurich Hauptbahnhof)に到着した。スイス連邦鉄道(SBB CFF FFS。通称:スイス国鉄)最大の駅で、ヨーロッパのターミナル駅らしく、地上プラットホームのほとんどは屋根で覆われている。長いドームのような上屋がいくつも連なる空間は壮観ですらある。

スイス最大の鉄道駅・チューリッヒ中央駅・コンコース

 配線は行き止まりのプラットホームがずらりと並ぶ櫛形ホームだ。

 プラットホーム終端から続くコンコースも屋根で覆われて、その下には多くの旅行者が行き交う。そして両端を見ると、遮るものが無く、トラムや自動車が行き交う外の様子が見える。改札口などなく、直接駅の外に出ることができるのだ。

 この大きな屋根に覆われたプラットホームには、ICE、ユーロシティ、ユーロナイトと言ったヨーロッパ各国からの国際列車や、インターシティ(IC)、インターレギオ(IR)、レギオエクスプレス(RE)と言った国内の速達列車が発着する。Sバーン(S-bahn)、レギオ(R)と言った近郊列車は地下のホームから発車しているという。ここやその周辺の地下にもプラットホームが埋もれているのだと思うと、規模の大きさを実感する。

チューリッヒ中央駅、駅舎入り口のドーム状の空間

 折角だから駅舎の外に出たいと思った。出入口はまるで宮殿かと思わせるドーム状の造りになっている。装飾もヨーロッパらしい歴史と伝統感じる洒落たものだ。

スイス国鉄・チューリッヒ中央駅、ネオルネッサンス調の重厚な駅舎

 内部だけでなく、外観もネオルネッサンス調で歴史感じさせる。堂々と佇む姿は、これぞヨーロッパの歴史あるターミナル駅と深く感激させられた。この駅は1847年の開業だが、需要増大を見越し、1871年に現在の駅舎に建て替えられたという。

スイス連邦鉄道・チューリッヒ中央駅、最大の都市らしい重厚な駅舎

 駅舎は大きくクラシカルな造りは堂々たる雰囲気を放つ。こちらは南側で、トラム駅や道を渡ると街へと続く通りもあり、駅の正面と言えそうな雰囲気だ。

チューリッヒ中央駅、駅舎に掲げられるスイス国旗

 駅舎玄関部分の頂上には、古代の衣装を纏った像が置かれている。そしてスイスの国旗がはためいているのがどこか誇らしげだ。

スイス連邦鉄道・チューリッヒ中央駅、駅舎側面

 南面にある駅舎から左に進み曲がり、東面側に着てみた。南側に比べたら地味ながらも重厚さが漂う。

 元々、プラットホームは駅舎のある南面背後のホールの中にあったという。ここはその空間の東端にあたり、かつてはこの壁のすぐ後ろに列車が並んでいたのだろう。

チューリッヒ中央駅、駅舎の時計

 中央には時計が掲げられ、その周りの装飾も正面ではないからと言って手が抜かれている訳ではなく、やはり細部が凝っていて素晴らしい。

スイス連邦鉄道・チューリッヒ中央駅、駅舎の回廊

 そして軒…と言うか回廊の下に入ったもっと驚かされた。洒落た装飾が施された高い天井に重厚な柱が並ぶ回廊は、まさに宮殿の趣だ。ここはやや人通りが少ないため、ひっそりとした雰囲気が漂っていた。

チューリッヒ中央駅、水場

 回廊の横には小さな泉が作られていた。子供の銅像の水がめからは、絶えず水を注がれる。駅のちょっとした潤いの空間だ。

チューリッヒ中央駅、駅横の大通り

 ホールの北面は建物が増築され近代的な造りになっている。

 奥の屋根の下はプラットホームで、18番ホームがある。道路から僅か数メートルの所にトラムでない普通サイズの列車が止まっている様は、不思議な雰囲気だ。

チューリッヒ中央駅・巨大なドーム状のコンコース

 そして東側からホールに入ってみた。かつてプラットホームが並んでいただけあって、かなり広々とした空間で、サッカーができるのではと思える。半円形の窓が並ぶ様も印象的だ。両側にはカフェやお土産屋など様々な店舗が並んでいる。

 小雨が降るこの日、窓がこれだあっても光は十分にもたらされず薄暗い。このただっ広く薄暗い空間はそれなりに人の通行があってもホールの広さに負け、閑散とささえ感じてしまう。

