西幡豆駅(名鉄蒲郡線)~名鉄のローカル線、小さな木造駅舎~



片流れ屋根が印象的な小さな駅

 蒲郡線の駅巡りをしていて、古い木造駅舎が残る西幡豆駅で降りた。

名鉄蒲郡線・西幡豆駅、小さな木造駅舎が残る

 小さくほぼ箱状の単純な造りながら片流れの屋根になっていて目を引く。

 2000年代あたりから、名鉄では無人駅など末端部の小駅にも駅集中管理システム導入を進めていて、それに伴い小さな駅にひっそりと残っていたような古い駅舎が多く取り壊されてきた。しかし蒲郡線では導入の予定も無いという。それは、蒲郡線の存廃が問題になっていて、多額の費用を掛け導入した所で、廃止となってしまえば無駄になるからと取れなくも無い・・・。蒲郡線は名鉄に僅かに残ったローカル線の風情が楽しめるとは言え、そういう事情があることを思えば複雑だ。

 西幡豆駅の駅舎はいつ建てられたのだろうか?駅の開業は1936年(昭和11年)の7月24日。西幡豆駅両端の東幡豆駅‐三河鳥羽駅間が電化されたのが1946年だが、ウィキペディアに電化前の西幡豆駅の写真が載っている。その写真に現駅舎らしきもの映り込んでいるので、おそらく開業当初からの駅舎なのではないだろうか…。
※訂正→1960年(昭和35年)築との事

名鉄蒲郡線・西幡豆駅、駅前の構内売店跡

 駅舎の向かいには構内売店の跡が残っていた。このように名鉄の駅に付随した駅前商店のような売店は、かつては三河一色駅、吉良吉田駅の駅前でも見られた。吉良吉田駅前のものは2008年までは営業していた様子だ。「構内」という響きが気になるが、名鉄の認可を受け、地元の業者が駅売店として営業しているのだろう。

名鉄蒲郡線・西幡豆駅の木造駅舎、待合室

 待合室は狭い。プラス切符売場と最小限の設備だ。しかし無人化され、窓口跡は埋められ、掲示物が貼られていたり、自動券売機が置かれていたりした。

名鉄蒲郡線・西幡豆駅、待合室に飾られた絵画

 待合室の窓の上には、付近の海や山などを描いた風光明媚さを感じさせる風景画が何枚も掲示されていた。その中にうさぎ島と猿ヶ島を描いたものもあった。

 三河湾沿いを走る蒲郡線は、かつては観光路線として名鉄に位置付けられていた。うさぎ島などの観光事業も手がけ、直通特急も運転されていた。しかし、レジャー利用客が減少すると、それらの事業からは手を引いた。車社会が進んだこの地域において、残ったのは学生など車を運転する事ができない少数の人々が中心となり、ついに蒲郡線の存廃までもが問題になるようになってしまった。

名鉄蒲郡線・西幡豆駅の木造駅舎、改札口跡付近

 かつての改札口付近はとても狭い。すれ違いが難しそうで、乗降する人々がぶつかってしまいそうだ。

名鉄蒲郡線・西幡豆駅の木造駅舎ホーム側

 駅舎をホーム側から眺めてみた。側面には古い手押しポンプがある井戸の跡、防火水槽も残り、レトロな雰囲気漂う。

名鉄蒲郡線・西幡豆駅、プラットホームと駅舎、古いトイレ

 近くの踏切から西幡豆駅を眺めてみた。小さな木造駅駅舎に古めかしいトイレ、そして短めのプラットホーム… ローカル線小さな駅の風景を留めていた。

[2009年(平成21年) 1月訪問](愛知県幡豆郡幡豆町※訪問時。2011年4月1日より西尾市)

レトロ駅舎カテゴリー:
私鉄の失われしレトロ駅舎

西幡豆駅舎取り壊しへ

 西幡豆駅の木造駅舎が隣の東幡豆駅舎とともに取り壊される事になった。工事の予定は西幡豆駅が2021年10月から、東幡豆駅が12月頃から。

 2000年以降、名鉄の駅集中管理システム導入により、追い打ちをかけるように古い駅舎がどんどん取り壊されていった。非導入という事もあるのか、西幡豆駅と東幡豆駅は生き残って来たが、命運尽きる時が遂に来てしまった…

 10月10日(日)、取り壊しを前に、両駅でさよならイベントが行われた。多くの人で賑わい、記念に発売された「ありがとう西幡豆駅舎・東幡豆駅舎入場券」は早々に売り切れたという。また長年塞がれてた両駅の窓口が開放され、有人駅時代さながらに窓口営業が行われた。

 さよならイベント後も、駅舎は使用され続けた。西幡豆駅はトイレが先に取り壊された。そして11月半ば頃から本格的な駅舎取り壊し作業が始まった。

取り壊し前の西幡豆駅訪問

 残念ながら、さよならイベントには参加できなかったが、10月上旬、西幡豆駅と東幡豆駅を訪れる事が出来た。ここでは西幡豆駅の様子をご紹介。

名鉄蒲郡線、ありがとう西幡豆・東幡豆駅舎ヘッドマーク
蒲郡線の列車には、ありがとう西幡豆・東幡豆駅舎ヘッドマークが掲げられていた。
西幡豆駅に掲示された両駅舎さよならイベントポスター
西幡豆駅に掲示されていたさよならイベントのポスター。駅舎のイラストがかわいい。
西幡豆駅取り壊しを控え待合室に置かれたメッセージポスト
待合室に置かれたメッセージポスト
取壊しを控えた西幡豆駅、名鉄の数少なくなった木造駅舎…
大好きな駅舎での最後のひと時を心ゆくまで過ごした…