駅と駅舎の旅写真館 railwaystation.jp

宗谷本線・北星駅~朝礼台、掘っ立て小屋、そしてホーロー看板…~


すったもんだの末、北星駅へ…

 名寄駅近くの宿に泊まった翌日、北星駅を訪れようと思った。北星駅は名寄駅より二駅北にあり、約13km離れている。秘境駅と言われるような駅で、小さな待合室にレトロなホーロー看板が掲げられている事で知られる。

 そして「北星」という駅名は、「北」という最果て感と、「星」という遠さや瞬きを感じさせる響きが、北海道という土地と重なり、何とも言えないロマンを感じさせる。夜はさぞ星がきれいなのだろう…


 列車に乗り込み、いざ北星駅へ!と気持ちが高ぶるが、名寄駅から離れ程なくすると、とんでもない事に気づいた。
「あああ~~~、反対方向だ!!」
稚内行きの列車に乗ったつもりが、誤って旭川行きの列車に乗り込んでしまっていたのだ。
とんでもない失態に我ながら驚き、そして頭の中は完全にひっくり返っていた。

 もういっそ、このまま乗り続けようと思った。しかし、やはりここまで来たのだからと、少しで可能性を探るべく、とりあえず下車する事にした。次の停車駅は風連駅だった。

 とは言え、あてもなく風連駅で降りてしてしまった訳だ…。駅の外に出て、小さな駅舎を一瞥した。コンクリートや新建材で建て替えられたコンパクトな駅舎を味気ないなあと思いつつ、街の方に歩いた。

 すると国道40号線を、南からこちらに向かってバスが走ってきているのが見えた。何と!これで名寄駅まで戻れば何とかなるかもしれないと思い、バス停に急いだ。運転手さんに聞くと、名寄駅には乗り入れないけど、数百メートル手前のバス停には停車するとの事。もし、風連駅で足を止め、一枚でも写真を撮っていたら、この貴重なバスに気づく事は無かっただろう。まさに幸運、渡りに船で、迷わずそのバスに乗り込んだ。

風連駅前のバス停に停車する名寄方面行き名士バス。
( 風連駅前から名士バスで名寄駅に戻る。)

 バスを降り、少し歩き再び名寄駅に戻ってきた。とりあえず戻ってたものの、列車本数が更に減る北方面行きの宗谷本線。ここはしょうがないので、最後の手段…、タクシーに頼る事にした。

 のどかな風景の中を走り続け、駅に到着した。しかし目の前にあった駅は、写真で目にしていた北星駅ではなく、一駅行き過ぎた智恵文という駅だった。これには閉口してしまったが、1日にひとり乗降客がいるかいないかで、周りにこれといったものが無く、車社会が進み地元の人ですら利用しないであろう北星駅は、存在感が無いに等しいのだろう。

 改めて北星駅に向かってもらったが、運転手さんは北星駅の場所に確信が無いようで、車を停車させ、通りがかりの地元の人に聞きつつ車を走らせた。そして…、ようやく北星駅に到達する事ができた。

乗客はほぼ0?? 北海道では典型的な停留所型の秘境駅

 名寄駅での誤乗に気づいてから1時間ちょっと、激動の末!? やっと北星駅に到達できホッと一安心…。

 周辺を歩いてみると、建物は数軒の農家と思われる家があるだけで、畑や牧場が広がり小高い山に囲まれた風景が望めた。

( 秘境駅感溢れる北星駅。)

 少し離れ踏切から駅を眺めていると、むせかえるほどに茂る緑の中、一両程度の長さしかないちっぽけなホームがひとつぽつんと佇んでいる風景が、えもいわれぬ秘境駅の風情溢れる。

宗谷本線・北星駅を入口から眺める…
( 入口から北星駅を眺める…)

 そしていよいよ駅に足を踏み入れようとした。道こそは未舗装だが、砂利で整えられている。そして、その先にある木の小屋のような建物が北星駅の待合室だ。端から見ると、駅というより、すぐ近くの農家が使っている倉庫にしか見えない。かつてはトイレまであったと言うか、数年前に撤去されたらしい。

宗谷本線・北星駅、古い倉庫のような待合室内部
( 古色蒼然とした待合室内部。)