 だが、この広いスペースを利用し、イベントが開催される事もあるという。毎週水曜日はマルクト(市場)が開かれ、野菜やチーズなど食料を売る屋台が軒を連ねるという。訪問した日は火曜日で、1日違いで残念!クリスマスの時期はクリスマスマーケットが開かれ華やかな雰囲気に染まるという。この空間さえあれば、大抵の事は出来てしまうだろう。

チューリッヒ中央駅内の薬屋

 駅舎内の薬屋もこんなに洒落ている。異国フィルターを通して見ているからだろうか…

チューリッヒ中央駅、ケーキ屋

 あるショーウィンドーには色とりどりのケーキが並び、強烈に私の目を引きつけたた。とても美味しそうで、もし現地人ならば、一つ買っていきたい。いや、いっその事、ザグレブへの列車の出発前に1個買って、長い旅の途上で平らげてしまおうか…

ザグレブ行き夜行列車、旅立ちの前に…

チューリッヒ中央駅、お店がオープンして賑やかなコンコース

 首都のベルンまで行き、夜の7時ごろチューリヒ中央駅に再び戻ってきた。朝と違いホール内のお店は全部空いていて、通行人も多くなっていて活気ある雰囲気だ。この広々とした空間のあちこちにカフェのテーブルがあり、ほぼ満席と繁盛していた。

 立ち並ぶ店の中にひっそりと、一等車利用者向けの国鉄ラウンジの入口があった。扉の中に入ると、カフェのテーブルが並び、突き当たりに薬屋があるだけで、一瞬どこかわからく、「あれ?」と思った。しかしガラス張りの薬局の横を見てみると、これまたガラス張りのエレベーターの扉があった。どうやらラウンジは2階にあり、このエレベータで上がっていくようだ。

スイス連邦鉄道・チューリッヒ中央駅、ファーストクラスラウンジ

 ラウンジはスイス国旗の赤色を基調とした壁が印象的に映った。いくつかの小部屋が繋がっていて、それぞれにゆったりとしたソファーが配置されている。コーヒーを取って、列車に乗るまでのひと時、ゆったりと寛いだ。2夜連続の夜行列車なので、デジタルカメラの充電も欠かせない…。

夕方のチューリッヒ中央駅、ベオグラード行き夜行列車が入線

 もう時間かと思いラウンジを後にし、8番ホームに向かった。ちょうど今宵の宿となるクロアチア・ザグレブ経由のセルビア・ベオグラード行きの国際夜行列車・ユーロナイト(EN)が入線してくる所だった。

チューリッヒ中央駅、出発を待つザグレブ経由ベオグラード生き夜行列車

 もうすぐ夜の8時半にだが、チューリッヒはようやく日が沈もうとしている頃だ。ホームの向こうのには、夕陽に染め上げらた空が見える。その美しさに、今日の午後、ベルンで散々雨に降られたのを思い出していた。列車の出発が迫る中、時間が許す限りホームで空を眺めた。今回はちょっとしかスイスに居られなかったけど、またいつの日にか必ず来たいものだと、短い滞在を惜しみつつ…。

 そして8時40分、私を乗せた列車はより暗さを深めた夕空の元へ駆け出した。

[2014年8月訪問]

コッツウォルズらしさ漂うライムストーンの駅舎

 イングランド南西部、スウィンドンからチェルトナムへの路線、ゴールデンバレーラインの列車に乗り、北の方に一駅のケンブル(Kemble)で下車した。イングランドの素朴な田舎風景が残り旅行者に人気のコッツウォルズ地方のやや南部に位置する駅だ。

ケンブル駅に到着した列車、プラットホーム端に給水塔が残る

 コッツウォルズでも人気の村・バイブリーに訪れるため、この駅で下車した。到着した2番ホームの先端には、SL時代の古めかしい給水塔が残っていた。

イングランド、ケンブル駅ホーム

 ケンブル駅のプラットホームは2本あり、スウィンドン、ロンドン方面の列車が発着する1番ホーム側に駅本屋が面している。まもなく列車が到着するようで、十人程度の乗客がプラットホームで待っていた。

