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ケンブル駅 (ナショナルレイル、イギリス):
Kemble railway station (National Rail, The United Kingdom)


コッツウォルズらしさ漂うライムストーンの駅舎

ケンブル駅に入線した列車と古い給水塔

 イングランド南西部、スウィンドンからチェルトナムへの路線、ゴールデンバレーラインの列車に乗り、北の方に一駅のケンブル(Kemble)で下車した。イングランドの素朴な田舎風景が残り旅行者に人気のコッツウォルズ地方のやや南部に位置する駅だ。コッツウォルズでも人気の村・バイブリーに訪れるため、この駅で下車した。到着した2番ホームの先端には、SL時代の古めかしい給水塔が残っていた。

ケンブル駅プラットホーム

 ケンブル駅のプラットホームは2本あり、スウィンドン、ロンドン方面の列車が発着する1番ホーム側に駅本屋が面している。まもなく列車が到着するようで、十人程度の乗客がプラットホームで待っていた。

ケンブル駅2番線、ライムストーンの壁

 反対側の2番ホームの軒を支える柱は、日本の古駅舎の柱と違って鉄製で、色使いや装飾が派手で目を引く。しかし、ライムストーン一面の壁がやはり印象的だ。ライムストーンは石灰石の一種だが、蜂蜜色を帯びているのがこの地方独特で「コッツオルズストーン」とも呼ばれる。コッツウォルズ地方の古くからの建築物でよく使われている名産の石材で、この地方の風景を見ていると、ライムストーンの古い建物ががあちこちで見られた。

 この壁は待合室などが入った建物のようだが、現在では使われていない様子だった。

ケンブル駅2番線側の駅舎・出入口

 2番ホーム側にも出入り口がある。写真左奥の駅名が表記されている部分が、かつて待合室などが入っていた建物の一部で、跨線橋とは一体となった造りになっている。

 駅前は狭く、木々に囲まれた細長い土地は駐車場として利用され、多くの車が停められている。

 駐車場を通り駅から出ると、人家がまばらで畑が広がる風景に驚いた。こちらは駅本屋ではない方の出口とは言っても、駅前だからもう少し何かあると思っていたが…。パブらしき飲食店の1軒がポツンと建っているのが目を引く。

ケンブル駅ホーム、右手のカーブは廃線となったサイレンセスター方面ホーム跡

 駅を眺められる駅外の跨線橋に来てみた。ちょうどロンドン・パディントン行きの特急列車が入線してきた。

 1番ホーム側はよく見ると三角状になっている。三角状のもう1辺の大きく弧を描いたホームは、かつてのサイレンセスター方面への支線のプラットホーム跡だ。ケンブル駅には他にもテットベリーへの支線も分岐していた鉄道の要衝だったが、1964年に両線とも廃止となってしまった。廃止から半世紀近く経ち、くっきりと痕跡が残っているのは驚きだが、信号が今でも生きていたので、側線として使われているのだろう。2番ホームと一体だったであろうテットベリー支線のホーム跡も探してみたが、さすがに解らなかた。とうの昔に撤去されたのだろう。

ケンブル駅。誰も居なくなり、駅は私一人に…。

 列車の出発を眺め、駅に戻ってきた。すると先程と打って変わって、ホームの人気が無く沈黙に支配されているのに驚かされた。日中は上下各1時間に1本の列車しか無く、それも十数分程度の間に上下列車の発着が行われるパターンなので、列車が出た直後はどうしても閑散としてしまうのだろう。勝手を知った日本の駅では何とも思わなく、むしろ駅を独占できる喜びを感じるのだg、不慣れな異国の駅の沈黙は、かすかな戸惑いと不安をを覚えずにはいられなかった。

ケンブル駅駅舎、ライムストーンを使ったコッツウォルズの田舎家のような駅舎

 ケンブル駅の駅舎は1番ホームと、先程の廃ホーム跡に挟まれた三角地帯の間にある。ライムストーンの小さな石造り駅舎で、煙突や三角屋根の造りがかわいらしく、まるでコッツウォルズの田舎家を見ているかのようだ。こちらが駅本屋で、出札口や駅事務室もあり、タクシーも待機し、バスの発着所もある。

 駅本屋に対し、小さな建物がL字状に配置され軒で繋がっている。その下が出入口となっていて券売機も置かれている。有人駅だが駅本屋を通らなくても出入できる所がいかにもヨーロッパの鉄道駅らしい。