 待合室の中を一瞥してみた。木の壁やベンチは、年月が染み出たかのよう濃い茶色と化し、古色蒼然とした空気に満ち溢れている。台風で吹き飛ばされてしまいそうな程、脆そうだが、それでも北海道の厳しい冬から乗降客を守ってくれる心強い存在だ。

 利用者はほどんどいないと言うが、それでも掲示物は新しいものが貼り付けられている。そして誰がが設置したのか駅ノートまである。

 片隅には雪かきの道具やほうきも置かれている。誰かが地道にこの駅を守ってくれているのだ。

宗谷本線・北星駅の古色蒼然とした木造待合室
( 待合室はまるで物置のよう。)

 木造の待合室を正面から眺めてみた。古びた小さな待合室は駅と言うより、物置か掘っ立て小屋かという雰囲気。室内以上に使い込まれた古びた木の質感に満ち、窓枠まで木製のまま!外壁の板は、剥がれたり緩んで浮き気味と、もうボロボロだ。

 この駅で特徴的なのが、なんと言っても「毛織の北紡」というレトロな琺瑯看板(ホーロー看板)が、でかでかと掲げられている事だ。何十年と年月を経ても色あせないこの看板のおかげで、どこか昔懐かしさというか、待合室のこの空間だけが、時代に置き去りにされたような不思議な空気を漂わせている。

北星駅待合室、レトロな「毛織の北紡」のホーロー看板
( 北星駅名物!?? レトロなムードの「毛織の北紡」ホーロー看板)

 この琺瑯看板「毛」「織の」「★」「北」「紡」と、5枚1組になっている。真ん中の星印は社章だろう。5枚並べると、狙ったかのように待合室の横幅とジャストフィットなのが面白い。

 この北紡という会社はも今ではもう無いようだ。それなのに殆ど色褪せないで、赤々とインパクトを放っている様は皮肉というか不思議に感じる。

 ホーロー看板がいくつも貼り付けられた建物は、レトロマニアの間で「看板屋敷」と呼ばれている。小さなこの駅舎を、看板が占拠するように取り付けられた様は、看板屋敷ならぬ「看板駅舎」といった風情だ。

北星駅、北海道無人駅の典型的な「朝礼台」板張りホーム
( 北海道無人駅の典型的な朝礼台型の板張りプラットホーム。)

 プラットホームは鉄道ファンの間では「朝礼台」とあだ名されている、1両程度の長さの板張りのホームだ。小学校の運動場で全校生徒を前に、校長先生とかがお話をする時に立つアレだ。配線は1面1線で、駅構内に信号が無く、細かく言えば「停留所」という駅に分類される。朝礼台に停留所…、北海道では昔ながらの無人駅のスタイルだ。

宗谷本線、北星駅を通過していく特急スーパー宗谷
( 北星駅を通過してゆく特急スーパー宗谷。)

 プラットホームであれこれ撮影をしていると、踏切の警報が鳴る音がした。レールから離れたホームの端に立ち見ていると、札幌行きの特急・スーパー宗谷2号が、ちっぽけなこの駅に目もくれる事無く、一瞬で通過していった。

宗谷本線・北星駅、古びた木造待合室
( 待合室は傷みが進んでいる…)

 待合室の室内に入ると、内部じゅうが傷んでいて改めて驚かされた。コンクリートの床には、大きなひび割れが四方に走っている。木の壁は、長年に渡り、雨水や雪水が染み込み続け、少し腐食しているようだ。

JR北海道・宗谷本線、北星駅に到着したキハ54普通列車
( 単行の上り列車が入線してきた。)

 待合室に居ると、踏切の音が聞こえてきた。こんな年代モノの待合室の中では、まるで遠くから聞こえてくるかのような感覚を覚える…、

 しかしキハ54気動車がゆっくりとホームに進入してきたのが窓越しに見えた。もう少しいたい気もするが、次の列車はかなり後になってしまう。いや、大きな失態から巻き返し、この駅に訪れる事ができただけでも良かった。そう思うと、急いで駆け出し、迎えの列車に急いだ。


[2007年8月訪問](北海道名寄市)

抜海駅
最北の無人駅。趣きある木造駅舎が残る。(稚内市)
南下沼駅
北星駅と同じく停留所型の無人駅。2006年に廃駅に。(幌延町)
雄信内駅前~雪深き沈黙の集落を歩く~
姉妹ブログ「ある日旅の空で…」より