ケンブル駅、ライムストーンの壁が印象的なホーム

 反対側の2番ホームの軒を支える柱は、日本の古駅舎の柱と違って鉄製で、色使いや装飾が派手で目を引く。しかし、ライムストーン一面の壁がやはり印象的だ。ライムストーンは石灰石の一種だが、蜂蜜色を帯びているのがこの地方独特で「コッツオルズストーン」とも呼ばれる。コッツウォルズ地方の古くからの建築物でよく使われている名産の石材で、この地方の風景を見ていると、ライムストーンの古い建物ががあちこちで見られた。

 この壁は待合室などが入った建物のようだが、現在では使われていない様子だった。

ケンブル駅、2番ホーム側の駅舎

 2番ホーム側にも出入り口がある。写真左奥の駅名が表記されている部分が、かつて待合室などが入っていた建物の一部で、跨線橋とは一体となった造りになっている。以前は、こちら側にも切符売場があったのかもしれない。

 駅前は狭く、木々に囲まれた細長い土地は駐車場として利用され、多くの車が停められている。

 駐車場を通り駅から出ると、人家がまばらで畑が広がる風景に驚いた。こちらは駅本屋ではない方の出口とは言っても、駅前だからもう少し何かあると思っていたが…。パブらしき飲食店の1軒がポツンと建っていた。

ケンブル駅を見下ろす。廃線となったサイレンセスター方面ホームが残る

 駅を見渡せる駅外の跨線橋に来てみた。ちょうどロンドン・パディントン行きの特急列車が入線してきた。

 1番ホーム側はよく見ると三角状になっている。三角状のもう1辺の大きく弧を描いたホームは、かつてのサイレンセスター方面への支線のプラットホーム跡だ。ケンブル駅には他にもテットベリーへの支線も分岐していた鉄道の要衝だったが、1964年に両線とも廃止となってしまった。廃止から半世紀近く経ち、くっきりと痕跡が残っているのは驚きだが、信号が今でも生きていたので、側線として使われているのだろう。2番ホームと一体だったであろうテットベリー支線のホーム跡も探してみたが、さすがに解らなかた。とうの昔に撤去されたのだろう。

ひっそりとしたケンブル駅ホーム

 列車の出発を眺め、駅に戻ってきた。すると先程と打って変わって、ホームの人気が無く沈黙に支配されているのに驚かされた。日中は上下各1時間に1本の列車しか無く、それも十数分程度の間に上下列車の発着が行われるパターンなので、列車が出た直後はどうしても閑散としてしまうのだろう。勝手を知った日本の駅では何とも思わなく、むしろ駅を独占できる喜びを感じるのだが。不慣れな異国の駅の沈黙は、かすかな戸惑いと不安をを覚えずにはいられなかった。

イギリス・イングランドにあるケンブル駅、ライムストーンが印象的な石造り駅舎

 ケンブル駅の駅舎は1番ホームと、先程の廃ホーム跡に挟まれた三角地帯の間にある。ライムストーンの小さな石造り駅舎で、煙突や三角屋根の造りがかわいらしく、まるでコッツウォルズの田舎家を見ているかのようだ。こちらが駅本屋で、出札口や駅事務室もあり、タクシーも待機し、バスの発着所もある。

 駅本屋に対し、レールに面し、小さな建物がL字状に配置され軒で繋がっている。その下が出入口となっていて券売機も置かれている。有人駅だが駅本屋を通らなくても出入できる所がいかにもヨーロッパの鉄道駅らしい。

 駅本屋の中に入ろうとしたが、鍵か掛かっていて入れなかった。入口に張られていた掲示を見てみると、窓口営業時間は月曜から金曜日は6:40から13:30まで、土曜は14:10分までと少し長いが、日曜に至っては完全に休業となっている。そう言えば、到着した時は駅員の姿を2番ホームから目にしていたが・・・。もう駅の中は暗く人の気配はしない。こちら側にトイレもあるが、営業時間終了という事でクローズされていた。日本の駅では無人時間帯だからと言ってトイレが閉鎖される事は無いのだが、こんな所にも日本と海外の違いがあるのが興味深い。

ケンブル駅周辺の風景

 ちょっと駅前に出てみようと歩いてみた。こちら側も、かつてのサイレンセスター支線の廃線跡に沿ってに駐車場となっている。駅から見える範囲に建物は数軒だった。そして更に少し進み交差点に出て、道の両側を見てみると…、何と林のように木々が茂り鬱蒼としている風景があるだけだった。かつての要衝駅の駅前だから、もうちょっと何かあると思っていたが…、まるで秘境駅だ。バスの待ち時間が1時間半近くあり、駅前のカフェでのんびりとと思っていたが、甘かった。サイレンセスター方面への支線が生きていれば、列車でよりバイブリ―に近づけたのになと思いながら時を過ごした。