 駅本屋の中に入ろうとしたが、鍵か掛かっていて入れなかった。入口に張られていた掲示を見てみると、窓口営業時間は月曜から金曜日は6:40から13:30まで、土曜は14:10分までと少し長いが、日曜に至っては完全に休業となっている。そう言えば、到着した時は駅員の姿を2番ホームから目にしていたが・・・。もう駅の中は暗く人の気配はしない。こちら側にトイレもあるが、営業時間終了という事でクローズされていた。日本の駅では無人時間帯だからと言ってトイレが閉鎖される事は無いのだが、こんな所にも日本と海外の違いがあるのが興味深い。

ケンブル駅前の道路

 ちょっと駅前に出てみようと歩いてみた。こちら側も、かつてのサイレンセスター支線の廃線跡に沿ってに駐車場となっている。駅から見える範囲に建物は数軒だった。そして更に少し進み交差点に出て、道の両側を見てみると…、何と林のように木々が茂り鬱蒼としている風景があるだけだった。かつての要衝駅の駅前だから、もうちょっと何かあると思っていたが…、まるで秘境駅だ。バスの待ち時間が1時間半近くあり、駅前のカフェでのんびりとと思っていたが、甘かった。

翌日、再びケンブル駅に…

 バイブリーに宿泊した翌日、グロスターに行くため、再びケンブル駅にから列車に乗る事にした。経由地のサイレンセスターからグロスターへのバスもあるのだが、やはりケンブル駅をもう一回…、有人時間帯の様子を見てみたいと思った。

 サイレンセスターからバスに乗り、ケンブル駅が近づくと住宅街を通り抜けた。昨日バスで通った時は下を見ていたのか気づかなかったが、秘境駅なんかじゃなく、こじんまりとしていながらも街があったのだ。

 そしてケンブル駅に到着した。まだ昼前で、駅舎の中の明りは灯っていた。駅員さんはどうやらいるようだ。だけどどんな風なのか、勝手を知らず恐る恐るドアを開けてみた。

ケンブル駅窓口

 駅の中は窓口と待合室となっていて、白を基調にこざっぱりと改装されていた。外観がコッツウォルズストーンで趣きあるのに較べ、単調過ぎやや物足りなく思う。

 窓口は2つあるが、使われているのは一つのみだ。切符を買おうと窓口に行くと「今、出ているけどすぐ戻る」という趣旨の看板が置いてあった。そう言えば、さっき駅員さんがほうき片手に駅前を掃いていた。乗客が多くない田舎の駅なので、1人勤務なのだろう。

 もう一つの窓口を見てみると、黒板が立てかけられていた。見ると
「off the rail cafe」と書かれていて、クロワッサンとか更に色々とメニューが綴られていた。どうやら駅内にカフェがあるようだ。

ケンブル駅駅舎ホーム側

 駅舎の中からホーム側に出てみた。日本なら改札口など、外と中を分けるがあるのだろうが、ヨーロッパなのでそのような設備は見当たらない。駅舎は現役路線のプラットホームに対し直角に配置され、ホームまでの通路は大きな上屋で覆われている。かつてはこの通路でサイレンセスター方面へのホームと繋がり多くの人が行き交ったのだろう。しかし、今では廃ホーム側は壁や窓で塞がれ行き止まりとなっていた。

 通路に面し、ひっそりと狭い出入口のある一室があった。あの「off the rail cafe」だ。何か買ってみようかと思ったが、ちょっと色々と見ている間に、いつの間にか扉が閉ざされしまった。駅窓口以上に早い店じまいで残念だ…。

待合室

 駅舎内には、先ほどの窓口のある待合室の他に、もう一つ待合室があった。こちらの方がより1番線に近く、ホーム上にある待合室と言った感じだ。

 クリーム色の壁や天井で、壁面はフラットに整えられている。改修されているのだろうが、待合室と同様にこちらも単調な雰囲気だ。しかし、木のテーブル、革張りモケットが付いた木製ベンチやなど、居間のようにしつらえられているのが印象的だ。テーブルの上にはフリーペーパーが置かれていた。テーブルの上にはフリーペーパーが載っていた。