翌日、再びケンブル駅へ…

バイブリーに宿泊した翌日、グロスターに行くため、再びケンブル駅にから列車に乗る事にした。経由地のサイレンセスターからグロスターへのバスもあるのだが、鉄道ファンとして、少し遠回りになっても、鉄道にこだわりたいからだ。


 サイレンセスターからバスに乗り、ケンブル駅が近づくと住宅街を通り抜けた。昨日バスで通った時は下を見ていたのか気づかなかったが、秘境駅なんかじゃなく、こじんまりとしていながらも街があったのだ。

 そしてケンブル駅に到着した。まだ昼前で、駅舎の中の明りは灯っていた。駅員さんはどうやらいるようだ。だけどどんな風なのか、勝手を知らず恐る恐るドアを開けてみた。

ケンブル駅の駅舎内、切符売場・待合室

 駅の中は窓口と待合室となっていて、白を基調にこざっぱりと改装されていた。外観がコッツウォルズストーンで趣きあるのに較べ、単調過ぎやや物足りなく思う。

 窓口は2つあるが、使われているのは一つのみだ。切符を買おうと窓口に行くと「今、出ているけどすぐ戻る」という趣旨の看板が置いてあった。そう言えば、さっき駅員さんがほうき片手に駅前を掃いていた。乗客が多くない田舎の駅なので、1人勤務なのだろう。

 もう一つの窓口を見てみると、黒板が立てかけられていた。見ると
「off the rail cafe」と書かれていて、クロワッサンとか更に色々とメニューが綴られていた。どうやら駅内にカフェがあるようだ。

 駅舎の中からホーム側に出てみた。日本なら改札口など、外と中を分けるがあるのだろうが、ヨーロッパなのでそのような設備は見当たらない。駅舎は現役路線のプラットホームに対し直角に配置され、ホームまでの通路は大きな上屋で覆われている。かつてはこの通路でサイレンセスター方面へのホームと繋がり多くの人が行き交ったのだろう。しかし、今では廃ホーム側は壁や窓で塞がれ行き止まりとなっていた。

 通路に面し、ひっそりと狭い出入口のある一室があった。あの「off the rail cafe」だ。何か買ってみようかと思ったが、ちょっと色々と見ている間に、いつの間にか扉が閉ざされしまった。駅窓口以上に早い店じまいで残念だ…。

 駅舎内には、先ほどの窓口のある待合室の他に、もう一つ待合室があった。こちらの方がより1番線に近く、ホーム上にある待合室と言った感じだ。

 クリーム色の壁や天井で、壁面はフラットに整えられている。改修されているのだろうが、待合室と同様にこちらも単調な雰囲気だ。しかし、木のテーブル、革張りモケットが付いた木製ベンチやなど、居間のようにしつらえられているのが印象的だ。テーブルの上にはフリーペーパーが置かれていた。テーブルの上にはフリーペーパーが載っていた。

ケンブル駅待合室に飾られたグレートウェスタン鉄道のポスター

 単調な壁には、かつてのグレートウェスタン鉄道時代の、古いうのポスターが貼られ、室内にレトロな雰囲気を添えている。ポスターをよく見ると、南アイルランド方面への旅行を宣伝するポスターで、険しい山中の風景で細い道を行く人や牧場が描かれ、無料パンフレットがGWRの駅やオフィスにあるという事が書き添えられていた。隅にWARWICK GOBLE(ワーウィック・ゴーブル)とクレジットが書かれていた。家に帰って調べると、この方、結構有名な画家だと知った。

 グレートウェスタン鉄道(GWR)は1948年の国有化以前、イングランド南西部、南ウェールズ地方の鉄道を運行していた会社だ。今のファーストグレートウェスタンとは直接的な関係は無いと言えるが、1990年代、イギリスの国鉄民営化の際、イングランド南西部などの運行会社の名称として取り入れられた。この地区の鉄道の象徴的名称という事で復活となったのだろうが、グレートウェスタン鉄道は郷愁誘うまさに偉大だったのだなと感じさせた。

ケンブル駅、サイレンセスター方面ホーム跡から駅舎を見る

 サイレンセスター方面廃プラットホームに足を踏み入れ駅舎を見てみた。出入り口の扉付近は草木がぼうぼうで、もうこのホームは廃されているのだと余計に印象付ける。

 駅員さんが外で掃除などをしていて、あれこれと見て回る私に気づき、私は挨拶をした。一言二言会話をし、この駅は古いのか質問したら「very old!」と教えてくれだ。駅開業1882年らしいが、それ以来の駅舎だろうか…。そして面白いものをみせてあげようと、ある場所を指し案内してくれた。

ケンブル駅駅舎に残る、馬を留める金具

 連れて来られた場所は、1番ホーム出入口横の小さな建物だった。駅舎と屋根続きなっている倉庫か何かの小さな建物で、壁の人の頭位の高さのごく一点に、輪っかの付いた錆びた金具があった。何だろうと思ったが、輪を持ちながら「horse」と教えてくれた。何と馬を繋いでおくための金具だったのだ!自動車普及前、馬が主要な移動手段だった頃のものなのだろう。そう思うとやはりこの駅舎は相当古いのだなと実感した。

ケンブル駅2番ホームの待合室跡

 列車の時間が近づき2番ホームに向かった。前日、この駅に降り立った時に目にしたライムスートーンの壁裏側を見てみた。すると思ったよりしっかりとした建物で、小さいながらも石造りでがっちりとしている。日本の駅なら、この規模なら片側ににしか駅舎が無い場合がほとんどで、待合室もこんなにしっかりしたものは作られないだろう。もっとも昔のケンブル駅はこの待合室が必要な程、賑やかだったのだろうが…。もしかしたらテッドベリー方面のプラットホームは、2番線に面していたのかもしれない。今では、全ての窓は塞がれ、トイレ跡と思しき2つ入口も塞がれ廃れてしまっているのが侘しい。

ケンブル駅に到着したチェルトナム・スパ方面行きの列車

 ほどなくしてチェルトナム・スパ行きの列車が入線した。来るときはロンドン・パディントン駅発の特急「的」列車だったが、今度はスウィンドン発の近郊型車両だった。

 イギリスでは一部の列車を除き、列車の種別が必ずしも明確でなく、特急的な運転をしていても「特急」と掲げて運転されている訳でも無く、特急料金がいる訳でもない。1等2等の料金の区別があるだけだ。なので追加料金無しで特急列車に乗車できるようなもので、青春18きっぷをよく使う身としては羨ましい話だなと思う。

 なので近郊型車両が来て少し損した気分になったが、色々乗れてまあ面白いだろうとも思いながら列車に乗り込んだ。

[2011年(平成23年) 8月訪問](イギリス・イングランド、グロスタシャー州)

追記: その後のケンブル駅

 アニメ「きんいろモザイク」で、主人公の忍がイギリスホームステイの家庭に行く時に下車した駅として、ケンブル駅が登場したとの事。

 2013年、1番ホームとサイレンセスター方面ホーム跡の間の三角状の空地が庭園として整備され、オープンの際にチャールズ皇太子が訪問した。

気になった駅、サンタレンへ…

 リスボンからポルト行きのインテルシダーデ(Intercidade=IC、急行列車)に乗り、車窓から見て気になった駅、サンタレンで下車した。

ポルトガル鉄道・サンタレン駅に到着した特急列車IC

 下車すると「SANTAREM」と書かれた奥の給水塔(のようなもの)が目を引いた。ポルトガルのそこそこの規模の地方の駅には、この給水塔のようなものが残っている駅が多かった。

サンタレン駅、プラットホーム

 方や足元を見下ろすと、石畳のプラットホーム上にも「SANTAREM」と文字がモザイク状に形作られていた。

サンタレン駅、古い車庫を利用した鉄道博物館

 数線ある側線の脇には古そうな車庫があった。たぶん車庫なのだろうとは思っていたが、帰国してから調べると、現在では鉄道博物館になっている事を知った。しかし、一週間の内、火曜日しかオープンしていなく、訪問時も閉まっていた。

ポルトガル鉄道・サンタレン駅、駅構内の庭園

 サンタレンという土地は、私が持っていた旅行ガイドブックでも紹介されていなかった。にも関わらず来てみようと思った理由はの一つは、この駅に停車中、車窓から見えたプラットホーム上の緑豊かなミニ庭園だった。植物棚や木のアーチまで設置され、庭園というよりホームの上のミニ公園と言った風情だ。列車の出発までここでのんびりと過ごせそうだ。だが、見た限り、ここに近付いている乗客は一人もいなかった。