ケンブル駅、グレートウェスタン鉄道のレトロなポスター

 単調な壁にはかつてのグレートウェスタン鉄道時代の、古いうのポスターが貼られ、室内にレトロな雰囲気を添えている。ポスターをよく見ると、南アイルランド方面への旅行を宣伝するポスターで、険しい山中の風景で細い道を行く人や牧場が描かれ、無料パンフレットがGWRの駅やオフィスにあるという事が書き添えられていた。隅にWARWICK GOBLE(ワーウィック・ゴーブル)とクレジットが書かれていた。家に帰って調べると、この方、結構有名な画家だと知った。

 グレートウェスタン鉄道(GWR)は1948年の国有化以前、イングランド南西部、南ウェールズ地方の鉄道を運行していた会社だ。今のファーストグレートウェスタンとは直接的な関係は無いと言えるが、1990年代、イギリスの国鉄民営化の際、イングランド南西部などの運行会社の名称として取り入れられた。この地区の鉄道の象徴的名称という事で復活となったのだろうが、GWRは郷愁誘うまさに偉大だったのだなと感じさせた。

ケンブル駅、廃ホーム跡から見る駅舎

 サイレンセスター方面廃プラットホームに足を踏み入れ駅舎を見てみた。出入り口の扉付近は草木がぼうぼうで、もうこのホームは廃されているのだと余計に印象付ける。

 駅員さんが外で掃除などをしていて、あれこれと見て回る私に気づき、私は挨拶をした。一言二言会話をし、この駅は古いのか質問したら「Very old!」と教えてくれだ。駅開業1882年らしいが、それ以来の駅舎だろうか…。そして面白いものをみせてあげようと、ある場所を指し案内してくれた。

ケンブル駅、駅舎の壁に残る馬を繋ぐ金具

 連れて来られた場所は、1番ホーム出入口横の小さな建物だった。駅舎と屋根続きなっている倉庫か何かの小さな建物で、壁の人の頭位の高さのごく一点に、輪っかの付いた錆びた金具があった。何だろうと思ったが、輪を持ちながら「horse」と教えてくれた。何と馬を繋いでおくための金具だったのだ!自動車普及前、馬が主要な移動手段だった頃のものなのだろう。そう思うとやはりこの駅舎は相当古いのだなと実感した。

ケンブル駅、2番ホーム側の駅舎の背後

 列車の時間が近づき2番ホームに向かった。この駅に降り立った時に目にしたライムスートーンの壁裏側を見てみた。すると思ったよりしっかりとした建物で、小さいながらも石造りでがっちりとしている。日本の駅なら、この規模なら片側ににしか駅舎が無い場合がほとんどで、待合室もこんなにしっかりしたものは作られないだろう。もっとも昔のケンブル駅はこの待合室が必要な程、賑やかだったのだろうが…。もしかしたらテッドベリー方面のプラットホームは、2番線に面していたのかもしれない。今では、全ての窓は塞がれ、トイレ跡と思しき2つ入口も塞がれ廃れてしまっているのが侘しい。

ケンブル駅に入線したチェルトナム・スパ行きの列車

 ほどなくしてチェルトナム・スパ行きの列車が入線した。来るときはロンドン・パディントン駅発の特急「的」列車だったが、今度はスウィンドン発の近郊型車両だった。

 イギリスでは一部の列車を除き、列車の種別が必ずしも明確でなく、特急的な運転をしていても「特急」と掲げて運転されている訳でも無く、特急料金がいる訳でもない。1等2等の料金の区別があるだけだ。なので追加料金無しで特急列車に乗車できるようなもので、青春18きっぷをよく使う身としては羨ましい話だなと思う。

 なので近郊型車両が来て少し損した気分になったが、色々乗れてまあ面白いだろうとも思いながら列車に乗り込んだ。


[2011年8月訪問]

追記: その後のケンブル駅

 アニメ「きんいろモザイク」で、主人公の忍がイギリスホームステイの家庭に行く時に下車した駅として、ケンブル駅が登場したとの事。

 2013年、1番ホームとサイレンセスター方面ホーム跡の間の三角状の空地が庭園として整備され、オープンの際にチャールズ皇太子が訪問した。

ヨーロッパの駅

チューリッヒ中央駅
スイス最大の駅。欧州のターミナル駅らしさある。
サンタレン駅
ポルトガルの絵タイル・アズレージョが取り付けられた駅舎。ミニ庭園も。