ポルトガル鉄道・サンタレン駅、庭園内の池

 木のアーチをくぐると、庭園の真ん中には菱型の小さな池があった。四方に小道が延びていて、ほんの数歩の距離だが、歩けるようになっている造りが面白い。四隅にはポルトガル鉄道(Comboios de Portugal)の略号、CPのマークが入った植木鉢が置かれていた。

ポルトガル鉄道・サンタレン駅、駅舎横の待合室

 ミニ庭園の駅舎に挟まれるように、小さな家屋のような建物が駅舎に付属しているように建てられている。しかも。軒まで巡らされているのが気になった…。。何だろうと思ったが、出入口横に待合室を示すピクトグラムが掲示されていた。しかし、鍵が掛けられ現在では使われていない様子だ。

ポルトガル鉄道・サンタレン駅、待合室のテラス風スペース

 元待合室には回廊のように軒が巡らされているのが優雅な雰囲気だ。軒下からは先程の庭園が眺められる。テーブルを置いてカフェなんかにすれば、いい風情だし、庭園を眺めながら風に当たるのもいいだろう。

アズレージョで世界遺産候補の街が描かれた駅舎

ポルトガル鉄道・サンタレン駅、駅舎に飾られたアズレージョ

訪問の動機となる気になるものがもう一つあった。それは、駅舎の壁にズラリと並んだアズレージョ(ポルトガル独特の装飾絵タイル)だった。丸い柱の奥に並ぶ様は、教会などポルトガルの史跡を見ている気分にさせられる。アズレージョが飾られた駅と言えば、アヴェイロ、ポルト・サンベント、ピニャオンが有名だが、ここもとても印象的だ。

サンタレン駅舎、アズレージョのサン・ジョアン教会

 ずらりと並んだアズレージョには、教会や城跡など、サンタレンの建物や風景が描かれているという。このアズレージョは12世紀から13世紀にかけて建てられたサン・ジョアン教会だ。

 古い建物が多く残るサンタレンは世界遺産の暫定リストに登録されているとの事だ。駅に描かれた風景や建物の数々が世界遺産として脚光を浴び、この駅が旅行者で賑わう日が来るのかもしれない。

ポルトガル鉄道・サンタレン駅、ヨーロッパらしい駅舎

外に出てサンタレン駅の駅舎正面に回ってみた。こちら側にはアヴェイロ駅のように、絵タイルのアズレージョは無かったが、腰辺りにダイヤ状チェック模様のタイルが敷き詰められている。

 白い壁にオレンジ色の瓦はポルトガルの駅舎によく見られるスタイルだ。写真向かって左側の1階部分が窓口になっている。右側の1階部分はカフェだが、日曜日のためか休業していた。

ポルトガル鉄道・サンタレン駅、駅舎屋根の出窓

 3階部分に煙突があり、出窓が並んでいる様が面白い。1階のカフェと窓口以外は乗降客が入れない区画だ。一体、何に使われているのだろうか・・・。

ポルトガル、サンタレン駅前のカフェ

 駅前は石畳の道路が伸びるこじんまりとした通りになっている。倉庫らしき大柄な建物やアパートらしきもの、カフェなどが建ち並ぶ。カフェは地元の人々で大賑わいだった。

ポルトガル、サンタレン駅、切符売場

 リスボンに帰ろうとインテルシダーデの切符を買うため、窓口に立ち寄った。ユーレイルパスを提示すると、割引のパスホルダー運賃で指定席券を購入できる。しかし、発券にやや手間取った。ポルトやリスボンと言った旅行者が多い駅ではパスホルダー運賃でも発券する機会が多いので、こういう場合、スムーズに進む。しかし、そうでないと慣れてない操作でスムーズに行かないのだろう。だけど、駅は狭く窓口は見つけやすく、何人も人が並んでいるという事もないので、ストレスは無い。

 有名な観光地でもないサンタレン駅は、駅も駅前も観光客らしき人の姿は無く、地元の人ばかりでのどかなものだった。しかし、、サンタレンの街が世界遺産に登録された後は、駅は旅人で賑わうのだろう。そんな日が楽しみだ。

[2009年8月訪問]

last-updated on 2020/05/18